劇場版『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』レビュー


長年、ジョジョの魅力を吠えてきた自分としては、この映画のレビューを書く事は非常に困難だった。原作の名場面や名セリフを覚えているだけに、“あのキャラが出ていない、このセリフがない”と、観ている間、そのことばかりに気をとられていたからだ。しかし、原作を知らない友人が「結構楽しめたよ」と言っていたことや、実際に4度、5度と繰り返して見ているうちに僕も冷静さを取り戻し、動画ならではの戦闘シーンの面白さなど、いろいろ長所が見えてきた。心配していた声優も違和感はなく、キャラの内面をよく表現していたと思う。

★良かった点

・最初にツェペリの修業から始めたのは大正解!クライマックスに向けてツェペリに感情移入しやすくなった。
・ディオが馬車から降りる初登場シーンは原作の雰囲気が再現されていた。
・ディオが酔っ払いに石仮面を被せるエピソードは、劇的な夜明けの場面と重なって、めっさドラマチック!
・吸血鬼になったディオVS警官隊のバトルは、ディオの「皆殺しだ!」にマジで戦慄。怖かった。
・絵は背景が美しかった。流れる水の表現は実写かと思うほど。
・音楽がいい。“侵略者ディオ”というイメージの迫り来るメロディーが緊張感を高めた。SOUL'd OUTもカッコイイ(シングルCD、即GET。間奏もシブイ!)。
・戦闘シーンの波紋の表現は、太陽を思わせる黄金の輝きで見応えがあった!
・前述したように声優が頑張っていた。ジョースター卿の「息子の腕の中で…」やツェペリの「ディーパス・オーバードライブ!」は感情がこもっていて胸が揺さぶられた。ディオの「貧弱!貧弱ゥ!」もイメージ通り。
・クライマックスの吹雪の描写、一瞬見えたブラフォードの髪攻撃(ダンス・マカブ・ヘアー)、サンライト・イエローの凄まじい威力など、所々に身を乗り出す場面があった。
・戦闘シーンのカメラワークが凝っていた!ズームインや回転など工夫されていた。
・90分という限られた枠内で、狂言回しのスピードワゴンの不在にも拘らず、破綻させずにうまくまとめあげていた。

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★残念だった点〜DVD化の時に改善熱望

名セリフのカット、人気キャラの未登場、ディオの内面の説明不足、戦闘が御都合主義、この4点に尽きる。

(1)名セリフのカット
ジョジョの魅力はストーリー&絵の他に、「荒木節」と呼ばれるハイテンションなセリフにある。ところが名セリフの殆どがカットされていた。不可解なのはシーン自体があるのにセリフだけ改悪されたり無言になっていること。なまじ場面がカットされていない分、“なぜあの名セリフを言わない!?”と、観ていてストレスが溜まった…。(『ジョジョ』分を薄めて普通のセリフに変えているのは、幅広い観客を意識して?)

【これだけは絶対にカットしてはいけないという10大セリフ】

次の10個のセリフは、これがなくては“ジョジョ”と言えないものばかり!しかもシーン自体はカットされてないので簡単に追加できる。無理なら冒頭のチベット僧のお経や、ディオの枕の針イジメ、キス事件後のメロドラマ演出(去っていく彼女をやたらに長く映す)、母やエリナのペンダントのエピソードを削れば大丈夫。優先順位の問題デス。

●「さすがディオ!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
…カメラをグルグル回す時間があればディオの手下を描けるし、手下ごとグルグル回せば余裕でこのセリフが入って効果も絶大!
●「君がッ!泣くまで!殴るのをやめないッ!」「よくも!このぼくに向かって…このきたならしい阿呆がァーッ!」…この有名なセリフが別のセリフになっていた。どうか原作通りに!
●「呼吸を乱すのは“恐怖”!だが“恐怖”を支配した時!呼吸は規則正しく乱れないッ!波紋法の呼吸は“勇気”の産物!!人間讃歌は“勇気”の讃歌ッ!!人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさ!!いくら強くてもこいつらゾンビは“勇気”を知らん!」…ジョジョのメインテーマは人間讃歌!この超重要なセリフをカットしちゃあダメだ!修行や戦闘シーンのどこかで入れられるハズ!
●「パパウ!パウパウ!波紋カッターッ!!」…こういうキワモノ的な面白さもジョジョの魅力。ゾンビ軍団との戦闘シーンに入れて欲しい。
●「お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」…これが無いなんてあり得ない。しかも、このセリフを導くディオとツェペリのやりとり--「この腹の傷を癒せばジョジョのヤツにつけられた火事での負傷はすべて完治する!」「貴様、いったい何人の生命をその傷の為に吸い取った!?」--を入れることで、館でのジョナサンの攻撃がディオに効果的なダメージを与えていたことが分かる(ジョースター卿を始め、警官達の死も少しは報われる)
●「波紋?呼吸法だと?フーフー吹くならこの俺の為にファンファーレでも吹いてるのが似合っているぞッ!」…タルカス、ブラフォードを呼び出す前はコレ!
●「カエルの小便よりも…下衆な!下衆な波紋なぞをよくも!よくもこの俺に!いい気になるなよ!
KUAA!」…このゲスっぷりこそディオ!
●「猿が人間に追いつけるかーッ!お前はこのディオにとってのモンキーなんだよ、ジョジョォォォォーッ!!」…まさに荒木節!なんでこんな美味しいセリフをカットするのか〜!(涙)
●「あの母親…は…子供をかばって死んでい…る。ぼくの…母…も…そう…して…死…んだ。あの子を…連れて…早く…」…この感動的なセリフで観る者を泣かせて欲しい。っていうか、前半を削ってでも赤ちゃん(リサリサ)の救出シーンを入れないと第2部に繋がらないッ!
●「離せ…ジョジョォォ…離すんだ、考え直せジョジョ。お前にも永遠をやろうではないか!その傷も治す…エリナと永遠を生きれるぞ…ジョジョ!ジョジョ…!?こ…こいつ…死んでいる…!」…映画のディオは首だけになって抱きすくめられたあと、ボンヤリしていた。せめて、ラストだけでも原作通りにィーッ!(激涙)

※「LUCK&PLUCK」…今となってはもう、たとえ意味不明でもいいから、登場シーン10秒のブラフォードに、このセリフを言わせながら散らせて欲しい。贅沢は言わない(涙)。

※あと、違和感があったのがキス事件の後のディオのセリフ。原作では「君…もうジョジョとキスはしたのかい?」なのに、映画では「君、もうやったのかい?」になっていた。どうしてこういう改変をするのだろう。「作者を尊重し、可能な限り原作通りにしよう!」という姿勢が、こういう部分で感じられない。繰り返すけど、場面がカットされた部分は諦めるけれど、DVD化の際には、残ったシーンは限りなく原作と同じ言葉にして欲しいッス!(>_<)


(2)楽しみにしていたキャラの未登場

スピードワゴンが出ないのは事前情報で覚悟をしていたけれど、ダイアー、ストレイツォ、ポコも出ず、ブラフォードとタルカスがチョイ役というのは、あまりに衝撃的。前述したけど、特にブラフォードの感涙名場面「LUCK&PLUCK」がないのは痛恨の一撃。

時間がないからこそ、スピードワゴンを出した方が良かったのでは。つまり、彼が第3者の視点で状況を解説することで、初心者にはストーリーが分かりやすくなるし、状況描写の時間節約にもなったはず。しかも彼の説明はそのまま名セリフになっているものが多い!彼は波紋使いでもゾンビでもない一般人なので、観客が自然に感情移入でき、作品の臨場感も増すというもの。

「ハッタリぬかすなよーッ!金持ちのアマちゃん!」
「こいつはくせえーッ!ゲロ以下の匂いがプンプンするぜーッ!!こんな悪(ワル)には出会ったことがねえほどなァーッ!環境で悪人になっただと?ちがうねッ!!こいつは生まれついての悪(ワル)だッ!」
「くっそー!侵入罪でとっつかまろーと、この部屋へ入って思いっきり祝ってやるぜーッ!!」
「スピードワゴンはクールに去るぜ」etc。
特にジョースター卿が死んだ時に彼が言った「あの父親の精神は息子のジョナサン・ジョースターが立派に受け継いでいる!それは彼の強い意志となり、誇りとなり、未来となるだろうぜッ!!普通、俺は自分が困るとすぐ泣きぬかす甘ちゃんはだいっ嫌いだがよォ!この親子は違う。自分たちのしたことを後悔しない最高の大甘ちゃんだぜ!」は素晴らしい。

DVDでのスピードワゴンの復活を切に願う。どうしても登場不能なら、第2部に話を繋げる為に、エリナを助けた船員をいっそのことスピードワゴンに描きかえてみては!本当に苦肉の策だけど、映画版なりに後のスピードワゴン財団とかろうじて接点ができる。


(3)ディオの内面描写の不足

映画では、なぜディオがジョナサンをイジメているのか理由が語られていない。以下の超重要なディオのモノローグが全部カットされているので、ディオがただの弱い者いじめ=小者に見えてしまう。

●初対面のシーンで…「こいつがジョースター家の跡継ぎ、一人息子のジョジョか!こいつを精神的にとことん追い詰め、ゆくゆくはかわりにこのディオがジョースター家の財産をのっとってやる!」
●キス事件で…「手段は問題ではないッ!キスをしたという結果があればいい!これでジョジョとこの女の仲も終わりになる!ジョジョの心に砂漠を作ってやるため、ヤツには決して友人とか恋人は与えんッ!そして生きがいのないヤツはフヌケ人間になるッ!」
●成長後…「もうすぐ卒業…もうジョースター卿の援助はいらん!8年ジョジョと表向き仲良くしたのはこの期を待ったから!計画はジョースター家の財産をのっとることさ!財産を法的に自由に出来る年齢になった!」

これらは胸中で語られるのでセル画を描き足す必要もなく、時間的にも挿入可能なので、何としても入れて欲しいデス。それと、枕に針を入れたり、母の形見を踏みつけたりするのはディオらしくない。ディオは悪党だけど「悪の美学」があり、そんなセコイことはしないと思う。原作には毒薬疑惑でジョナサンから“父親の名誉にかけて誓えるか”と問われて動揺するシーンや、最終決戦で「おいワンチェン。ジョジョへの侮辱は許さんぞ!彼はこのディオをこんな姿まで追い込んだ人間」とあるように、彼は人一倍プライドを重視する男。イジメのシーンより、その2つのシーンを入れた方がディオの人物像に厚みが出てくると思うんだけどなぁ。


(4)戦闘シーンがご都合主義になっている(波紋バトルが生かされていない)

ジョジョが一般のバトルマンガと決定的に違うのは、腕力を競うパワーVSパワーの戦いではなく、「破壊力のない波紋」で敵を倒すから革新性があった。重要なのは、敵の体を殴って破壊することではなく、波紋を“流し込む”こと。相手の腕であれ、足であれ、“波紋が入った”なら、そこから体に広がって倒すことができる。だからこそ、ジョナサンは敵の攻撃よりも早く波紋を叩き込むために、腕の関節を外して(痛みを波紋でやわらげながら)リーチを伸ばす“ズームパンチ”を駆使していた。一方、敵のブラフォードはジョナサンの腕を髪で縛って封印し、タルカスはチェーンを天井に接触させて波紋を断ち、ディオは『気化冷凍法』で肉体を凍らせて完全に波紋を封じた。残念ながら映画ではそこが駆け足で終わった為に、単純な力押しで戦っているように見えた。

劇中にツェペリとディオの「凍っているのか」「凍った体に波紋は流せまい」というやり取りがあるけれど、果たしてこの会話だけで初見の人が理解できただろうか。ここは原作の「俺が自分の肉体を自在に操れるということは知っていよう!水分は気化する時、同時に熱を奪っていく!つまり瞬時に“凍らせた”のだ!」「体を凍らせれば血液の流れから作る波紋はディオには決して流れることはない!」という説明セリフを入れ、さらに肌の色を青くするなど外見上にも大きな変化を持たせた方が分かりやすくなると思う。

波紋を流そうとする主人公と、簡単にはそれを許さない敵。その攻防の妙を楽しむのがジョジョ。しかしクライマックスのディオは一撃で倒され、あまりにあっけなさ過ぎた。原作のディオは剣で真っ二つになっても反撃したし、ジョナサンは冷凍を防ぐ為に拳(手袋)を炎で燃やしながら“サンラントイエロー・オーバードライブ”を叩き込んだ。ところが映画では「気合のパワー・アップ」で冷凍法を克服し、ファンを絶句させた。荒木先生が普段から「根性で勝つ展開は単純すぎる」と言っているのに、まさにその悪い見本をやってしまっている。

《館の戦い》〜時系列を追って提言
1.なぜディオが暖炉の炎に耐えられたのか不明なので、原作のセリフを入れるべき→「焼けながらも皮膚の組織が次々と再生しているんだ!脳に弾丸を撃ち込んでも傷が治る理由はこれかッ!」。
2.館が炎上しているのに、なぜジョナサンがあえて上階に逃げるのか語られていない。「ジョースターさんはこう考えているッ!もっと強い火力ならとッ!あの魔物の肉体の回復力が追いつけないほどの、もっともっと強い火力ならディオを倒せるとッ!その為に屋敷に火が広まるまで待って階上にのぼったッ!」、このスピードワゴンのセリフに手を加えてジョナサンのモノローグにすれば作戦だったことが分かる。
3.ディオの動揺も入れた方がジョナサンの株が上がる。「さっきの火傷がまだ完全に治り切っておらん。一階は既に猛火にある。このまま落ちれば!この火力では不死身の肉体でもかなわないかもしれんッ!」「うううッ!ぬ…抜いてるひまがッ!炎がァ!炎がァ、俺の体を焼くゥ!!」
4.なぜディオが火事の中を生き延びたのか、一言も語られていない!→「あの時…最後の最後、
柱が崩れて女神像を壊さなければ…どうなっていたか!俺は死力を尽くし炎から柱の中に逃れた…。しかし…この傷を癒し力を取り戻すにはもっともっと人間の生命エネルギーが必要だ」。このセリフはディオがすぐにジョナサンと対決できずワンチェンを代役にたてたことが分かる重要なセリフ。

《石仮面》
1.酔っ払いで実験した後の「やはり死んだか」。首を刺せば石仮面を被らなくても即死するわけで、あそこは原作通り酔っ払いを2人にして片方の血を使うか、せめて刺す場所は腕にしないと。
2.原作未読の人は石仮面の骨針の意味が分かってないと思う。次のどちらかのセリフが必要。「そ…そう言えばJOJOの仮面の研究ノートに書かれていた!人間の脳は未知の器官!我々の知らない能力が眠っている可能性が充分ありうる…と!骨針はそれを呼び覚ますものなのか!?古代人はそれを発見していた!そしてその発見を道具としてこの仮面に込めて製作した!」「脳ッ!古代人の作った石仮面の骨針は脳から人間の隠された未知の能力を引き出したに違いない!」

《波紋修行》
メメタァのシーンはジョナサンが見てないので手本になっていない…(涙)。原作未読者の為にも、「カ…カエルはなんともないッ!岩を砕くのも凄まじいが…それにもまして不思議なのは、カエルを打ったというのにカエルが無事なことッ!」「私の波紋エネルギーはカエルの肉体を波紋となって伝わり!岩を砕いたのだッ!!」 というやり取りを入れた方が分かりやすいと思う。

《ツェペリ死亡シーン》
1.ツェペリの髪が白くなっていない。ジョナサンに生命パワーを伝えきったので白髪に!
2.波紋戦士とはいえ絶命時の声が元気すぎる。体が半分なので虫の息で話して欲しい…。

《空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)》
僕は映画を見た知人から「ラストでディオはサイボーグ化したの?」と驚きの質問を受けた。「どうしてそう思う?」「だって両目から緑色のビームを撃っていたじゃん」。実話デス。こうした誤解を与えない為にも、別の戦闘シーンで一度撃たせて、「うう!目から自分の体液を!ものすごい圧力で光線のようだ!あと数センチ右にいたら脳は破壊されていた!」とジョナサンに語らせた方がいいのでは…。


★設定の基本的なミス
1.冒頭でディオの父親が女性から「お子さんも心配してたわよ」って言われていたけど、ジョナサンとディオは同じ年齢。馬車の転落事故時のジョナサンが赤ちゃんということはディオも赤ちゃん。赤ん坊が父親の酒癖を心配するとは思えず、ここは絶対にセリフを変えないと。
2.新婚旅行は「太平洋上アメリカ航路」ではなく「大西洋上アメリカ航路」が正解。

★その他、気になったこと
1.ジョジョ全巻を貫く主要テーマに“精神を受け継ぐ”というものがある。これは「ジョジョ」=「人間讃歌」という作品メッセージを表す基本柱になっており、主人公が変わっても同じ物語が続いていることを示す超重要な人生観。だからこそ、ジョースター卿の死亡時にスピードワゴンが「父親の精神は息子が立派に受け継いでいる!」と叫び、ツェペリ死亡時にナレーションで「そしてジョジョはまた受け継ぐ。彼の生き方とその精神を…」と“また受け継ぐ”が強調された。映画版はディオとのバトルに終始し、ツェペリの遺言もサラリと流され、大切な「受け継ぐ」の部分が弱い。

2.時間の流れを分かりやすくする為に、テロップに年号を出すだけでなく「7年後 1888年」と○年後を併せて出した方が親切。あるいは原作通りにナレーションで「そして7年の歳月が経過する。石仮面は静かに時を待つ」を入れてはどうか。

3.「俺は人間をやめるぞ!ジョジョーッ!!」は第1部を代表する名シーンなので、原作通りに石仮面を振り上げて叫んで欲しい。同様に装着後の第一声「WRRYYY!」は呟くのではなく、事態のヤバさを伝える為にも甲高い叫びの方が良い!

4.「何をするんだァーーーッ!」は語尾を延ばして欲しい。

5.“紳士としての誇り”を重視するエピソードがカットされており、ジョースター親子の人物像が薄っぺらいお人好しに見えている。“紳士は他人を疑わない”という理念から、ジョースター卿はダリオ(ディオの父)がコソ泥と判明した後も信頼し続けたし、ジョナサンはディオを疑う心を恥じて葛藤した。

6.90分という制約があるとはいえ、エリナとジョナサンが愛を育むエピソードがないと原作未読の人は感情移入しづらいのでは。何より、エリナがジョナサンに惚れる最初の出会いがカットされているのは痛い。それから、館の火事で負傷したジョナサンの意識が戻った時、それまで何日も徹夜で看病したエリナがホッとして倒れる場面が欲しい。エリナを支えたジョナサンの名セリフが聞きたい!→「まあ!なんてこと!骨折している腕で私を!」「いつだって支えるさ」
そしてやはりラストには「ああ!う…美しすぎます!見ず知らずの女性の赤ちゃんを救って避難しろとおっしゃるの?」が必要。死んでいくジョナサンが、なおも他人の子供の命を救うことにこだわり、また生死を共にしようと決意したエリナを生き延びさせる結末。これこそ、その後20年も連載が続くことになる『人間讃歌』の物語にふさわしい、初代主人公の死に様だと思うのだけれど。ほんの数分の延長で収まるのでDVDではぜひ描いて欲しいッス。

★総括

90分しかないのに、冒頭シーンやキス事件後の間延びしたやりとりなど、まったりした場面が前半にあるのがどうしても気になる。もっと前半をハショッて、後半に時間を回して欲しい(何と言ってもディオが弱すぎる)。それと笑えるシーンが少なすぎ。クスッてなったのは「お前らは宴の生け贄だ!」「およばれになりますか、ジョジョ」くらい。ジョジョには独特のハッタリがあって、もっと劇場では笑いが起きるハズ…。ディオがジョジョの頭を「L字蹴り」するカットや、馬車から降りる場面で原作特有のポージングが再現されており、その気になれば随所でジョジョ度を濃くできると思う。
せっかくの「連載20周年」なので、可能な限り原作に近い完全版が観たい。デスノートやガンダム、エヴァンゲリオンのように、DVDでは前編・後編に分けても良いのでは(館全焼までを前編、それ以降の波紋バトルを後編、という具合に)。

さて!ここまで色々と意見を書いてきたけれど、サイト読者から頂いたメールの中に「ジョジョの予備知識ゼロで見たのですが、テンポもよく面白かったので今度原作を読んでみます」という意見も複数あり、映画化の是非を問われれば、やはり映画化されて良かったと僕は断言したい。別ジャンルでメディア化されることで、それまでジョジョと接点のなかった人が原作に触れるきっかけとなる!僕は最初に観たとき“次はどこがカットされるのか”とハラハラしっぱなしで没頭できなかったものの、2度目以降は余計なハラハラが消えた分、純粋に映画を楽しむことができ、この演出がうまい、よく短時間でまとめた、そんな風に感じるようになった。
ここに書いた提案の大半は、セリフの変更など簡単に改善できてしかも効果的と思うもの。DVD化にあたって、何とか一部の意見でも反映されればと、願ってやまないデス。
とにかく、往年のファンとしては、濃い絵柄でキワモノ的な目で見られることもあるジョジョが、スクリーンの中を動いているだけで感無量!10年前までは映画化なんて考えられなかった。映画の制作発表から3年。こうして劇場のスクリーンでジョジョを観るという夢が実現できて本当に良かった!



P.S.友人が「ゲーム(ファントムブラッド)の演出にアニメの映像が加われば傑作」と言っていた。今思うと、ゲームは攻守のバランスが酷かったけど、殆どの原作シーンを再現し、さらにディオ・モードがあり、アステカの族長まで使用可能という、ジョジョ愛のこもったものだったなぁ。


★サイトに寄せられた感想から

・ジョースター家燃えやす過ぎ
 火薬貯蔵庫みたいな爆発の仕方!
 
・ジョナサンが鎖で縛られる経緯が分からない
 そもそもあの鎖はどうやって動かしてるんですか?念力?
 
・気化冷凍法分かりづらすぎ
 「凍ってる」って言われても色が黄色だとさっぱり分かりません
 
・波紋についての説明がないのにディオが知っている
 研究熱心なのかジョナサンをストーキングしてたのか
 
・「コレクションを台無しに」してませんよね?
 コレクション=周りの人?ジョナサン?どちらも台無しにはなってない




★ジョジョ・コーナー総目次


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