史上最強の超名作洋画
ベスト1000

  101〜200位
  

1〜100位  101〜200位  201〜300位  301〜400位 401〜500位
 501〜600位  601〜700位 701〜800位 801〜900位 901〜1000位
 次点1001位〜


101.ガープの世界('82)137分 米
アーヴィングの自伝小説を名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督が映画化。ビートルズの名曲「ホエン・アイム・シックスティーフォー」から始まる主人公ガープの成長物語は、美しい人間賛歌の作品となった。約20年前、ロビン・ウィリアムズを初めて劇場で見たのがこの作品。彼はガープそのものでいっきに好きになった(近年ほどオーバー・アクションじゃなかったし…)。口先だけでない、心から優しさが滲み出て来る素晴らしい映画だ!脇を支えたジョン・リスゴーに超好感(リスゴーは助演男優賞にノミネート。ゲイの役だから助演女優賞?)。

 

102.シンドラーのリスト('93)195分 米
ナチスのユダヤ人強制収容所で、彼らの命を助けることに奔走したドイツ人オスカー・シンドラーを描く。このように重いテーマを撮る決意をしたスピルバーグ監督の英断を讃えたい。高い名声を持つスピルバーグ監督が撮ることで、他の誰が作るよりも確実に大勢の人が見に来るからだ。通常なら内容がシリアス過ぎて一般の人は敬遠してしまうはずなのに、スピルバーグのおかげでオスカー・シンドラーの存在が世界の人々へ知れ渡った。

この作品、建築学の知識のある女性がいきなり射殺されるシーンあたりから、誰がいつ殺されるかわからない緊張感がラストまで続いていたので、シャワー室のシーンでは瞳孔が開ききり体が椅子にへばりついていた。救済された人々のお墓参りの映像が胸に迫る。
※アカデミー賞(1994)作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、美術(装置)賞、編集賞/NY批評家協会賞(1993)作品賞

 
103.月の輝く夜に('87)102分 米

ニューヨークのイタリア系一家の恋騒動を、ユーモラスに、そして温かく描いた人間ドラマ。人生を楽しむ彼らの口からは、生き方や恋愛に関する名セリフがいっぱい出てくる。ニコラス・ケイジとシェールの名演が光る、小品ながらも、アカデミー賞3部門に輝いた珠玉の名作。ぜひご覧あれ!
「なぜ男は女を追うの」「神はアダムの肋骨でイブを造った。男は自分の骨を捜している。胸にポッカリと穴があいているんです。女性はその穴を埋めてくれる。男は女がいないと完全な人間にはなれない」「じゃあ、なぜ複数の女性を求めるの」「…死への恐怖かも」
※アカデミー賞(1988)主演女優賞、助演女優賞、脚本賞/ベルリン国際映画祭(1988)監督賞

 
104.戦艦ポチョムキン('25)66分 ソ連
「皆は1人のために!1人は皆のために!」1905年に実際に黒海で起きたポチョムキン号の水兵たちの反乱と、そこから始まる民衆蜂起を描く。1925年作でありながら、クローズアップやモンタージュ技法など、現代の映画に通じる様々な撮影技法が駆使されており、エイゼンシュテイン監督は文字通り現代映画の生みの親だ。後にデ・パルマ監督の『アンタッチャブル』を始め、様々な作品に登場してくる“乳母車が階段を下りてゆく”カットは、この映画が元ネタだ。
※サイレント(無声)映画で台詞を話せない分、俳優は目や口元で大きく感情を表し、脇役まで表情がとても豊か。指先も雄弁に心を語っている。

 
105.北京ヴァイオリン('02)117分 中国
親子愛と音楽の真価を描いた名作。貧乏ながらも男手一つで子供を必死で育てるお父さん役の俳優が素晴らしすぎる。バイオリンの先生が生徒に語るセリフも良かった--「音は正確だが、ただそれだけだ。音楽に感情がないんだ。それでは人の心を打つことはできないんだよ!感情だけは誰にも与えられん。技術なら教えられる。感情は自分のものだ。それは私には教えられないものなんだよ」。どんなに演奏技術が高くても、作品の心をつかまず、自分の曲になってなければ、感心はさせても感動を与えることはできない。音楽は、結局最後は人間性なんだと改めて実感。

 
106.スケアクロウ('73)113分 米
刑務所から出たばかりの粗暴な大男マックス(ジーン・ハックマン)と、船員生活をやめて5年ぶりに妻のもとへ戻ろうとするお調子者の小男ライオン(アル・パチーノ)の2人が、ヒッチハイクを繰り返して旅を続けるロード・ムービー。自分が笑い者になることで喧嘩を仲裁する2人の機転が良い。“笑いは剣よりも強し”だ。後半、自分の留守中に産まれたはずの子どもに会うべく、パチーノが我が家に電話をかけるシーンから、発狂して噴水に入っていくシーンに至るまでの演技は、もはや神がかり的。D・ホフマンに『真夜中のカーボーイ』があれば、アル・パチーノにはこの『スケアクロウ』がある!
※カンヌ国際映画祭(1973)パルム・ドール

 
107.セントラル・ステーション('98)111分 ブラジル
ブラジル映画。父親探しをしている身寄りのない少年と、偶然知り合った初老の女のロード・ムービー。最初はぎこちなかった2人だが、波乱に満ちた旅を通して強い絆で結ばれてゆく。切ないが後味の良いラストに落涙、また落涙。この作品はブラジルの社会問題(ストリート・チルドレンの臓器売買やスラムの貧困等)を描き込んでいることから、“なぜわざわざブラジルの恥部を世界に宣伝するのか!?”“いや、よくぞ真実のブラジルを描いてくれた”と、ブラジル国内では評価が2分された。(駅の売店で菓子を盗んだ若者を、警官が問答無用で「普通に」射殺するシーンはマジでビビッた…!)
※ベルリン国際映画祭(1998)金熊賞、女優賞。ノミネート…アカデミー主演女優、外国語映画賞。

 
108.風の輝く朝に('84)99分 香港
日本軍占領下(1941年)の香港を舞台にした、男2人&女1人の、3人の若者の友情ドラマ(微妙な三角関係も含む)。時代の波に翻弄されながらも、心に熱い火を燃やして生きる彼らに感情移入しまくり!アジア初の青春映画の中では最高傑作の呼び声が高い。日本軍に包囲された時のクライマックスのチョウ・ユンファの瞳は、映画を見たあと何年経っても、はっきりと脳裏に焼き付いている。
※いろんな映画で胸を打つ瞳を見てきたけど、この映画のフェイ(ユンファ)の瞳が、僕にとっては一番忘れられない瞳だ。

 
109.ミシシッピー・バーニング('88)126分 米
背筋が寒くなるような人権活動家リンチ殺人事件の真相を追った、アラン・パーカー監督の社会派サスペンス。ほんと、白人の差別主義者って黒人をヒトと思ってないからメチャクチャ。南部では司法も瀕死状態か。アメリカの良心を問うセンセーションな作品。武闘派FBIジーン・ハックマンとインテリFBIウィリアム・デフォーの個性の衝突も見どころだ。
※アカデミー賞(1989)撮影賞。ノミネート…作品、監督、主演男優、助演女優賞/ベルリン国際映画祭(1989)男優賞

 

110.セントアンナの奇跡('08)163分 米・伊
第2次世界大戦の欧州戦線に投入された黒人部隊を描く、スパイク・リー監督初の戦争映画にして大傑作。黒人兵を差別する米軍白人兵、震えながら命令を下すナチ将校、子どもを救おうとする若きドイツ軍兵士、心に闇を抱えるパルチザン、様々な立場の人間が登場し、味方にも敵にも、卑劣なヤツもいれば高潔な人間もいる。虐殺を命じたSS将校の薬指の指輪にハッとさせられる。戦争を通して人間讃歌を謳い上げた映画史に残る作品。僕はラストに救われた。劇中では、英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語が飛び交っていた。

 
111.チェ 39歳別れの手紙('08)133分 米・仏・スペイン
アルゼンチン人の医者でありながらキューバ革命を成功させ、ラテンアメリカのカリスマとなった英雄チェ・ゲバラ。彼が39歳で処刑されるまでの最後の11ヶ月を描く。先に公開された第1部『28歳の革命』では、キューバ革命という“勝ち戦”を描いており、ゲリラ仲間には希望があり陽気なムードメーカーもいて、ジョークを言い合う余裕もあった。ところが、第2部はもう最後に死ぬことが分かっているので、ひたすら状況が悪化して行くのみ。胃がキリキリしっぱなし。ソダーバーグ監督いわく「素晴らしい冒険物語を描きたかったのではなく、偉大な思想を行動に移そうとする時の難しさを掘り下げたかった」。主演のデル・トロは25kg減量して撮影に挑み、筆舌に尽くしがたい凄味を出していた。

ゲバラは「キューバ革命は成功したが世界にはまだ虐げられた人々が大勢いる」と、革命成功後にキューバ政府の大臣の地位を捨て、愛する家族とも別れ、ただの一介のゲリラとして旅立つ。目指したのは南米の中心に位置する軍政ボリビア。そこで革命を成功させ、周辺諸国を次々と独裁者の圧政から解放する計画だった。
勝算はあった。キューバのようにゲリラが潜める山岳地帯があり、ボリビア共産党から物資食料の支援を受ける根回しもしていた。ところが、ゲバラがソ連のことを「帝国主義の共犯者」と批判したことから、親ソ派のボリビア共産党から過激派扱いされて援助を断たれ、米国に支援されたボリビア軍精鋭部隊がゲバラを執拗に追跡した。
最大の悲劇は、ゲバラたちが貧しい農民のために頑張っていたのに、ボリビア軍が流したデマの為に農民の支持を得られなかったことだ。軍はゲバラたちを「キューバ人の侵略者」「外国人の山賊」などと農民に吹き込み、ゲリラを見た農民たちは逃げ出し居場所を軍に通報した。また脱走ゲリラが軍に捕まり作戦を自白したのも痛かった。次第に追い詰められ、もともと50人しかいなかったゲバラの仲間が1人、また1人と散っていく。少ない戦力で奮戦するも多勢に無勢、ついにゲバラは軍に拘束され、裁判抜きで翌日に処刑された。

多くの映画評で、この第2部は第1部以上にボロボロの点数が付けられている。単調といわれた第1部でさえ、一応見どころとなる大きな市街戦があった。しかし第2部は山岳地帯で小競り合いがたまにあるだけで、前作以上に娯楽性が皆無&ストーリーにメリハリもなく、人間ゲバラに興味のない人には2時間の“苦行”だったと思う。僕は第1部を見て、この2部作は通常の“映画的興奮”を求める作品じゃないことが分かったので、最初からスイッチを切り替え、ゲバラの過酷な行軍を見届ける覚悟で挑んだ。見終えた僕の点数は100点だ。

「我々が作り出したエピソードはひとつもなく、すべて入念なリサーチで事実と認められたもの」(監督)というどこまでも誠実な作り。前作以上にゲバラを間近から見つめ続けた本作は、ゲバラ信者として100点以外に付けようがない。すぐ側で目にした彼の言動の一つ一つに心が動いた。武力による革命には安易に賛同できないけれど、「人間による人間の搾取をなくしたい」というゲバラの気持ちは良く分かる。
彼はモラルや正義を重視し、腐敗や私欲とは無縁の誇り高い男だった。たとえ部下でも、農家の食料を略奪したり女性を暴行すれば許さなかった。彼の辞書には「妥協」という文字が無いので、一緒に行動するのは大変だ。食料も弾薬も乏しい。それでも、“虐げられた貧しい人々を救いたい”というゲバラについていく、そんなゲリラたちの想いと共に行動した2時間は、僕の人生の中で決して無駄な時間ではなかった(ゲバラのぜん息の呼吸音がまだ耳から離れない。それくらい彼が近くにいた)。ゲバラが銃殺されるシーンだけ、カメラが彼の目線になったので、ゲバラと共に自分も地面に崩れ落ちた気がした。

最後に特筆したいのは、この映画にエンディングの音楽がなかったこと!過去にも曲なしエンディングはあったけど、スタッフロールは比較的に短かった。本作はスタッフの数が多く、長い時間、ずっと無音の中に身を置くことになる。この無音という“演出”は、ある意味、音楽以上に感情を揺さぶった。音楽がないので他に集中するものがなく、暗い画面を見ているうちに、ゲバラの人生を振り返り始める。キューバでの情熱の日々、フィデルや家族と遠く離れたボリビア山中での逃避行、孤独な死…。理想や正義感が空回りし、作戦は失敗、農民にも部下の一部にも裏切られて39歳で死んでいったゲバラが、とにかくもう可哀相で可哀相で、無意識に涙が溢れてきた。それは僕だけじゃない。ほぼ同時に場内のあちこちから鼻をすする音が聞こえてきた(静かなのでよく響く)。特に僕の左前に座っていたおじさんは号泣。右の方でもおじさんが爆涙していたので、おそらく団塊の世代は学生運動の挫折を経ているので、ゲバラのことが他人事と思えず、あんなにも泣けたんだと思う。
一方、後ろに座っていた若者3人は「つまらん、途中で寝た」「何も伝わってこない」と、全くゲバラに同情していない。なんという温度差!これは別にあの若者たちに感受性がないわけじゃなく、再び日本に熱い政治の季節が訪れたら、この映画が若者にもリアリティを持って輝き出し、高く再評価されると確信している。
「もし我々が空想家のようだと言われるならば、救い難い理想主義者と言われるならば、出来もしないことを考えていると言われるならば、何千回でも答えよう、『その通りだ!』と」(ゲバラ)
※カンヌ国際映画祭(2008)男優賞

  『28歳の革命』『39歳別れの手紙』
112.モーターサイクル・ダイアリーズ('03)127分 英・米

この映画はアルゼンチンの2人の若者--29歳の“放浪化学者”と、23歳の生真面目な医学生--が“怪力号”と名付けられた一台の中古バイクにまたがり、半年がかりでチリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラと、南米大陸を南北に縦断する珠玉の青春映画だ。
作品は次の言葉で始まる「これは偉業の物語ではない。同じ大志と夢を持った2つの人生が、しばし併走した物語である」。主人公の声が重なる「旅行計画:4ヶ月で8千キロを走る。目的:本でしか知らない南米大陸の探検。移動手段:“怪力号”。運転手:アルベルト・グラナード。僕の友人で29歳。自らを“放浪化学者”と呼ぶ。副運転手:僕、エルネスト・ゲバラ。“激しい男(フーセル)”。23歳」。
当初2人の若者は、何でも見てやろう、異国の女性とロマンスを楽しもう、そんな軽い気持ちで旅に出る。だが、雪のアンデス、灼熱のアタカマ砂漠、大アマゾンなど過酷な自然と向き合い、インカ、マチュピチュ古代遺跡で人類の歴史の中を通っていくにつれ、自分と世界の接点を模索し始め視野が広がっていく。バイク移動から後半はヒッチハイクに移るが、バイクを降りて諸国を歩き出して、初めて見えてきたのは抑圧され貧困にあえぐ民衆の姿だった。南米の光と影を知り、若者たちはそれぞれに魂の進むべき方向を見出していく。

映画には描かれないが、主人公のゲバラはこの貧乏旅行の7年後にキューバ革命を成功させ、国連で自らの理想を演説する人物になる。米国CIAの陰謀によって39歳の若さで射殺されるが、死後約40年を経た現在も第三世界の英雄としてカリスマ視されている。製作総指揮は名優ロバート・レッドフォード、監督は『セントラル・ステーション』で全世界を感動させたブラジル人ウォルター・サレス。レッドフォードは言う「私が描きたいのは革命家チェ・ゲバラになる以前、なぜ無名の23歳の医学生が、世界史に名を刻む男になったか、そのエネルギーの源だ」。映画は政治色を一切排し、ゲバラの人間的な部分にスポットを当てる。上映時間は2時間だけど、見終わったときに3人目の旅人として、半年間彼らと共に旅をしていた錯覚に陥った。

この映画は、全ての若い人に見て欲しい。もし僕が二十歳前後にこの映画を見ていたら、めちゃくちゃ影響を受けていたと思う。決して歴史的事件やセンセーショナルなエピソードが描かれている訳ではなく、ハッキリ言って地味な映画だ。でも、この2時間は絶対に人生にプラスになると約束する。自分の内部で何かが変化し始める興奮を体感できる、そんな熱い映画だッ!
※アカデミー賞(2003)歌曲賞

 
113.リトル・ミス・サンシャイン('06)100分 米
心がバラバラの家族がポンコツ車での旅を通して結束し、絆が再生していく過程を綴った人情コメディ。監督いわく「競い合って勝つこと、そして美しくあるべき、というアメリカ人の固定観念を皮肉った」。主役の一家は奇天烈ファミリー。“勝ち組になりたい”病の父親、ヘロイン中毒でスケベな爺ちゃん、ニーチェ信者で“沈黙の誓い”を立て口を利かない長男、ミスコン優勝に命をかける妹、失恋して自殺未遂を企てたゲイの義兄、キレる寸前で家族をまとめようと奮闘する母親。皆、生きることが不器用。人物描写があまりに見事で、映画を観てることを最初の10分で忘れてしまい、アリゾナからカリフォルニアまで、僕は彼らと同じ車に乗り合わせた一体感を味わった!口論ばかりで機能不全に陥ってる家族が、次々と起きるトラブルに対して一致団結していく姿はジーンとくる。映画の宣伝に「全米が“負け組”家族に大喝采」とあるけど、ほんとスクリーンから沢山の元気をもらい、最後は拍手したくなった。ミニシアター系の低予算映画にもかかわらず『硫黄島からの手紙』『ディパーテッド』など大作と並んでアカデミー作品賞候補になってるだけはある。劇中に登場する「負け犬の本当の意味は、負けることを怖がるあまり挑戦しないヤツらのことだ」は素晴らしい言葉だね。あと、“人生に無駄な経験は無い、どんな辛い過去も今の自分を形成してくれた大切なものだ”もいい。人生の価値は他人との勝ち負けではなく、いかにチャレンジし続けるかにあると思った!
※アカデミー賞(2007)助演男優賞、脚本賞
【ネタバレ文字反転】
100の言葉より1つのハグ!夢が断ち切られ、どんな慰めの言葉も受け入れられなかったお兄ちゃんが、小さな妹のハグで立ち直るシーンは感動的。あれは泣く。言葉を超えたハグ…人間っていいなぁと、思わずにいられない。ミスコンでの“笑撃”の家族ダンスも、大人たちは自分が辛い人生を送ってるからこそ、純粋無垢な妹だけは守ってあげたいという気持が伝わり、おかしなダンスに笑いながらも泣けてきた。そしてあのラスト!当初は不器用に車に乗っていた家族が、「あうんの呼吸」で一人ずつ乗り込んでいき、皆で同じ方向に進んでいく…わーん、完璧!冷静に考えれば誰も幸せになっていないのに、それでもハッピーエンドに思えてしまう奇跡の脚本だった!

 

114.ガンジー('82)188分 英
映画の為にデリーで再現された葬儀シーンは、葬列に参加した人間が40万人(DVD解説による)で、“最多エキストラ”としてギネスに登録されている。ガンジーを弔う為に、文字通り地の果てまで続いてる人の波は圧巻の一言。今ならCGで群衆を描けるけど、本物のインド国民が集まった。俳優ベン・キングスレーは完全にガンジーになりきっていて、アカデミー主演男優賞も当然というか、世界中の全映画賞をあげても足りないくらいの熱演だった。独立運動に対する英国軍の弾圧シーンを見て思ったのは、英国側にいかなる理由があるにせよ、無抵抗の人間を殴打するのは最低の行為であり、「非暴力という戦術」は誰が悪者かハッキリさせる絶大な効果があると思った。僕は昔、マンガ『北斗の拳』を読んで、ラオウが無抵抗主義の村で「この拳王には無抵抗は武器にはならぬ!」と村長を撲殺した場面に“無抵抗は通じない”ってショックを受けたけど、ラオウの「意思を放棄した人間は人間にあらず!」という怒りの台詞は、ガンジーには当てはまらないと思った。あの村長はニコニコ笑って強者に媚びていたけど、ガンジーは「暴力は使わないが服従もしない」という強烈な意思を持っており、絶対にラオウに愛想笑いなんかしない。

「誰かが正義の為に戦ってると、たとえ危険を冒しても人々は立ち上がるものです」、僕はガンジーのこの楽観主義が好き。そして実際に多くの人々が次々と立ち上がった。もし人類史にガンジーがいなければ、「非暴力主義なんて単なる理想家の夢物語」として一笑されていたかも知れない。しかし、現にインドは独立した。強力な近代兵器を備えた大英帝国を相手に、丸腰で闘争を挑んで勝利した。この事実がどれほど人類の希望となることか。/とはいえ、世の中には非暴力が通じない相手もいる。この独立運動で英国軍のダイヤー将軍は無抵抗の市民374名を射殺する事件を起こしている(アムリツァールの大虐殺)。まして独裁者ヒトラーや金正日が非暴力の正論に耳を傾けるとは思えない。だからこそ、なぜガンジーが「暴力はさらなる暴力を生む。非暴力は相手の良心を目覚めさせることができる」とまで言い切れるのか、その根拠が長く疑問だった。しかし、最近出合ったガンジーの2つの言葉「人間性への信頼を失ってはならない。人間性とは大海のようなものである。ほんの少し汚れても海全体が汚れることはない」「私の全行動は人類への奪うことのできない愛から生じる」で答えが見つかった気がする。65億人の人間性が大海であるならば、少数の悪党が存在しても海全体が汚れることはない。独裁者はその非人道から目立って見えるけど、あくまでも65億分の1であり大海に混じって消えていく。人間性全体への信頼は微塵も揺るがない。それを信じ抜く姿を見せてくれた映画『ガンジー』に携わった全ての人に感謝。
※アカデミー賞(1983)作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、美術監督・装置、衣裳デザイン賞、編集賞/NY批評家協会賞(1982)作品賞、男優賞

 
115.ボウリング・フォー・コロンバイン('02)120分 米・カナダ
公開時のコピーは“こんなアメリカに誰がした?”。銃によって殺害された年間被害者数--日本39名、英68名、カナダ165名、仏255名、独381名、米国11127名!マイケル・ムーア監督はベストセラーとなった“アホでマヌケなアメリカ白人”の著者で、ホワイトハウスが公式に“危険人物”と評する反権力の塊だ。オスカーに輝いたこの『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、銃社会の問題を鋭く告発した記録映画で、ユーモアを武器にアメリカ白人社会の病巣を徹底的にえぐり出している。ヨレヨレのジーンズとTシャツ、野球帽といったイデタチで、兵器産業や銃擁護派の圧力団体“全米ライフル協会”に立ち向かうマイケル・ムーア監督に、最大の賛辞を送りたい!(劇中で多くの米国人のトラウマになっている9.11の映像を、アメリカが戦後に世界中で犯した極悪非道の数々の犯罪映像の最後に持ってきたことにたまげた。ムーア監督の心臓は毛むくじゃらとしか思えない。アニメで語られた「近代アメリカ史」も相当ブラックなもの)
※ムーア監督は日常的に右翼から脅迫されており、いつ暗殺されてもおかしくない状態。でも、相変わらず命知らずの言動を繰り返している。
※アカデミー賞(2003)ドキュメンタリー長編賞/カンヌ国際映画祭(2002)55周年記念特別賞(この映画の為に急遽新設された)

●全75回のアカデミー賞史の中で最大のセンセーションを巻き起こしたのが受賞時のムーア監督のスピーチだ!プレゼンターのダイアン・レインが作品名を叫んだ瞬間、全出席者が総立ちになり大きな拍手が沸き起こった。これは極めて異例なことだ。巨匠と呼ばれる監督や往年の大女優が受賞した場合に会場が総立ちになることはある。だが、40代のドキュメンタリー監督がスタンディング・オベーションを受けたのにはおったまげた!万雷の拍手に迎えられたムーア監督は、同賞にノミネートされた他の候補者らも舞台に上げた。会場はいったい彼がどんなスピーチをするのかと耳を澄まし、緊迫した空気が張り詰める。授賞式は生放送なのでカット不可能。全米はもちろん、世界中に同時中継されている。彼は静かに口を開いたが、それはすぐに雄叫びへ変わった!
「我々は全員ノンフィクションを愛する者です。しかし今はウソ偽りの時代だ。インチキな選挙で選ばれた偽者の大統領の時代だ!大統領はウソの根拠で国民を戦場へ送り出している!どんな偽りを並べ立てようと我々は断固この戦争に反対する!ブッシュは恥を知れ!恥を!ローマ法王とディクシー・チックスを敵に回したら貴様は終わりだッ!!」※D・チックスは国民的人気カントリーバンド。法王、D・チックス、共に武力行使に反対を表明。
ムーア監督はブッシュのことを“プレジデント・ブッシュ”ではなく“ミスター・ブッシュ”と呼び、幾度も「シェイム・オン・ユー、ミスター・ブッシュ!」と拳を突き上げ罵倒した。会場にはブーイングの嵐と大喝采が同時に起こり、蜂の巣をつついたように騒然となった。
客席の俳優たちの表情も千差万別。唖然として口を開けてる者、ニヤニヤ見つめてる者、奇声をあげてる者…。満面の笑顔だったのがハリソン・フォード。拍手していたのはリチャード・ギアやスコセッシ監督、暖かい笑みを送っていたのがキッドマンやルイス・ゴセット・Jr。聞き入ってるのはエド・ハリスにD・ワシントン(大物俳優でブーイングしている者は一人もいなかった)。
ムーア監督のスピーチはバンドの演奏が始まり強制終了。退場後に登場した司会のスティーブ・マーティンの場のつなぎ方が、これまたサイコーだった。「今、舞台裏でムーア監督が“連中”に車のトランクへ詰め込まれました」J・ニコルソンとM・ストリープは天を向いてバカウケ。ニコラス・ケイジ、ダスティン・ホフマン、クリストファー・ウォーケンらの笑顔をカメラは続けて捉えた。

 

116.スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(帰還) 特別篇('97=旧版'83)137分 米
砂漠でのジャバ・ザ・ハット一味との対決、ヨーダの死、惑星エンドアとスーパー・デス・スターという地上と宇宙の並行Wバトルなど、とにかく見所がいっぱい。中でもスピーダー・バイクの疾走シーンの迫力がハンパじゃない!手は汗でグッショリだし目まいがした。イウォークたちの活躍も楽しく、C−3POが彼らに神様と間違えられるのはケッサク。ルークの服はシリーズを通して白→グレー→黒と変わってきたが、これはフォースの暗黒面が彼を染め上げようとしていることの象徴。そこをあえて不屈の精神力で跳ね返すところに克服感がある。今エピソードで明かされたルークとレイアの秘密には驚いたなぁ。スター・デストロイヤーに特攻をかけたパイロット、カッコ良すぎッ!!
※特別篇は砂漠の戦いとラストシーンが補完され、オリジナル版より5分長い。
※アカデミー賞(1998)特別業績賞(視覚効果)

 
117.ファイト・クラブ('99)139分 米
“お前らは広告や宣伝文句に煽られて、要りもしない車や服を買わされている。TVは言う--「君も明日は億万長者かスーパースター」。大嘘だ!”
物質文明を批判し、テロを賛美するかのような過激で反社会的なストーリーが物議をかもし、米国各地で上映禁止の運動が起こった問題作。ブラピ扮するカリスマ・リーダーがスクリーンから我々観客を睨みつけてすごむ、以下のセリフに劇場で鳥肌が立った。
「職業が何だ?財産が何の評価に?車も関係ない。人は財布の中身でも、ファッションでもない。お前らはこの世のクズだ」
脳を揺さぶるキョーレツな映画だ。オープニングのタイトルバックからブッ飛んでるし、ドンデン返しは映画史に残るものだろう。前半と後半で全然違う映画になっちゃうのはスゴイ。主人公に名前がないのも異例。
※直接ストーリーとは関係ないから書いちゃうけど、作品中で一番好きなのはブラピがコンビニ店員の青年に銃を突き付け“夢を追え!”と脅迫するシーン。あんな痛快な内容の脅迫は初めて!
(ブラピは洗濯出来そうな腹筋)

 
118.戦争のはらわた('76)133分 英・西独
爆音、硝煙、絶叫、吹き飛ぶ肉体、勲章のための味方殺し、ゴミのようなプライド、第二次世界大戦を“ドイツ側”から描いた鬼気迫る戦争映画。主人公の台詞「神はサディストだ。だが神はそれを知らない」が作品を象徴している。善悪の二元論だけで戦争を描いた他の映画が馬鹿馬鹿し く見える、意表を突いたラストに呆然。救いがたい愚行が描かれる一方で、ペキンパー監督の十八番であるスローモーションの短いカットが随所に挿入され、膝から崩れ落ちる兵士や爆風で宙に舞う兵士など、凄惨なのに舞踊・バレエのような美しさもある。こんな戦争映画観たことない。

戦いの舞台は泥沼の東部戦線(独ソ)&撤退戦。この設定だけで戦史マニアは「キツい戦場だ」とクラッとくると思う。冒頭に童謡『幼いハンス』(日本では唱歌“ちょうちょ”で有名)が流れ、これをBGMにナチス・ヒトラーの台頭が描かれる。『幼いハンス』の歌詞は“ハンス坊やが冒険の旅に出て、お母さんは心配で泣いてしまった。ハンス坊やは無邪気に家を出たけどお母さんは大泣きしている”というもの。ナチスの底の浅さを暗示。
原題の“クロス・オブ・アイアン”はドイツ軍の名誉勲章“鉄十字勲章”のこと。他人から勇敢に思われたい、みんなに尊敬されたいという、子どもっぽい動機 で戦争を行っている将校たちへの皮肉だ。公開時は邦題が「『悪魔のはらわた』の二番煎じ」と批判され、今もこの邦題は叩かれまくってる。実際、僕もこの題名のせいで長年観る気がしなかった。しかし、監督がイブシ銀のバイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパーであり、多くの映画ランキングで戦争映画の最高峰と 讃えられているので、2010年にDVDが再販(10年間廃盤でネットでは3万円で取引されてた)されたことを機に鑑賞。今は「なんて上手い邦題なんだろう」と逆に感心してしいる。“はらわた”という言葉が持つドロドロ感や腐臭が、人間から尊厳を奪う戦争の醜さにはピッタリだ。

主人公シュタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)は最前線で英雄的な活躍をしながら、心底から戦争を憎み勲章を侮蔑している。上官のプロイセン貴族シュトランスキー大尉(名優マクシミリアン・シェル!)が名誉欲の権化である俗物であるため、余計にシュタイナーの男気が引き立つ。シュタイナー隊はとにかく男臭く、どの兵士も一癖ある。「肌の油が雨を弾くので風呂に入らない」奴もいる。ドイツ兵が全員ナチス党員という訳じゃないので、同じドイツ軍でも「ナチの糞野郎」と陰口を言ったりするのは新鮮だった。また、ヒトラーについては“あんな男でも選挙で選ばれた者であり従うしかない”、そんな虚しさが漂っていた。
滅びの美学を体現するブラント大佐(ジェームズ・メイソン)が、死に場所を求めるキーゼル大尉を最前線から下げる時の説得の言葉が心に染みた。「(敗戦後 に)もし新しいドイツが存在するなら、建築業者、思想家、詩人が必要に…君の役割が必ずある。君に最後の命令を与える。君はいわば“より良い人々”を探 し、連絡を取ること。そして一緒に“生き残りの責任”を引き受けること。ここを離れよ」。

エンディングのスタッフロールの途中で、ベトナム戦争、アフリカ内戦、中東戦争を思わせるスライドが挿入され、欧州戦線と現代のアジア、アフリカ、アラブが一瞬のうちに繋がった。ファシストを倒しても人類は戦争を克服できないばかりか、欧州の外へ悲劇が拡大している。独ソ戦を描きつつも、あらゆる戦争を対 象にした普遍的な作品となり圧倒された。人間の凶暴性を過小に見てはいけない。最後に映し出される劇作家ブレヒトの言葉「世界はあの男(ヒトラー)に打ち 勝った。だがあわてて勝利の歓声をあげないでほしい。あの男が這い出してきた母胎はまだ生きているのだ」にペキンパーの本気を見た。完璧すぎて泣けてくる。

【以下ネタバレ文字反転】何 もかも崩壊していくクライマックスが圧巻!味方殺しをした副官トリービヒ少尉を蜂の巣にした後、黒幕シュトランスキーも当然血祭りに上げると思っていた ら、シュタイナーは奴を殺さずに最前線へ引っ張り出した。同時にBGMで冒頭の童謡『幼いハンス』が再び流れる。シュトランスキーは「プロイセン貴族の戦 い方を見せてやる」と“ハンス”のように誇り高く大見得→「あわわ、リロード(機関銃の再装填)の仕方が分からない」とパニック。その子どもじみた醜態を 見たシュタイナーが大きく哄笑!“誇りが何になる”という「もう笑うしかない」の高笑い。仇討ちでシュトランスキーを射殺するよりもインパクトがある。ソ 連軍の総攻撃を受け、崩壊する戦線に響き渡る笑い声、その無常感!ひょえ〜。しかも、先述したエンディングの現代の戦争スライドの最後にも再び笑い声が 入っている。人類の愚行を全て笑い飛ばしたシュタイナー。なんちゅう映画だ!味方が犬死にした「ディモケーション!(境界線)」の合い言葉と、シュタイ ナーの高笑いが耳から離れない。

※ペキンパー監督はドイツ兵を主人公にした映画を作った為に、この後ハリウッドのユダヤ資本に冷遇されたという。
※DVDは日本語字幕が滅茶苦茶!例えばシュタイナーが捕虜(少年兵)を 解放する大事なシーンはこうだ→「すべて偶発事だ。我々の側、お前の側…考えなしの…ある極限からもう一つへ。どれも上手く行かない。絶対に。だから私た ちは真ん中に居る。私とお前だけの世界。家に帰れ」。なんじゃこりゃああ!他にもクライマックスの「絶滅する使命の我々ドイツ軍人はその期間を超えてい る」とか。グーグルの自動機械翻訳でも使ったのか?字幕担当は“須賀田昭子”となってるんだけど、「この女性は実在せず、翻訳マシーンの愛称では?」「須 賀田昭子は姿無き子のパロディか」と映画ファンの間で囁かれている。
※英独合作映画で俳優は全員英語を喋ってる。混戦になるとドイツ軍もソ連軍も制服の見分けがつかず戦況が分かり辛かった。
※ラストのスライドで首に縄をかけられている女性が2度出てくるけど、あれが何のスライドか分かった方、教えて頂けると助かります。フランス解放後のナチ協力者への仕返しっぽいけど…。
※うお、YouTubeは15分リミットのはずなのにこちらに丸ごと(2時間6分)…ゴホンゴホン。字幕ナシですが雰囲気は伝わるかと。


 
119.ツリー・オブ・ライフ('11)138分 米
敬愛するテレンス・マリック監督の作品であり、公開初日の初回に鑑賞!主人公の自分史が、宇宙や地球の誕生から語られる壮大さに度肝を抜かれた。哲学性、芸術性が全面に出ていて、エンターテインメント性はほぼ皆無。評論家の賛否が分かれているけど僕は断固“賛”!宇宙・地球の歴史と家族問題(父子の確執)という、マクロとミクロを並行してして語る神業に圧倒された!「愛することでしか幸せになれない。愛がなければ人生は瞬(またた)く間に過ぎ去る」が凄い説得力。

スメタナの『モルダウ』に乗せて描かれる幸福な幼児期のシーンだけでも映画代のモトはとれた。“成功して重要人物になりたい”と強迫観念を抱く父は見てるだけでしんどく、次男が父に「静かにして」って言うシーンはインパクトがあった。恐竜まで登場するテレンス・マリック版『2001年宇宙の旅』。カンヌ映画祭パルム・ドール受賞。
※ストーリーに起伏がないうえ、壮大な宇宙の映像は巨大スクリーンで観て初めて感動を与えられるため、DVDで観た人には「退屈」と叩く人が多いと思う(汗)。
※カンヌ国際映画祭(2011)パルム・ドール

 
120.ウォッチメン('08)163分 米
原作のアメコミはSF界で最高権威のヒューゴー賞を受賞!漫画作品でヒューゴー賞に輝いたのは、この『ウォッチメン』だけ。タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれ、コミックでありながら小説扱いということからも脚本の秀逸さが分かる。“実写化不可能”といわれた原作を、映画版は驚くべき再現度で見せてくれた。どのキャストも原作そっくり。約3時間もある力作であり、ザック・スナイダー監督の映像センスに酔いしれた。

この作品が一般のヒーローものと大きく異なるのは、登場するヒーローが8人いて、互いに抱く正義の価値観が異なるため、平和の実現方法についてヒーロー同士が衝突する点。“真実こそ正義”と最後まで妥協しないロールシャッハがシブ過ぎる!強く印象に残った台詞は、宇宙や自然の壮大さに心を奪われ「自然の奇跡に比べると人間はちっぽけすぎる」と、人間を助けることに興味を失った1人のヒーローが、個々の人間の存在そのものが奇跡だと悟る場面。「数億分の1の確率の受精を経て、今の君が誕生した。唯一無二の君が。地球上のあらゆる人間が奇跡だ。ただ、人間の数があまりにも多く、奇跡があまりにもありふれているため、誰もがそれを忘れてしまう」
ただし、R-15指定になってるようにバイオレンス全開(グロもあり)なので、好き嫌いは分かれると思う。ネット評価を見ても0点と90点に分かれるなど極端な反応が出ている。僕は甘いのかも知れないけど、ヒーローが戦争根絶の方法や核兵器の脅威に悩むだけでこの高得点を献上したい。

 
121.オール・アバウト・マイ・マザー('98)101分 スペイン
ゲイのアドモドバル監督が作った女性賛歌映画。情に厚く、感情豊かな女性たちが、傷ついた心を静かに回復させていく。楽しいこと、辛いこと、様々な体験を経てきた女性たち(オカマちゃんを含む)が、映画の後半で飲み食いしながらワイワイ世間話に興じるシーンがあるんだけど、そこがもう本当に楽しそうで、映画の帰りに“何だか男ってつまらないな”と無性に寂しくなったッス…。くそー、僕も子供を産みたい!
※アカデミー賞(2000)外国語映画賞/カンヌ国際映画祭(1999)監督賞/NY批評家協会賞(1999)外国映画賞

 
122.プライベート・ライアン('98)170分 米

「戦争はスポーツじゃない。爽快でも興味深いものでもない。泥々の殺し合いだ。」(スピルバーグ)
ノルマンディー上陸作戦を描いた冒頭30分の死闘は、一言も「戦争反対」という言葉が出て来なくても、本能で“こんな愚かなことやっちゃいけない”と理解させる、キョーレツなものだった。生死を分けるのは“勇気”でも“自制”でもなく、「運」だけだ。誰もがはらわたを出して息絶える可能性がある。
両手をあげて降伏したドイツ兵を問答無用で撃ち殺している米兵を観たのは、この作品が初めて。それまでの戦争映画に登場する米兵は、ヒーローだから捕虜の虐殺はしなかった。その意味でもスピルバーグはリアルに戦争を描いている。
※アカデミー賞(1999)監督賞、撮影賞、音響効果賞、音響賞、編集賞/NY批評家協会賞(1998)作品賞

 
123.真夜中のパーティ('70)120分 米
ブロードウェイの秀作舞台の映画化。ゲイ仲間7人の楽しい誕生パーティに、偶然1人のストレート(彼はゲイを蔑視している)が加わったことで引き起されるドラマが描かれる。この作品はゲイが抱える様々な社会的苦悩を正面から描いており、僕はこの映画からゲイの優しさ、繊細さ、傷つきやすさを知り、一方的な偏見がなくなった。愛には様々な形態があることを、この120分で学んだんだ。他人の心の声に耳を傾けることの大切さを教えてくれた、自分の内面的な成長に繋がった大事な作品だ。

  ビデオもDVDもなし(涙)
124.暗殺の森('70)107分 伊・仏・独
ベルトルッチの最高傑作。原題は“体制順応主義者”。ファシスト政権下('38年)のイタリアが舞台。主人公は反ファシストの教授を暗殺するよう指令を受けるが、その教授は彼が尊敬していた学生時代の恩師だった。教え子として今も温かく迎えてくれる教授を、果たして殺せるのか?ダンスホールでの官能的な女性同士のタンゴや、雪深い森の中で決行される襲撃シーンなど、退廃美や、背筋の凍る場面を織り込みながら、良心の呵責に苦悩する主人公を描いていく。戦後のシーンで、パニックに陥った主人公の叫び声が忘れられない。色調に酔い、タンゴに酔った。

 
125.灰とダイヤモンド('58)102分 ポーランド
第二次世界大戦末期のワルシャワ。テロリストの青年マチェクは人違いで2人の人間を殺してしまう。しかも本来のターゲットは人間のよくできた人格者で、マチェクは組織の暗殺命令との板挟みになって苦悩する。映画冒頭の聖堂シーン、火のついたアルコール、暗殺シーンの花火など印象的なカットは多いが、なんと言っても強烈なのは、いまや伝説と化しているゴミ捨て場のクライマックス。虫けらのように、のた打ち回る主人公の姿は一生忘れられない。マチェクを演じた俳優スビグニェフ・チブルスキーは、このあと鉄道事故で死ぬ。
※ヴェネチア国際映画祭(1959)国際映画評論家連盟賞

 
126.お熱いのがお好き('59)122分 米
笑いは社会の潤滑油。世の中が閉塞的でギスギスしている時は、大笑いして重い空気をカッ飛ばしたいもの。2007年に米映画協会(AFI)に所属する監督、脚本家、俳優、編集者、批評家ら1500人が、歴代のアメリカ映画の中からコメディのベスト100を選出した。映画関係者が「いつかはこんな映画を作りたい!」と感じている憧れの作品だ。栄えある第1位に輝いたのは、ビリー・ワイルダー監督の『お熱いのがお好き』。

舞台は1920年代、禁酒法時代のアメリカ。シカゴの闇酒場でバンドマンをしているベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)とサックス奏者のジョー(トニー・カーティス)は、たまたまギャングの抗争現場を目撃してしまう。7人が殺害された「聖バレンタインデーの虐殺」だ。口封じを狙う悪党から追われた2人は、シカゴを脱出する為に女装をして女性だけのビッグバンドに紛れ込む。そして、ジョーはジョセフィン、ジェリーはダフネの名前でマイアミへの演奏旅行に出発した。移動中にジョーはバンドのキュートなウクレレ奏者シュガー(マリリン・モンロー)に一目惚れ。なんとか良い仲になりたいが、女装では告白できない。マイアミ到着後、ジョーは男性の姿に戻ってシュガーに接近したり、女装をしてステージに立ったりと大わらわ。気の良いジェリーは、小まめに立ち回るジョーに呆れながら、友情のために何度も協力する。ジェリーはジェリーで、彼を女性と思い込んだ年配の大富豪オスグッド3世の猛烈なラブ・アタックを受け、ややこしい状況に…。

【以下ネタバレ文字反転】
やがて、滞在先のホテルでギャングの秘密会合があり、2人は正体がバレてしまう。ジェリーたちはオスグッドのヨットに逃亡。ドタバタの大騒ぎの中、シュガーはジョーの告白を受け入れた。自分が男であることを打ち明けたジェリーに、オスグッドは“何も問題ない”とまったく動揺することなく、笑顔でこう答えた。「完全な人間なんていないのさ」。

名作喜劇のクリエイターとして多くの信奉者を持つワイルダー監督だが、20代後半にナチスの迫害を逃れるためにドイツから渡米しており、母親や親類をアウシュヴィッツで失うという壮絶な過去を持つ。米国では滞在ビザが切れた時に、副領事が「いいシナリオを書くんだ」とパスポートにスタンプを押してくれ、感激して良い脚本を生み出す為に全力で努力したという。苦難を知っているからこそ喜劇の手腕も冴え渡る。劇中のマリリンは素直で愛くるしいけれど、当時は情緒不安定で楽屋に閉じこもったり奇行が多かった。そんな彼女を生き生きと輝かせ、魅力を引き出せたのは監督の豊かな人間性あってのこと。2人の男性陣も実に楽しそうに演じている。

僕は個人的ライフワークとして、映画俳優、監督など芸術家を中心に、国内外1500人以上の墓を巡礼してきた。ハリウッドスターの中には古墳並に大きな墓を造る人もいれば、海への散骨を希望する人も多い。たとえば、ヘンリー・フォンダ、マーロン・ブランド、ジーン・ケリー、ビビアン・リー、ジャン・ギャバンといった、往年の映画ファンなら誰もが知っているスターは、散骨されたために墓がない。散骨以外でも、ポール・ニューマン、チャールトン・ヘストンのように、遺灰が家族や友人に分けられ墓を造らない人もいる。僕は墓に刻まれた言葉をラストメッセージと思っているので、お墓を造って欲しい。
本作品のワイルダー監督、レモン、モンローは、なんと全員が同じ墓地に眠っている。しかも監督とレモンは隣同士だ。ワイルダー監督の墓石には、前面に大きく「NOBODY'S PERFECT」と彫られており、95歳という長寿で他界した監督が、墓参者に“気楽に行こう”と語りかけているようで心がすごくラクになった。有難うございます!
※アカデミー賞(1960)衣装デザイン賞

 
127.ブラザー・サン・シスター・ムーン('72)121分 伊・英 
聖フランチェスコの青春時代を映画化した心洗われる傑作。音楽、映像ともに非常に美しい。観終わった後、間違いなくストイックな気持ちになる。自分は別人に生まれ変わったような気がした(一眠りして屁をこけば元の煩悩苦悩君に戻っちゃうけど…)。
果たして法王は心を入れ替えたのか、食わせ物だったのか。素直に気持ちのいい涙を流したかったな。

 
128.木を植えた男('87)30分 カナダ
最初は白黒に近い画面だが、物語が進むに連れ、徐々に色の洪水に変わっていく。宗教的体験にも似た、聖なる30分だった。
※アカデミー賞(1988)短編アニメ賞

 
129.THX−1138('71)86分 米
あのジョージ・ルーカスのデビュー作。25世紀を舞台にした、コンピューター対人間の物語。SF映画とバッハのマタイ受難曲という組合わせに鳥肌がたった。筆舌に尽くせぬほど壮大なラストシーンは必見!

  斬新なDVDのジャケット。耳たぶにタイトルが書かれている
130.少女の髪どめ('03)96分 イラン
あまりに甘々なタイトルに“ひく”人もいるだろう。だが、原題の「バラン」は少女の名前であると同時に「雨」という意味もあり、渋い!(「雨」ではヒットしないので、いかにもそれ風な邦題が付いてしまった)。物語は「粗野だが純朴な青年が少女に恋をする」基本的にはたったそれだけ。劇的な告白シーンもない。しかし、この映画は青年が他人を想うことを通して、人間的に大きく成長する姿を見事に描き切っていた!映画の前半と終盤を比べると、主人公は同じ役者とは思えぬほど表情に深みが出ている。彼は自己犠牲を“犠牲”とは認識しておらず、僕は愛の何たるか(奪う愛ではなく、与える愛)を見せつけられた。こんな純粋な恋愛映画(文字にすると安っぽいけど)を観ると、他の駆け引き中心のラブストーリーが見れなくなりそう。もう中盤から青年の瞳を見てるだけでウルウルきてしまい、最後はあまりに泣きすぎて頭痛がした(この“泣きすぎて頭痛になる”って感覚、分かります!?)。帰りの電車の中でもハラハラと“思い出し涙”が年甲斐もなく流れ、他の乗客に悟られぬよう拭うのが大変だった。
※「映画」の素晴らしい点は、異国の人々の生活を垣間見ることができるところ。この作品の舞台はイランの建設現場で、アフガン難民の労働者も多く働いている。そうした場所で人々と膝を交えるなんて、まず体験できないこと。彼らの会話を通して、異国の価値観や文化に触れるのは非常にエキサイティングな体験だ!
※モントリオール映画祭グランプリ

 
131.大地のうた('55)125分 インド
インドが誇る世界的映画監督サタジット・レイの代表作。インドの寒村の現実がリアルに描かれている。白黒の画面にもかかわらず、風景が実に美しい。音楽はシタールの名手ラヴィ・シャンカール!
※ヴェネチア国際映画祭(1957)国際映画評論家連盟賞/カンヌ国際映画祭(1956)人間的ドキュメンタリ賞

 
132.死刑台のエレベーター('57)92分 仏
この都会のドライな殺人事件を撮った頃、監督のルイ・マルはまだ25歳だった。音楽はジャズ界の帝王マイルス・デイビスが、映像を見ながら即興でつけた。ラストのジャンヌ・モローのモノローグが胸を打つ。

 
133.キッド('21)52分 米
チャップリンいわく“ほほえみと一粒の涙をともなう作品”。彼の初の長編映画だ。偶然めぐり会った捨て子を、男手ひとつで育て上げるチャーリー。成長した子供が料理を作っている姿がカワイイ!あの子役も生きていればもうすぐ90才なんだよな〜。

 
134.白バラの祈り('05)121分 独

06年のアカデミー外国語映画賞ノミネート作。素晴らしかった!1943年に起きた実話の映画化だ。公式サイトの予告編でもDVDの箱でもストーリーが全部出ているので、今回はこのレビューも完全ネタバレでいきマス。主人公はミュンヘン大学の21歳の女学生ゾフィー・ショル。彼女と仲間は、“打倒ヒトラー”を呼びかけるビラを大学構内で撒いてゲシュタポ(秘密警察)に逮捕され、わずか5日後に反逆罪で処刑された。通常49日かかる裁判をたった1日で終わらせ、判決当日に刑を執行した権力者たち。彼女らは要人を暗殺したテロ犯でも、国家機密を他国へ流したスパイでもない。ヒトラー批判の言葉を街角に書き、ビラを撒いただけ。非暴力で抵抗を試みた若者たちを、なぜ大慌てで処刑せねばならぬほど、ナチスの大人たちは恐れたのか。学生らは謝罪し反省する態度を示せば、思想犯として収監されて助かったかも知れない。だが、彼女らは一言も詫びなかった。仲間には最前線からの帰還兵がおり、ヒトラーが宣伝する“ドイツ優勢”が嘘であることや、ドイツ軍による非人道的行為を目撃していた。「大人がヒトラー打倒に動かないなら自分達が立ち上がる」、その信念は揺らがなかった。この映画が制作されたきっかけは、90年代に入ってゲシュタポの尋問調書が発見されたこと。記録によって逮捕から処刑されるまでの彼らの心理に迫ることが可能になった。取り調べ尋問官や裁判長との論戦では、堂々と渡り合い見事に相手を論破していた。この映画は単にナチスの悪を描いたものではなく、人間の勇気を描いた作品だ。/両親との最後の面会からラストまでの数分間は涙腺が大決壊。まさに滝泣き。両親はこの場面しか出て来ないんだけど、あまりに母親役が素晴らしすぎる。あのとてつもなく優しい目!今まで数多く映画を観てきたけど、あんなに心に残る瞳は滅多にない(ほんのワンカットなのに!)。処刑の直前、学生たちは「この死は無駄じゃない」と静かに抱擁しあった。人によっては死を前に取り乱し暴れる者もいるだろう。僕は、“この死には意味があると思えたら、死を受け入れることが出来るのか!”と深く感じ入った。事実、彼らのビラは翌年に連合軍によってドイツの空から撒かれ、多くの国民にメッセージを伝えることに成功したのだった。レビューの最後は出演俳優アレクサンダー・ヘルトの言葉で締めたい。「現在に生きる人間は、当時のゾフィーたちほどの勇気を出す強い力は必要ないかも知れない。それでも、比較的自由である現代でも、自分の意見や信条を明らかにしていく場面はあると思う。私たちがゾフィーのように実践できるようでありたい」。
※ベルリン国際映画祭(2005)銀熊賞(監督賞)、銀熊賞(女優賞)

 
135.エデンの東('54)115分 米
相手の顔を見て喋ることが出来ない主人公キャル。ジェームス・ディ−ンの演技は真似をしようと思って出来るものではない。彼がもがき苦しんでいる時に見せる切ない瞳は、男が見ても母性本能(?)がくすぐられる。喉から絞り出すような涙声に胸を締め付けられ、居たたまれなくなった。
※アカデミー賞(1956)助演女優賞/カンヌ国際映画祭(1955)劇的映画賞

 
136.ターミネーター2・特別編('91)153分 米
一見SFアクション。だが原題に“審判の日”とあるように、滅亡の縁に立たされた人類がどのように平和を築き上げるか問いかけた、メッセージ性に富ぶ傑作だ。エンディングのサラのセリフが重く、深い。

 
137.サウンド・オブ・ミュージック('64)174分 米
単に楽しいだけのミュージカルではなく、反ファシズムのメッセージに貫かれたヒューマン・ドラマ。
※アカデミー賞(1966)作品賞、監督賞、ミュージカル映画音楽賞、編集賞、録音賞

 
138.レッドクリフ Part II -未来への最終決戦('08)144分 中国、香港、日本、韓国、台湾

この製作国を見よ!まさにアジア・パワー総結集!よくこんな巨大スケールの映画を作ったもの。80万対5万の最終決戦(赤壁の戦い)の壮大さに圧倒された。煙の中から徐々に大軍が見えてくる演出はアドレナリン暴走。予告編でハイライトを全部見たと思ってたら、その何倍もビッグスケールのクライマックスだったので、前半のかったるいドラマも許せてしまう。演技派の俳優が揃うなか、金城武や中村獅童は孔明や甘興を上手く演じていた。

 
139.猿の惑星('68)113分 米

いろんな映画で“衝撃のラスト”というものを見てきたけど、この「猿の惑星」がインパクトはナンバー1。中学の時に見て、数日間茫然としていた。
※アカデミー賞(1969)名誉賞

  このシーンをジャケットにしたデザイナー、何考えてんだろね(汗)
140.燃えよドラゴン('73)100分 香・米
「Don't think,feel!」(考えるな、感じろ!)
ブルース・リー映画の頂点。
世界各国で大ヒットとなり、カンフー・ブームが巻き起こった記念碑的作品。なんというシャープな体の動き!ヌンチャクの速さに目が追いつかない。主題曲の「アチョ〜!」からしてカッコ良すぎる。罠にかかって閉じ込められた時に、スッとヌンチャクを首に掛けて座すシーンに鳥肌。ああいう所作は西洋人にはないんじゃないかな。クライマックスの“鉄の爪”ハンとのミラールーム・バトルは伝説に。
この映画が封切られた時、既にブルース・リーはこの世におらず他界5ヶ月後の公開だった(享年32歳)。若き日のジャッキー・チェン(19歳・地下牢で瞬殺)やサモ・ハン・キンポー、ユウ・ピョウもザコ役で登場している。

 
141.ラストエンペラー('87)163分 伊・英・中
アカデミー賞、怒濤の9部門受賞!清朝最後の皇帝で、日本の傀儡として満州国皇帝になった溥儀(ふぎ)の生涯を描いた超大作。紫禁城(故宮)で世界初のロケーションが行われて話題になった。1908年の皇帝指名から、1967年の文化大革命下の死まで描かれている。皇帝から一市民となる波乱の人生。目の前で門が閉まるシーンが籠の鳥のようで印象的。
坂本龍一は俳優としても登場しているけど、音楽を担当してオスカーを受賞した。オリジナル全長版は219分もある。
※アカデミー賞(1988)作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、美術(監督)賞、美術(装置)賞、衣裳デザイン賞、編集賞、録音賞/NY批評家協会賞(1987)撮影賞

  DVDは画質が最悪らしくボロクソに叩かれている。ブルーレイ発売に期待!
142.タイタニック('97)189分 米
ギネスの記録を塗り替えた映画史上最大のメガ・ヒット作(後年『アバター』に抜かれた)。制作費の方も200億とケタ違いだ。全長236メートルのタイタニック号をそのまま再現しての執念の撮影。映画ファンの中には“誰もが観に行くから”という理由でこの作品を見てない人が意外と多い。でも、たとえ主演の2人がイヤな方でも、船の設計者や弦楽四重奏団の渋い演技には、ハンカチを取り出すと思う!劇中では約1時間をかけてゆっくりと沈没していく為、観客は時間の側面からもリアリティを強く感じることになった(水中に沈むモネやドガの絵のショットも鮮烈)。
※アカデミー賞(1998)作品賞、監督賞、撮影賞、主題歌賞、美術賞、衣装デザイン賞(カラー)、視覚効果賞、音響賞、編集賞

 
143.ボーン・アルティメイタム('07)115分 米

ポール・グリーングラス監督の、非常に見応えのあるアクション・サスペンス!「ボーン・アイデンティティー」(02)、「ボーン・スプレマシー」(04)に続く3部作の完結編。“ヒット作の続編は駄作”と言われるけど、ボーン・シリーズは3部のラストまで全く勢いが落ちることはなかった!パート3だけ観ても充分面白いけど、主役(マット・デイモン)以外の脇役も第1作から出ているので、最初から観た方がさらに楽しめる。
興味を持ってもらう為に、1作目のツカミだけ紹介。主人公ジェイソン・ボーンは高度な頭脳とズバ抜けた戦闘力を持ったCIAの暗殺組織“トレッドストーン”のエリート。彼はある任務で失敗し記憶喪失になってしまう。ボーンの存在自体を秘密にしたいCIAは、彼を抹殺する為に刺客を放つ。ボーンは自分が誰なのか調べようとするが、自分自身が国家機密である為に困難を極める。本名すら分からないまま、次々とやって来るCIAの殺し屋と戦うことに…。(最後まで息つく暇なし!)

たった一人でCIAという巨大組織を翻弄するボーン。普通ならCIAを敵に回して勝てるわけがないと思うけれど、ボーンは機転で何度もCIAを出し抜き、窮地を突破していく。その場その場の状況判断が、観客の20歩ほど先を行ってるので、「なぜこんなことをしてるの?」と疑問に感じたことが数分後に手を叩く状況に。まったく、目を見張るような脚本だ。ここ10年間のアクション映画ではボーン3部作がベストと言っていいだろう。サスペンスだけでなく、第1作が持つ刺客の“もの悲しさ”、第2作の“痛みと償い”も忘れがたい。

多様なロケ地もシリーズの魅力。ボーンの逃避行と共に、ベルリン、チューリッヒ、パリ、ナポリ、モスクワ、ロンドン、マドリッド、NY、タンジール(モロッコ)、ゴア(インド)など舞台が移り変わり、そして各地で手に汗握りまくりの肉弾戦&カーチェイスが展開される。ド派手なアクションはすべて実際に体当たりで演技しており、3部作を通してブルーバック(合成映像)は一切使われていない!これは今の大作映画では珍しいことだ。各国の街並みや人間模様から、ちょっとした旅行気分を楽しめるのもいい。

僕がこの映画の脚本に好感を持っているのは、ボーンが安易に人を撃たないこと。敵であっても殺さない。第3作のロンドン・ウオータールー駅、そしてNYでの頭脳戦は間違いなく映画史に刻まれるだろう。ご都合主義などアラを探せば色々ある。僕はボーンがなぜ変装しないのかずっと疑問だった。彼の相棒が髪を染めたりしてる時、「お前がカツラかぶれ」と思わずツッコミたくなった(笑)。でも、そういう細かいことは作品全体のパワーで押し切っていたし、娯楽映画だからそれでいい。
※公開の一週間前にやっと完成したので米国では試写会すらまともに行われなかったらしい。間に合って良かったねぇ。
※この映画は「ボーンと同時体験」する臨場感を出す為に意図的に手持ちカメラで撮られているので、画面が揺れまくりです!酔いそうな人は、なるべくスクリーンから離れて、後方の席から観た方がいいです

 
144.スター・トレック('09)126分 米

カーク船長のお父さんの人生を描いた最初の10分間が1億点!もうボロ泣き、っていうかエグエグ泣きのオープニングだった。冒頭10分で脱水状態になり、あとはフラフラになって観てた。

近年、人気シリーズの前日談が映画化されるケースが多いけど、この映画は大成功と言っていい。台詞(口癖)に後の面影があったり、ファンが思わずニヤリとする小ネタも盛り沢山。好きなキャラの若い時代というのは感情移入できるし、文句なしに面白い。エンタープライズ号の処女航海でワープアウトした時の(視界全体に広がる)宇宙艦隊の悲劇にも腰を抜かした!

  143位のボーン・アルティメイタムとジャケットの雰囲気が同じ(笑)
145.トゥモロー・ワールド('06)109分 米・英
多くの映画ファンを驚愕させた衝撃作『トゥモロー・ワールド』(原題“人類の子供たち”)!もう「圧倒された」としか言いようがない。あの緊張感は何事?(キューブリックの映画を観てるようだった)。
舞台は2027年の英国。物語の冒頭で「世界最年少の若者(18歳)が喧嘩で刺殺された」という報道に人々が絶句している。僕は“最高齢ではなく最年少でニュース?”と疑問に思ったけど、なんとこの時代、人類は子供を産めなくなっていた!これによって人々は希望を失い世界中が無法地帯と化し、英国は難民の流入を恐れて国境を閉鎖。移民者は迫害され、家畜のように檻に入れられ大陸へ送還されていた。主人公は政府の役人だが、移民者の人権確保を訴える反政府組織と接触するなかで、人生観をひっくり返すほどの“奇跡”に遭遇することになる--。
この作品は台本もすごいけど、カメラワークも画期的。ワンカットが驚異的に長い(画面が切り替わらない)ので、映画の中に放り込まれたような錯覚、臨場感を味わった。カメラは決して主人公から離れず、常に彼の見る光景だけが映っているので、主人公と同時に生きているようだ。映画を観ていることを忘れてしまいそうになる。

子孫を残せなくなった人類。核戦争が起きなくても、新種のウイルスや気候変動で人類が絶滅することもあるだろう。僕は昔から、モナリザやゴッホのひまわり、ベートーヴェンの第九やシェイクスピアの戯曲など、芸術の傑作はそれを鑑賞する人間がいて初めて命が宿ると思っていて、その意味でも人類が消える日を想像するのが怖かった。この映画にはまさにそれについての会話があった。文化相は世界の廃墟から作品を保護し修復しており、左足が破壊されたミケランジェロのダビデ像を前に「これは救えたが(ヴァチカンの)ピエタ像は破壊されてしまった」「(スペインの)ベラスケスは数点残ったが、ゴヤはわずか2点。プラド美術館は立ち直れん」と嘆いた。そう会話をする彼らの背後にはピカソのゲルニカがあった。主人公は「100年後は人類がいないのに誰がこれを見る?保存に何の意味がある?」。文化相「いいか。俺はそういうことは考えないようにしている」…何とも切実な言葉だ。BGMはキング・クリムゾン、ロンドンの空にはピンク・フロイドの“空飛ぶ豚”が浮かんでいる。この人類史終了直前の世界観!目まいがしそうだ。

主演のクライブ・オーエンも素晴らしい熱演を披露。彼は数年先にオスカーを獲るんじゃないかな。作品としては前述したように「主人公の知り得た情報」しか描かれないので、人類が不妊になった理由は謎のままだし、登場する“組織”の正体もハッキリしない。本作を批判する人は「背景が薄っぺらい」と叩いているけれど、映画が描こうとしているのは時代背景の解説ではなく、「生命そのもの」が持つ崇高な輝きだ。物語のクライマックスについては下記ネタバレで!
(以下ネタバレ文字反転)→最も感動したのは戦闘中に赤ちゃんの泣き声を聞いた兵士達が雷に打たれたように固まり、全員が射撃を止めるシーン!廃墟の中で兵士が跪き道を開ける場面に激涙。一人の赤ちゃんの命が、兵士、ゲリラ、市民たち、全員の心の奥の人間性を呼び覚ます。この映画はあの数分間の為だけにあると言っても過言じゃない!そして、体を張って若い母親を守った元妻、看護婦、難民の3人の女性たち。新しい命を前にした女性の強さに脱帽。僕の友人は「まばたきするのも惜しかった」と語っていたけど、その気持に全く同感!
※ヴェネチア国際映画祭(2006)技術功績賞

 
146.エド・ウッド('94)124分 米
カルト・ムービー『死霊の盆踊り』、女装賛歌の『グレタとグレンダ』、ゾンビが地球を征服する『プラン9・フロム・アウタースペース』などで“史上最低の映画監督”と呼ばれたエド・ウッドの熱い生き様を、ティム・バートン&ジョニー・デップの黄金タッグが見せる。作品からは、ウッド監督の映画への狂おしいまでの愛がひしひしと伝わってくるし、そんなウッド監督に対するティム・バートンの爆裂LOVEもビリビリ伝わってきた。ぜひ、すべての映画ファンに観てもらいたい。映画がヒットしなくても、アカデミー賞とは縁がなくても、こんなにも映画を愛していた監督がいたことを知って欲しい。

ティム・バートンの作品が公開される度に世界中の映画関係者からどよめきが起きる。「ハリウッドいちの変人に大金を渡したらこんなものを作ってきやがった」と。その呆れ果てた声の裏側にあるものは、“ビッグ・チャイルド”バートンへの温かい眼差しだ。現在ハリウッドの雇われ監督の中で、自分の趣味の為だけの企画書をあげ、それがことごとく通過し、しかも好きなだけ金を使って良いといわれるのは彼ぐらいだ。普通はもっと予算を削れだの、撮影期間を短くしろだの、一般ウケする内容にしろだの多くの注文を受けるのに、バートンに関しては出資者たちは皆見て見ぬふりをしている。世界の映画人はみんなバートンが大好きになのた。
※「狂信的な映画ファン(ティム・バートンのこと)が思い切って作ったこの個人趣味作品を、あの営利主義のハリウッドがよくも作ったことと、ハリウッドいまだ死せずと安心した」(淀川長治)
※アカデミー賞 (1995)助演男優賞、メイクアップ賞。僕がホラー俳優ベラ・ルゴシの墓に行ったのは、この映画で彼の役者魂を知ったから。

 
147.パリ、テキサス('84)146分 西独・仏
大人の辛く切ない恋愛映画だ。あまりにも相手を愛しすぎて、その巨大な感情に押し潰されてしまった男女の物語。愛情は大きければ大きいほど幸せとは限らない(嫉妬心も極大になる)。その地獄を描ききって、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した。カンヌで栄冠に輝いたということは、それだけ多くの人に支持されたということ。誰もが辛い恋を体験してきてる証拠だね。この映画を平常心のまま見れる人は幸せだろうし、ある意味では不幸ともいえる。
サントラも映画史上に残る名盤で、中年男の悲哀を滲ませるライ・クーダーのギターがむせび泣いていた。

「愛するとは自分を追い越すことだ」(オスカー・ワイルド)
※カンヌ国際映画祭(1984)パルム・ドール、国際映画批評家連盟賞

 
148.インセプション('10)148分 米・英

こりゃまた、とんでもない映画が誕生した。眠っている人間の潜在意識の奥底に潜入し、夢の世界から情報を盗む産業スパイの物語。アイデアを保管するのに一番安全な場所は自分の頭なのに、ヤツらはそこに入ってくる。主人公コビ(ディカプリオ)はある事情で指名手配されており、米国に入国できず子ども達に会えない。そこで日本人実業家サイトー(渡辺謙)が“過去の犯罪歴を消去してやろう”と提案。条件はライバル会社の御曹司の頭にインセプション=情報を盗むのではなく考えを“植え付ける”というものだった!
コビは3人のスペシャリストを集める。顔ぶれは、リアルな夢を作る「設計士」、様々な姿で夢に登場する「偽造師」、特製の睡眠剤を作る「調合師」。このメンバーに、コビのサポート係の「ポイントマン」、結果を見届ける「観光客」、コビ自身の6人でターゲットの頭に侵入する。ところが相手は「夢を防御する訓練」を受けていて、コビたちは武装した男たちにいきなり襲われた。果たして作戦は成功するのか---。

この映画は幾つかの“約束事”があり、そのルールを事前に理解している方がスムーズに物語に入っていける。
《その1》夢の世界は現実より時間経過が早い。
《その2》夢の中で夢を見た場合は、一番新しい夢ほど時間経過が早い。
《その3》夢の中で死亡すると目が覚める。ただし、鎮静剤など薬物で深い眠りに落ちて
いる時は、目覚めずに“虚無”空間に落ち、自力では脱出できない。
《その4》眠っていても聴覚からの情報に影響される。
4つの階層の夢が同時進行する演出が圧巻!時間経過の速さの違いを巧みに利用しながら、物語を破綻させずにまとめあげたクリストファー・ノーラン監督に脱帽!壮大かつ緊迫感に満ちたBGMも名曲尽くしでサントラを購入した。チョ〜聴きまくり!

  予告編 この重いBGMがタマラン
149.マトリックス リローデッド('03)138分 米
アクションはすごい!本当に素晴らしい!しかしストーリーは…チンタラと回りくどい!パート1は次々と見せ場が出てきたけど、今回は冒頭の度肝を抜くアクションシーンから次の見せ場まで50分近く退屈なドラマが続く。しかもその間、殆ど話が展開してない!民衆が踊り狂うチャチなMTV映像がダラダラと流れ、冒頭の勢いは完全失速、緊張感も消滅。その後も物語が進むにつれ、単純な内容を重々しく語ってるだけじゃん!と怒りを感じ始める。頼むからもっと感情移入させてくれ〜い!ゼーハー。フーッ。

とはいえ、高速道路の攻防戦、大量のスミス、ビルからの射撃落下、どのアクションも他の映画の追随を許さぬクオリティなので、それだけでこの高い順位に!

 
150.エイリアン2('86)137分 米
キャッチ・コピーは「今度は戦争だ!」。第1作は一体だけであんなに手強かったのに、今度は複数。考えてだけで怖すぎる。レーダーに大量の光点が映った時はギョエーッてなった!なんちゃってモビルスーツに搭乗するリプリー姉御が頼もしい。
※アカデミー賞(1987)特殊視覚効果賞、音響効果編集賞

 
151.カルメン('83)101分 スペイン
アントニオ・ガデス、クリスティーナ・オヨス、パコ・デ・ルシアというフラメンコ界の大御所が登場するこの作品では、生物としての人間の美しさを堪能できる。極限の肉体美だ。
※カンヌ国際映画祭(1983)フランス映画高等技術委員会賞、芸術貢献賞

 
152.トーク・レディオ('88)110分 米
いまだに人種差別が根強くはびこる南部ダラスを舞台にした、電話相談番組のラジオDJと、被害妄想でイカれたリスナーたちとのトーク・バトルの映画だ。正直、ここまで現代アメリカの病巣が深いものだとは思わなかった。絶対、米国に住みたくないって思うよ。「ぴあ」でこの作品が“ストレス発散”のジャンルに振り分けられていた。お〜い、それはシャレになってへんぞ〜。
※ベルリン国際映画祭(1989)独創性貢献賞

 
153.美女と野獣(ディズニー版)('91)84分 米
オスカー史上、アニメ作品で初めて作品賞にノミネートされたのが、この『美女と野獣』だ。愛するゆえに彼女を自由にした「ビコーズ・アイ・ラヴ・ハー」は屈指の名場面だ。
※アカデミー賞(1992)作曲賞、主題歌賞

 
154.ブロードウェーのダニー・ローズ('84)84分 米
売れない芸人専門のマネージャーが主人公。ウディ・アレンの映画はどれも暖かいのだけれど、この作品は中でもダントツ!とにかく自分で見て直接その空気に触れて欲しい。この作品で、どれだけ多くの世界中の売れない芸人が救われたのか見当がつかない!とても良い余韻が残る人情物語ッス。85分と短いので是非ご覧あれ。

 
155.北北西に進路を取れ!('59)137分 米
国際スパイ団に一般人が誤って誘拐される“巻き込まれ型”サスペンスの第一級作品。ヒッチコック演出の神髄を楽しめる。

 
156.エル・スール('82)95分 スペイン・仏
10年に一本しか作品を撮らないビクトル・エリセ監督の珠玉の逸品。威厳があり謎の多かった父親が、実は繊細でもろい部分があると分かっていく過程がなんともいえない。最初に観たときはスペイン内戦の知識がなくて、"ちょっといい映画"くらいにしか思ってなかったけど、後年オロロ〜ンってなった。

 
157.クライング・ゲーム('92)113分 英
前半、テロリストと人質の間に友情が芽生えていく過程は、涙なしには見られない。そして後半。主人公の達観したかのような人生への眼差しが胸の底に沁みた。脚本の勝利。主人公のストイックさにも共感。
※アカデミー賞(1993)脚本賞/NY批評家協会賞(1992)助演女優賞、脚本賞

 
158.エターナル・サンシャイン('04)107分 米
“もし失恋など思い出したくない記憶だけを選んで消すことが出来たら--この作品は、忘れ去りたい記憶を抱えた時に、長い時間をかけて傷が癒えるのをひたすら待つか、スパッと記憶から消して次の段階へ進むか、或はツライ思い出も含めて今の自分があるのだからと全部受け入れて生きていくのか、そんな人生の選択を描いている。従来はオーバー・アクション気味だったジム・キャリーが、無精ヒゲを生やした陰気な男を見事に演じきり、彼の役者としての記念碑的作品になったと思う。ケイトもまた、見かけは元気でも寂しがり屋のヒロインを熱演し、いつまでも“タイタニックの女優”と呼ばせない凄みがあった!
※アカデミー賞(2005)脚本賞

 
159.マッドマックス2('81)96分 豪
「ヒャッハー!」と叫ぶ悪党どもがワンサカ登場!リアル『北斗の拳』とはこの映画のこと。っていうか、1983年連載開始の『北斗の拳』はこの映画からコスチュームのインスピレーションを受けている。
第3次世界大戦後の荒廃した世界で、生き残った人々は悪党から貴重なガソリンを守って細々と暮らしている。元警官のマックスは民衆のために武装石油タンクローリーに乗り、悪党どもに立ち向かう!

 
160.インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説('84)118分 米
劇場公開時に前から3列目で観たので、後半のトロッコ・チェイスのド迫力にのけぞったッ!吊り橋を人がいるのに切っちゃうとか心臓に悪すぎる(汗)。剣を持っている敵と対峙したインディが、ニヤッと笑って拳銃を使おうとした時にホルスターが空っぽだった時の焦り具合が神演技。“誤魔化し笑い”がキュート。
※アカデミー賞(1985)視覚効果賞

 
161.アメリカン・ビューティー('99)117分 米
アカデミー作品賞に輝いた傑作ドラマ!人生のこと、生きる姿勢のことを考えさせてくれる奥の深い作品。映画のタイトルは、人生の成功を他人にアピールしなければ幸福を実感できない、アメリカ社会へ込めた皮肉だ。劇中では、自分がどれだけ幸せな人間かを周囲に“演出”している人々が、笑顔の仮面の下ではストレスで精神崩壊の一歩手前まできているという危機的な状況を描く。
色んなタイプの人物が劇中に登場するけど、みんな繊細で傷つきやすい人ばかり。強気な人ほど嘘で外見を固めているので、現実とのギャップの苦しみが大きい。そうした人間の危うい内面世界を丁寧に追った必見の名作だ。
名セリフもテンコ盛りで、「今日という日は、残りの人生の最初の一日」、「この世界は美であふれているから怒りは長続きしない」など、思わすメモッてしまった。特に後者は、このたった一語でどれだけ自分は人生が楽になったか!こんな言葉に出会えるなんて、本当に長年映画ファンやってて良かったよ〜(涙)。
エンディングのビートルズのバラード“ビコーズ”も最高の選曲!
※風に舞うビニール袋(ゴミ袋)の映像が、宗教画のように荘厳に見える奇蹟を感じた!
※アカデミー賞(2000)作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞、撮影賞

 
162.ハーヴェイ・ミルク('84)87分 米
'70年代後半に社会的弱者の権利獲得の為に戦い、やがて暗殺という悲劇にあう、実在したサンフランシスコの市政執行委員ハーヴェイ・ミルクの伝記映画。本人の生前の映像だけで綴られている。
※アカデミー賞(1985)ドキュメンタリー長編賞/NY批評家協会賞(1984)ドキュメンタリー賞

 
163.スパイダーマン2('04)127分 米
正直、前作がイマイチだったので、2はビデオで充分だと思っていた。派手な予告編を見て、“もうハイライトを全部見ちゃったよ…”って感じだったけど、ネット上の評判があまりに良いので劇場に足を運んでみた。あ、あ、危なかった!自分はアホだった!予告編のバトルシーンはほんの前菜で、あの何十倍も見せ場が用意されていた!
しかも!このパート2は単なるアクション映画ではなく、“ヒーロー”であるがゆえの葛藤、揺れ動く繊細な胸の内を綴ったとても良質なヒューマン・ドラマであり、爽快な青春映画だった!貧乏で家賃も払えず大家さんからコソコソ逃げたり、コスチュームをコインランドリーで洗い(しかも色落ちしている)、いつも疲れた顔をしている痛々しいヒーロー。悪党との戦いに巻き込みたくないという理由で、好きな女性に愛を伝えることもできずボロボロになっていくヒーロー。今までこれほど親しみを感じるトホホなヒーローがいただろうか!?主役のトビー・マグワイアは、一見能面ヅラの俳優に見えるけど、時折見せる少年のような笑顔や、バトル中の歪んだ顔など、実はとっても表情豊か。敵役の俳優は地味キャラだが、それがまた良い。シュワちゃんやデ・ニーロの可能性もあったというが、それでは俳優のキャラが立ち過ぎて、一般人が暴走した時の怖さを出せない。制作費220億円のアクションシーンはダテじゃなく、NYの摩天楼を舞う疾走感、超高速のスピード感は前作から格段にパワーアップしてて、あの浮遊感を味わうだけでもスクリーンで観る価値はあった。
※微妙ネタバレ…例の地下鉄のシーンは、人々を救おうとして十字架にはりつけられているキリストとダブッた(ポーズもそうだし)。だからこそ、白人黒人関係なく、色んな人種の手が彼を支えることに、皆で彼を守ろうとしたことに鳥肌が立った。名歌「雨にぬれても♪」やエレベーターのシーンは伝説になる名&迷場面だね。
※アカデミー賞(2005)視覚効果賞

 
164.クンドゥン('97)135分 米
巨匠スコセッシ監督がチベットの最高指導者ダライ・ラマ14世の視点で、中国によるチベット弾圧を描いた力作。チベットが中国人民軍によって蹂躙され、ダライ・ラマがインド亡命に至る半生を描く。主役の若きダライ・ラマを演じたのはダライ・ラマの甥の息子。中国政府の数の暴力で、次第に追い詰められていくチベットに同情。毛沢東が「宗教は民族を衰えさせる毒。チベットはその毒に冒されているのです」と微笑みと共に忠告するシーンが怖い。
フィリップ・グラス作曲の瞑想的な音楽が圧倒的に素晴らしく、鑑賞後に速攻でサントラ買った。配給元ディズニーに中国から強い圧力があった為、米国内では広く公開されなかったという。

※今、チベットでは『文化の大虐殺』が起きている。中国政府の強引な移住政策の結果、600万人のチベット人が暮らしている地域に、なんと750万人もの非チベットが流入し、しかも現在進行形で移住は続いている。言語、文化、伝統などチベット独自の文化遺産が刻々と消えており、チベット人は自国に居るにもかかわらず少数派になってしまった。僧院はチベット仏教文化の宝庫かつ学びの場だが、その数は壊滅的に減らされており、残った僧院でもチベット仏教の本格的な勉強をすることが禁じられている。出家して僧院に入ることすら厳しく規制されているのが実状。宗教の自由を求めれば反中国のレッテルを貼られ弾圧される。だからダライ・ラマは、「チベットに真の自治を」「中国の憲法で保障されている基本的な自由を」と訴えている。

 
165.イージー・ライダー('69)95分 米
ラストシーンがショッキング。この映画を見て、アメリカ南部の“過激なまでの”保守性が本当に怖くなった…。J・ニコルソンが哀れ。この映画を観て長いハンドルに憧れ、20代の頃は僕もチョッパー・バイクに乗っていた。
※カンヌ国際映画祭(1969)新人監督賞

 
166.クジラ島の少女('03)102分 NZ・独
この映画は2つの点で素晴らしい。1つは、当初は精気を失っていたマオリ族の人々が、西洋文明の前では“恥”と感じていた伝統文化を通して人間性を回復していくこと。誇りを取り戻した人々は別人のごとく表情が輝いており、人間にとって自分の存在に尊厳を持てることがどれほど重要か伝わってきた。もう1つは伝統文化の中にありがちな、女性を低く見る風潮が、一人の少女を前に如何に無意味で馬鹿げているか見せ付けていること。主演のケイシャ・キャッスル=ヒューズは史上最年少の11歳でオスカーにノミネートされて話題になった。クジラとの会話シーンは本当に素晴らしく、いつまでも忘れられない。

 
167.蜘蛛女のキス('85)119分 ブラジル・米
南米の軍事独裁政権下の刑務所を舞台にしたヒューマン・ドラマ。民主化の為に権力と闘う政治犯の男と、現実を見ず空想の世界に耽るゲイの男の心の交流を描く。監房という密室を舞台に、人間の尊厳をうたいあげた秀作。主演のウィリアム・ハートはアカデミー賞とカンヌ映画祭のW受賞という快挙を成し遂げた。
※アカデミー賞(1986)主演男優賞/カンヌ国際映画祭(1985)男優賞

 
168.愛人/ラ・マン('92)116分 仏・英
もうとっくに昔の話だが、自分も社会に出てから17才前後の娘に惚れ込み、さんざん振り回された苦い過去がある。自分が惚れた娘も自由な鳥のように気の向くまま生きていて、自分の言動が相手にどんなダメージを与えるのかを考えなかった。映画の最後でショパンを聴きながら突然事態を理解して泣いた主人公を、“彼女もいつかこの気持を知ってくれれば”と祈るように観ていた。中国人の彼の絶望が他人事には思えない、そんな個人的な理由でこの作品は高順位なのだ。もちろんジェーン・マーチの唇やジャンヌ・モローのナレーションもノックアウト級だが。

 
169.モンスターズ・インク('01)92分 米
子どもを怖がるモンスターという設定がまず面白いし、ドキドキハラハラのアクションもあって、最後は涙なしには見れないという傑作CGアニメ映画!万人にお薦めできます!
※アカデミー賞(2002)歌曲賞

 
170.暴力脱獄('67)128分 米
微罪で長期刑となったルーク(ポール・ニューマン)が、ハングリー精神で脱獄を繰り返す。ニューマンをして「この作品を私の俳優生活の代表作としたい」と言わしめた傑作。礼拝堂での神との対話シーンが印象的。
※アカデミー賞(1968)助演男優賞

 
171.悲情城市('89)159分 台湾
戦後混乱期の台湾の激動の4年間を、ひとつの家族にスポットを当てることで静かに描いた叙事詩。1945年に日本統治が終わり、台湾に入って来た国民党は「二・二八事件」を起こし、多くの知識階級を弾圧・殺害した。美しい映像の中に民衆の心の痛みが刻まれた台湾ニューシネマの名作。この映画の前日談として、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督は『戯夢人生』を4年後に作っている。
※ヴェネチア国際映画祭(1989)金獅子賞

 
172.ソイレント・グリーン('73)98分 米
映画史上、最も暗い未来世界を描いた作品。人口爆発によって、地球は人間の飽和状態。何もかもが破綻している。主人公の警官は、配給食の「ソイレント・グリーン」をめぐる事件を捜査しているうちに、原材料に関する衝撃の事実にブチ当たる…。
この未来社会には公営安楽死施設「ホーム」が存在する。ホームの安楽死マシーンに寝かされた者は、チャイコフスキーの悲愴交響曲を聴きながら最後にワイン(薬入り?)を飲み、ベートーヴェン「田園交響曲」やグリーグ「ペール・ギュント」にのせて巨大スクリーンへ投影される、美しい大自然や野生動物の映像を眺めながら、夕陽の中で痛みもなく静かに他界できる。該当動画(6分半)
「ホーム」行きを選んだソルを演じたエドワード・G・ロビンソンは、実際に本作が遺作となった。

  時代設定は2022年。まだまだ先と思ってたけど、けっこう近づいて来たよね。
173.オペラ座の怪人('04)140分 米・英
映画版の公開は、楽しみな反面、舞台のイメージが崩れないか不安があった。でも、そんな心配は冒頭のオペラ座の時間が巻き戻されるシーンでイキナリ吹き飛んだ!役者が良い、美術も美しい、もちろん音楽は全曲が名曲、映画ならではのスペクタクルなシーンも盛り沢山で、とにかく豪華絢爛!「自分はもう橋を渡ってしまった、あとはそれ(橋)が燃え落ちるのを見守るだけ」…この激しく情熱的なセリフにクラッときた。舞台版とは異なるラストもジーンと来るものがあった。
※劇場で隣に座っていた男性と僕はファントムに感情移入しまくって、失恋場面で「きっつー!」と呟いたのが2度もハモッた!映画を観てて独り言がハモるなんて初めての体験だ(笑)。

 
174.ストレイト・ストーリー('99)111分 米
おじいちゃんがトラクターでアイオワ州を横断するロードムービー。乗用車ではなく畑のトラクターなのがミソ。移動スピードが短いので映画の展開が遅いが、それこそがこの作品の魅力!農村の風景がゆっくりと画面を横切っていく心地良さは格別。登場する人間は素朴で温か味のある人物ばかり。旅の目的が喧嘩した相手との和解というのもいい。優しい気持になれる作品だ。星が満天に輝く夜空に泣ける。
※NY批評家協会賞(1999)男優賞、撮影賞

 
175.イノセント・ボイス 12歳の戦場('04)112分 メキシコ
1980年代のエルサルバドル内戦を描いた作品。軍の徴兵を逃れる為に、屋根の上に一斉に逃げる子ども達を俯瞰撮影したカメラワークが見事。
反政府ゲリラが銃弾の中で寝転んでギターを弾くシーンが印象的(しかもめっさ良い歌)。軍に捕まった子どもの処刑シーンは見てられなかった…。

 
176.ブラインドネス('08)121分 カナダ、ブラジル、日本
これは怖い。世界中に視力を奪う奇病“ブラインドネス”が広がり、強力な伝染力を持つことから、政府は感染者を強制的に隔離病棟に入れた。脱出を試みる者は射殺される。主人公(ヒロイン)は発症した夫に付き添う為、失明したふりをして共に隔離病棟に収容された。
全員が失明している病棟の中で、ただ1人“見えている”主人公は、人間のダークサイドをこれでもかと目撃することになる。超鬱系パニック・ムービーだけど、希望も提示されるのが救い。
原作はポルトガルの作家、ジョゼ・サラマーゴの「白の闇」。

 
177.さらばわが愛〜覇王別姫('93)172分 香港
京劇役者の目を通して日中戦争や文化大革命など近代中国の50年を描いた大作。京劇俳優のスパルタ養成学校から脱走した主人公たちが、偶然街中で“覇王別姫”を泣きながら観るシーンに爆涙。あそこだけでも映画代のモトをとった。
※「覇王別姫」は四面楚歌で知られる項羽と虞美人を描いた京劇作品。
※カンヌ国際映画祭(1993)パルム・ドール、国際映画批評家連盟賞/ゴールデン・グローブ(1993)外国映画賞/NY批評家協会賞(1993)外国映画賞、助演女優賞

 
178.レミーのおいしいレストラン('07)120分 米
味覚&嗅覚が特別に発達したグルメなネズミ・レミーが、「僕は他人を失望させたことがない、期待されたことがないから」という料理センスゼロの青年リングイニとタッグを組み、美味しい料理を生み出していく物語。劇中には伝説のシェフ・グストーの言葉「誰でも名シェフ」が何度も登場する。グストーは料理を“素材の組み合わせで無限に新しい味覚が生まれる冒険”と位置づけ、「臆病者に良い料理は作れない。独創的に、失敗を恐れず、何にでも挑みなさい。どこで生まれ育とうが、他人に限界を決めさせてはいけない。諦めなければ何でも出来るのです。誰でも名シェフ。偉大な料理は勇気から生まれる」と呼びかける。本作品の製作陣はこの“誰でも名シェフ”を強調する為に、台所ではゴキブリと共に忌み嫌われる存在のドブネズミに、パリの最高級レストランで料理させた。同じネズミでもミッキーマウスやジェリーが人間向けの料理を作ってもさほど抵抗は感じないだろう。ところが、この作品のネズミ達は毛並みまでリアルに再現され、ミミズのような尻尾がウネウネしている。人によっては、ネズミが作った料理が客(人間)のテーブルに運ばれるのを見ただけでゾゾーッとくるだろう。しかし、見た目のデメリットを超えて作品が観客の心を掴むのは、レミーが料理に注ぐ大きな愛情を丁寧に描いているから!「イチゴやチーズを別々に食べると、あくまでもイチゴはイチゴ、チーズはチーズの味。でも、同時に食べると味が混ざって全く違う味になるッ!」と、レミーは食材の組み合わせの妙に胸をときめかせる(レミーが味見をすると心の中で感情が花火のようにはじける。あれは上手く味覚を表現してると思った!)。

人間にとって料理は自然なことなので気にしなかったけど、確かに“異なる食材を一緒に食べて楽しむ”というのは他の動物とは違うよね。レミーは他のネズミたちに「人間はただ生きてるだけじゃない、新しいことを創造している」と熱弁する。レミーの仲間たちはネズミ社会に戻るように説得するけど、彼はその声を振り切ってこう答える。「(仲間がレミーに)どこへ行くつもりだ?」「運が良ければ、先へ!」。先というのは芸術家としての新たな境地のこと。しかしそこに到達できるかは分からない。だから“運が良ければ、先へ!”、めっさカッコイイ!また特筆したいのが背景の美しさ。ずっと下水道にいたレミーが地上に出た時に、壮麗で目も眩むようなパリの夜景が広がり「パリだ!僕ってずっとパリの下にいたのか!」と驚くシーンは、レミーと同様に恍惚として夜景に見とれた。霧のセーヌ川、夕暮れの街角、空気感が素晴らしい。石畳に寝ころんで、夜空を見ながらブドウとチーズでリラックスしているレミーの幸せそうな顔といったら!

コメディゆえ笑えるシーンもいっぱい。リングイニはシェフ帽の中にレミーを隠しているので、調理の際は香りを嗅がせる為に、食材を必ず頭に持って行かねばならない。その動作が可笑しくてクスクス笑いっぱなしだった。監督は傑作『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バード。一般に人間と動物の友情モノは、動物に奇跡が起きて言葉を話すことが出来るってパターンが多いけど、この映画はあくまでもレミーは人間の言葉を話せず「チューチュー」だ。話せる設定の方が演出はラクなのに、安易な方向に走らなかった点も称えておきたい。エンド・クレジットの「モーションピクチャーは使ってません」はアニメーターたちの“誇り”とのこと。90点。まだここまで大事なネタバレは何も書いてないので御安心を!第3の主人公ともいえる冷酷な料理評論家イーゴの話は以下のネタバレで。僕が高得点にしたのはイーゴの存在が大きいデス(イーゴの声優は“アラビアのロレンス”のピーター・オトゥール!)。公式サイトの予告編は字幕版と日本語版で内容が異なるので両方おすすめ。
【ネタバレ文字反転】…冷血&辛口な料理評論家イーゴが田舎料理ラタトゥーユで童心に変えるシーンが最高!たった一口で彼の中の時間が巻き戻され少年時代に。懐かしい母の手料理は、素朴でも何よりもごちそうだった。閉店後、客が帰った店内でリングイニがイーゴにレミーを紹介すると“イーゴは黙って聞いていた”。この“黙ってた”というところに涙ポロポロ。彼は帰宅後に書き始める「評論家は芸術家や作家に対して常に有利な立場にいる。そして安全な場所から作品を批判する…」。心を入替えたイーゴは“リスクを冒す時は今だ”と勇気を出してドブネズミ・レミーの料理を讃え、結果的に料理評論家の地位を失う。でも、ラストで幸福感いっぱいにラタトゥーユを食べる姿からは、自分の行動を悔いる様子は微塵もなかった(それに顔色も良くなって少し太ってたよね、笑)。ただ、悪役シェフのスキナーが白人ではなく有色(インド人?)だったとこに、人種差別的なものを感じてちょっと気になった。イーゴはラストで印象がアップしたけど、スキナーは小心者の俗物のままで、くどいと感じるほど愚かさを前面に出していた。子ども向けの映画なんだから、スキナーもどこかでフォローしてあげないと…。レミーのジェスチャーで最高だったのは「君、料理は出来るの?」と訊かれて“まあね”って感じで肩をすくめたシーン!本物の俳優でもあんな嫌味のないリアクションは難しい(笑)。大量のドブネズミがキッチンを埋め尽くして料理するクライマックスは伝説になるだろうなぁ。/追記。“レミー”と同時上映の短編アニメ『LIFTED(リフテッド)』に館内大爆笑!宇宙人がUFOから人間を誘拐しようとするんだけど、笑い転げる展開に!

 
179.ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ('98)108分 英
練りに練られた脚本に惜しみない拍手を送りたい。近年の娯楽映画の中ではズバ抜けて面白かった。これでもか、これでもか、とドンデン返しが続くので、脳神経がショートして耳から煙が上がりかけた。ここまでオモロイ脚本は10年に1本かも。

 
180.自転車泥棒('48)88分 伊
幼い子供にとって父親というのはスーパーマンだ。それだけに子の前で父親が泣くシーンは、ほんと切なかった…。
※アカデミー賞(1950)特別賞/NY批評家協会賞(1949)外国映画賞

 
181.ダーク・クリスタル(82')93分 英
マペット・ファンアタジーの最高峰!監督はセサミストリートのキャラクターを生み出した偉大な操り人形師ジム・ヘンソン(1936-1990)!異世界の小動物や植物が細部まで緻密に造形されている。本作の白眉は9名の邪悪なスケクシス族による宴会シーン。あっちでモグモグ、こっちでクチャクチャ、響き渡るゲップ、いやはや、どうやって同時に操演したのだろう。黒いカブトガニのようなガーシム、フィギュアにならないかなぁ。素晴らしい音楽も作品の魅力を押し上げている。
※ゲルフリン族の少女キーラがしょこたんに似ていてる(笑)
※1983年アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ

 
182.トイ・ストーリー2('99)92分 米
カウガール人形のジェシーの過去が語られるシーン(2分43秒)にウルウル。このパート2は絶対子どもに見せるべき!モノ(おもちゃ)を大切にする、優しい子どもに育つハズ!クライマックスの空港の戦いはスリル満点。

 
 
183.プロジェクトA('84)105分 香港

ジャッキー映画の最高傑作!過激な肉体アクションと爆笑ギャグが全編に散りばめられ、ラストのNG特集まで見どころ満載。当時の香港スター、ユン・ピョウやサモ・ハン・キンポーとの共演も話題に。舞台は1900年代の香港。仲が悪い水上警察と陸上警察が協力して海賊退治に挑む。酒場での大乱闘、狭い路地裏の自転車チェイス、戦闘中に2階から吹っ飛ぶとか、次々と体を張ったアクションが続く。ジャッキーはスタントマンを使わないため、見ているだけでハラハラするけど、何と言っても圧巻なのが高さ25mの時計塔からの落下シーン!別アングル3方向から撮影する為、3回も落下した。このうち1回は屋根が敗れずにNGに。頭から落ちて大けがをしたカットは、何度見ても目を疑う。なんちゅう命知らず!
※主演、監督、武術指導、脚本、すべてジャッキーが担当。

 
184.スラムドッグ$ミリオネア('08)120分 英

素晴らしいドラマ。クイズの回答にあわせて主人公の過去を見せていく語り口がうまい。感情移入しまくり。あの司会者は食えん男だったなぁ。最後に兄貴らしい所を見せてくれたチンピラのお兄ちゃんが強烈な存在感。主題歌も爽快!

 
185.300('07)117分 米
紀元前480年、レオニダス王率いるたった300人のスパルタ兵が、侵略者ペルシャ帝国100万の大軍と激戦を繰り広げた“テルポピュライの戦い”を描いた作品。わずか300人で100万の軍勢と戦えるわけがない、誰だってそう思うだろう。しかし現実にスパルタ軍は初戦に勝利し、3日間に渡ってペルシャ王クセルクセスを足止めにした。人口5万人の古代スパルタは究極の軍事国家。成人への道は“スパルタ教育”として2500年後も言葉が残るほど過酷なものだ。戦えない子どもは谷底に落とされ(酷い)、7才で母親から離され軍事教育を受け、成人の儀式は狼との1対1の戦い。日々が剣術の特訓であり、スパルタの為に殉じることが最大の名誉とされている(劇中でスパルタ兵が「俺は色んな夢を実現してきたが、戦場で死ぬ名誉だけはまだ手に入れてない」と悔しがる姿に友軍のギリシャ兵が“こいつらイカれてやがる”と絶句)。300人全員が超ムキムキで腹筋は板チョコのように割れまくり。盾と槍を握り、戦場なのに衣装はビキニパンツと赤マントだけという衝撃のいでたち!スパルタ王は策を練り、細い山道にペルシャ軍を誘い込む。100万の軍でも狭い道では先頭が少数になるからだ。個人戦でスパルタのバーサーカー(狂戦士)野郎に勝てる敵はいない。スパルタ軍は100万人を相手に一歩も引かず、盾を重ねた密集隊形(ファランクス)から槍を繰り出し、刺す、斬る、蹴るの大暴れ。空を埋め尽くすほどに降り注ぐ敵の弓矢を“そうこなくっちゃ”“まずは上々”と笑顔で受け入れる。その超人的なタフさには戦争映画なのに場内から笑いが起こっていた。スパルタ軍の自由自在に変化する戦闘隊形は統制がとれて実に美しい。
とはいえ、『300』は万人には薦めにくい。あまりに人が死にすぎる。しかも、剣で勝負する為に首や腕がポンポン飛びまくり、右も左も大流血。僕は基本的に残酷なシーンは苦手なのでキツい場面も多かった。それでもこの死体累々映画を評価しているのは、侵略者に対するスパルタ市民の抵抗の戦いであり、戦争を美化せず真実を描けば、このように残虐なものになるはずだからだ。本作品の映像技術は圧巻としか言いようがない。あまりグロさが前面に出ないように、血しぶきをセピア色にしたり、バトルのスピードを変化させたり、カメラの角度を目まぐるしく変えるなどして、様々に工夫を凝らしているので、見たこともない映像体験ができる。意地悪な批評家は「CGを見せたいだけのサーカス映画」というけど、他の映画にはない独特の色彩・映像美に感嘆したし、俳優達の力強い演技は決してCG負けしていなかった。イラン政府はこの映画に「ペルシャ人を侮辱している」と激怒したけど、謎のエイリアン軍団のように描かれていたのは気になるものの、むしろ愛すべき悪役という印象だった。アジア各部族が混じったペルシャ軍は、サイ部隊、象部隊、魔術師部隊、巨人兵士など、とことんマンガチックに描かれており、キワモノ部隊が活躍すると館内から拍手が起きていた(ピアスだらけのクセルクセス王はメイクに毎日5時間かかったという)。鑑賞後、帰宅するなり腹筋しました(笑)
※巫女(オラクル)役の女優は驚倒するほど美人。でもパンフに名前も載ってなかった。まさかCGじゃないよね(汗)。『ベルセルク』の実写化の時はぜひこのスタッフで!

 
186.ファンタジア('40)122分 米
クラシックの名曲をアニメとして映像化した、芸術性溢れる作品。ミッキーマウスが魔法使いの弟子に扮するエピソードは、荒れ狂う水流がド迫力!子供にホウキ人形の不気味さは、ちょっとキツイかも。絶対夢見が悪くなる。淀川長治氏にとって初めてのカラー映画だったらしく、氏は戦時中に軍部が押収したこの映画を極秘裏に観て「これは負けるな」と思ったとのこと。
※NY批評家協会賞(1940)特別賞

 
187.エクソシスト('73)121分 米
エクソシストを邦訳すると“悪魔払い師”。ジャンルはホラーだが、映画は文学的香りを漂わせている。クライマックスで若い神父の選択した行動に自分は泣いた。ホラーで泣くとは思わなかった。
※アカデミー賞(1974)脚色賞、音響賞/ゴールデン・グローブ(1973)作品賞

 
188.シベールの日曜日('62)116分 仏
純粋な愛だったのに!孤独な魂を持つ者同士の交流だったのに!少女の涙が胸を締め付けた。
※アカデミー賞(1963)外国語映画賞/ヴェネチア国際映画祭(1962)特別表彰

 
189.暴走機関車('85)111分 米
原作者は何と黒沢監督。ラストの仁王立ちになった彼の背中ほど孤高で威厳に満ちた背中を見たことがない。この作品の精神的深みは、ドストエフスキーのそれに匹敵するものだと自分は確信している。何故もっと話題にならぬのか理解できない!冒頭の脱走シーンから既にクライマックスが始まっていた!下記のセリフに絶句。
「アンタはケダモノよ!」「違う、ケダモノじゃない。もっとひどい。俺は人間だ!」

 
190.バンディッツ('97)109分 独※同名映画に注意
なんちゅうイキのいい映画だ!タイトルの意味は“悪党ども”。男が観てもシビれる4人のタフな女たちの友情ムービーだ。脱獄囚ロック・バンドという設定が斬新。ドラム役のエマのクールさに自分はイチコロ。97年のドイツ映画。この傑作を何年も見逃していたことを猛省。「テルマ&ルイーズ」「オ−ル・アバウト・マイ・マザー」「緑の光線」と並ぶ、女性映画四天王の1本として推す。

 
191.殺人狂時代('47)124分 米
戦争による大量殺人を痛烈に批判したブラック・コメディ。「一人を殺せば殺人者だが百万人を殺せば英雄だ。殺人は数によって神聖化される」こう言って喜劇王チャーリーが絞首台に上って行く姿は、映画ファンの誰もが驚愕したであろう。(米国では上映禁止に)

 
192.赤い航路('92)140分 仏・英
この映画は男女の出会いから始まり、最初の精神的熱愛状態、続く肉欲地獄、やがて到来する倦怠期から、それを打破すべく踏み込んだ倒錯的性愛世界、最後の泥沼の結末まで、カップルに起こりうる全てのシチュエーションを描き切っている。愛の官能性や残酷性を描けば右に出る者はいないロマン・ポランスキー監督の独壇場(『戦場のピアニスト』はむしろ例外)。愛憎劇の極致であり、その意味で究極の恋愛映画といえる。覚悟して鑑賞すること。間違っても家族と観ないように。

 
193.グラディエーター('00)155分 米
冒頭のゲルマン討伐戦のド迫力は仰天もの。古代ローマ、コロッセオの大観衆の熱気もすごかった。まさにスペクタクル映画って感じ。地下からせり上がる古式エレベーターに乗った皇帝とマキシマスが、近衛隊の盾に囲まれているカッコ良い構図に失神しかけた!ハンス・ジマーの音楽もべらぼうに良い!
※アカデミー賞(2001)作品賞、主演男優賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響賞
※本作がメガヒットしたおかげで、『トロイ』『アレクサンダー』『キングダム・オブ・ヘブン』といった大掛かりな史劇巨編が制作されることになった。感謝。

 
194.カリガリ博士('19)48分 独
このサスペンスの制作年を見て欲しい。なんと1919年だ!映画の誕生と同時にこの前衛映画が作られていたというのだから、驚きではないか!?背景のセットが斜めに作られており、視覚的に不安感をあおる作りになっていた。お見事。

 
195.ドラゴン・怒りの鉄拳('71)100分 香港
僕が初めてブルース・リー=李先生を知ったのが本作品。「アチャア!」「フォワッ!」など独特の怪鳥音、光速回し蹴り、炸裂するヌンチャク、美しいステップ、見たこともないアクションに天地が裂けるほどの衝撃を受けた(トレード・マークの怪鳥音&ヌンチャクは当作で初登場!)。この映画はブルース・リー全作品中、最大のヒットとなった。香港では興行記録を封切り2週間で塗り替え、“アジア全域”で空前の観客動員数を記録した。「アジア全域」…その理由は、スピード感溢れるアクションだけでなく、リーと対決する悪の集団が戦前の日本人というのもあるだろう(作品の舞台は1909年の上海)。怒りを堪えまくって一気に爆裂させ、“極悪非道の日本人”をバッタバタとやっつけるドラゴンに、観客はカタルシスを感じスクリーンへ向かって総立ちで声援したという。日本人としては複雑だけど、終戦から20数年しか経ってないうえ、大陸で行った非情な行為を考えれば仕方ないことだろう。
一本の映画として見れば、演出がチープとか、ストーリーに中だるみがあるとか、登場する日本人の約半数が袴を前後反対にはいてたり、リーの変装がギャグとか、ツッコミどころは幾らでも見つかる。ロー・ウェイ監督は人間的に評判が悪いし、バトル自体も『ドラゴンへの道』が優れている。しかし、それらを差し引いても、僕の個人的体験として「初めて出会ったブルース・リー」という鮮烈な印象が本作の高評価を不動にさせる。なんというカリスマ性。僕同様にこの映画でリーと初遭遇した映画評論家が多いせいか、シリアスな文芸作品を好むキネマ旬報の硬派な評論家を圧巻のアクションで鷲掴みにし、1975年度のキネマ旬報・外国映画ベスト10に見事ランクインした!
※ちなみにがブルース・リーが銀幕でキスシーンを演じた唯一の作品。ノラ・ミャオ可愛いっすね。
※この作品を近年の中国政府と結びつけて「反日」と断罪するのは事実誤認。当時の香港は英国領で中国政府の統治下ではないし、日中共同声明で国交が復活したのは、まさにこの映画の制作翌年。この頃、中国政府は反日世論を抑え込む為、周恩来が「日本人民と中国人民はともに日本の軍国主義の被害者である」として、“日本の民衆もまた犠牲者”“恨みを捨てよう”と国民に未来志向を訴えていたからだ。中国が反日政策で国内問題を誤魔化し始めたのは1989年の天安門事件から。
※最後の決戦時に、リーに跳び蹴りされて障子を突き破る鈴木を演じているのはスタントマン時代のジャッキー・チェン(当時18歳)!

 
196.ダイ・ハード('88)131分 米
この映画ほど2時間が短く感じられた作品はない。初めて劇場で観た時、自分の体内時計では約3分しか経っていなかった。ブルース・ウィリスを観たのはみんなこの時が初めてだったと思うが、けっこうボコボコにやられる等身大のヒーローの出現に、上映後は場内拍手喝采だった。自分は大好きなベートーヴェンの第九がアクション映画のエンディングでかかるとは夢にも思わず、客席で卒倒しかけた。

 
197.メトロポリス('84)90分※オリジナルは('26) 米
“愛は隠せない”という歌が、男女の間だけでなく、人類全体に対して使われ、もう涙が止まらなかった…!1926年にこんな優れたSF映画が出来てたなんて驚異としかいえない。

 
198.エイリアン('79)118分 米
人類には天敵がいないだけに、このシリーズ第一作は弱点を持たないエイリアンが、生物として怖かった。宇宙船という密閉空間の息苦しさとあいまって、尋常ではない恐怖感を劇場の暗闇で味わった。冒頭のタイトルの出方も印象的。
※アカデミー賞(1980)視覚効果賞

 
199.アイアン・ジャイアント('99)86分 米
これは本気で凄い映画だ。“力こそ正義”の米国がこんな良心的作品を作るとは驚いた。巷の戦闘場面中心のロボット・アニメと違い、このロボット兵器は「アイ・アム・ノット・ガン」自分は銃(ガン)ではない、と何度も繰り返して叫ぶのだ。米国では少年による凶悪な発砲事件があとを絶たない。動物アニメも悪くないが、このアニメこそ待たれていた映画だったとのだと思う。…本当に良い作品を作ってくれた!

 
200.ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!('05)85分 米・英
粘土の人形を数ミリずつ動かして撮影したクレイ・アニメ。5年の歳月をかけ11万5千コマを執念で撮りきった傑作(20人が1日かけて3秒分しか作れないシーンもあったという)。トボケた発明家ウォレスと愛犬グルミットが“巨大野菜コンテスト”をモンスターから守る為に大活躍。最初から爆笑シーンの連続で、アクションもたっぷり。文字通り全編がクライマックス。とにかくグルミットがめちゃくちゃ可愛い。こんなに面白い映画があるから映画ファンをやめられない。
※アカデミー賞(2006)長編アニメ賞

 


★次へ(201位〜) ★タイトル編

1〜100位  101〜200位  201〜300位  301〜400位 401〜500位
 501〜600位  601〜700位 701〜800位 801〜900位 901〜1000位
 次点1001位〜

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