時を無為に過ごすなかれ!
★厳選!大至急読んで欲しいオススメの7冊


《はじめに》

人間は、幸福な体験だけでなく、苦しい時は苦しいなりに、それを「生きている証」として楽しむことが出来る…こうした生き続ける為の“奥義”を教えてくれた文豪たち。紹介する7冊に共通しているものは「戦う主人公」。人生の壁にブチ当たりもがき苦悩する時、同じ思いを共有する彼らと魂のスクラムを組んで自分は乗り切ってきた。
命の恩人同然の7作品を厳選した後、タイトルを見渡すとそれは「古典」と呼ばれ読み継がれてきたものばかりだった。これは間違いなく、古典文学に時の壁を突き破ってきた強烈なエネルギーがあるからだ。古典という“生き残った言葉の宝庫”を開ける時、僕はいつも「なぜこの作品を先人たちは残そうとしたのだろう?」とワクワクしてしまう。
“名作”と呼ばれる秘密(魅力)を探る旅は、作者の心だけでなく、作品を残そうとした過去の読者の魂にまで触れることだ。そして、世界中で読み継がれている古典作品は、国や文化、思想が違っても、他人の心の動きに共鳴出来る、人類の素晴らしさを教えてくれる!

1.『罪と罰』(ドストエフスキー)
2.『白鯨』(メルヴィル)
3.『マクベス』(シェイクスピア)
4.『夜間飛行』サン=テグジュベリ
5.『歯車』(芥川龍之介)
6.『火の鳥・鳳凰編』(手塚治虫) 
7.『続ぼくを探しに ビッグ・オーとの出会い』(シルヴァスタイン)※絵本


●罪と罰

「まずあなたが汚した大地にキスしなさい。だってあなたは大地に対しても罪を犯したんですから!」(ソーニャ)

ドストエフスキーは皇帝の圧政に反抗した為に投獄され、死刑執行の数分前に恩赦で生を繋いだという地獄を体験した作家だ。シベリアに流刑され文字通り生と死の狭間を垣間見た彼の作品は、どれも血文字で書かれているようだ。人間の残酷さや弱さを全面に出しながら、それでもなお人類を信じていたいという切実な叫びが胸を打つ。
主人公の学生ラスコーリニコフの名はロシア語で“分裂した男”。貧困にあえぐ孤独な彼は「強欲な金貸しの老婆を殺し、奪った金で虐げられた人々を救う正義」を信念のもとに実行するが、良心の呵責に心が引き裂かれてゆく。娼婦ソーニャを通して人間回復へ向かう魂の迫真の描写に絶句!


●白鯨

クーッ!これほど一言一句のカッコ良さに鳥肌が立つ作品はない!巨大な白鯨に象徴される「神」に対して戦いを挑み、モリを突き立てる、エイハブ率いる捕鯨船ピークォド号の漁師たち。彼らの国籍は、米国、中国、インド、欧州、アフリカなど様々で、人類一丸となって「神」に対峙する。
作品の半分は話の進行と関係の無い、鯨の生態学や捕鯨の歴史等のウンチクで占められ退屈極まりない。だが、これが効果抜群なのだ。広い海では何日も鯨を発見出来ず、無為に時間が流れることが珍しくない。読者はその時の流れを体感する。それだけに見張りの「鯨だッ!」に思わず身をのり出す。読み進むうちに読者は完全に船乗りの一人となり、白鯨との壮絶な死闘に参戦する。そして、仲間が散る度に喪失感で立ち尽くすのだ。何という文学の力!


●マクベス

「人生は動く影、哀れな三文役者だ。色んな悲喜劇に出演し、出番が終われば消えるだけ」

シェイクスピアの魅力は、何と言っても追い詰められた人間が最後に発揮する生命の力だ。超然と現実に立ち向かい、たとえ滅びようとも、運命の神と刺し違え道連れにしてやるという気迫だ。“どうとでもなれ、どんな嵐の日でも時間はたつ”と、武将マクベスは野心から自分が仕える国王を暗殺し王位を手に入れるが、至福の時も束の間、今度はその地位を失う恐怖に取憑かれ親友の命さえも奪ってしまう。彼はやがて加速する不安を終わらせるべく、自ら死地の只中へ飛び込んで行く。
まるでジエットコースターに乗ったように、ノンストップで破滅へ向かって突き進む“あの”疾走感がたまらない!
※ポランスキー監督の映画版も重厚な映像&演出で超必見!


●夜間飛行

『星の王子さま』の著者サン=テグジュペリが、危険な夜間飛行に従事する人々を通して、人間の尊厳を謳い上げた珠玉の一作。
20世紀前半、郵便機の操縦士達は命を賭けて大陸間を往復していた。濃霧、乱気流、吹雪と戦うなか、南米最南端〜ブエノスアイレスを飛ぶ一機が暴風雨で遭難してしまう。刻々と減り続ける燃料。操縦士ファビアンと後席の無電技師は、地上へ生還するべく嵐に立ち向かうが、ファビアンは雲間から見えた星につられ、二度と降下出来ないのを知りつつ雲の上に出てしまう。そこに広がったのは、満月に照らされ水晶の様に輝く雲海!操縦士が感嘆して思わず振り向くと、無電技師も微笑んでいた。人間は死を目前にしても、圧倒的な美の前では微笑んでしまうのだ!
作家がナチスに撃墜されたのは44歳。長生きして欲しかった。


●歯車

この戦慄の短編は、芥川が35歳で自殺した後に発表された遺作だ。小説というより、芥川の繊細な神経の束が、そのまま目の前に切り出されて置かれたという、異様な印象を与える一編だ。
主人公の「僕」は、見聞きし、体験したこと全てに、何らかの不吉な兆候を見出すという(ブランコを見て絞首台を連想する様に)、極度の強迫観念の下に生きている。彼は世界が無数の歯車で埋め尽くされ、自らがその一部となる幻覚を見、安全地帯を求め街をさ迷う。「僕」の自殺を予感した妻が、胸騒ぎから部屋を覗きに来るのを見て「僕」は思う“誰か僕が眠ってるうちにそっと絞め殺してくれる者はないか”と。川端康成ら他の文豪も、歯車を芥川の最高傑作にあげている。
文学史上、ここまで精神世界をさらけ出した作品はないだろう。これは彼の石なき墓だ。


●火の鳥・鳳凰編

圧巻!“人間”を語る時に、漫画が文学に匹敵する力を持っていることを証明してみせた手塚作品の金字塔。永遠の生命を持つ火の鳥の視点から、限りある命を精一杯生きることの尊さや生命の讃歌を、手塚は30年も描き続けた。
鳳凰編の舞台は奈良時代。人生を呪う盗賊・我王は人斬りを重ねる悪人だが、ある僧侶との出会いをきっかけに、やり場の無い怒りや苦悩を仏像に刻み始める。その真に迫った仏を民衆は求めるようになるが、過去の罪から彼は腕を切り落とされてしまう…。どん底を這う我王が生命の美しさに気づいていく姿は胸を打つ。彼が黙座しているだけで、絵から命の炎が立ち昇って来るようだ。

※人類滅亡後の数十億年を描いた未来編もオススメ。永遠の命を手に入れた人物が“死ねない”という孤独地獄を味わう。巨大スケールにクラッ!


●続ぼくを探しに/ビッグ・オーとの出会い

“生きる姿勢”をテーマにした傑作絵本。絵はいたってシンプル。1ページ目、一片の三角形の“かけら”がジッとしている。かけらは自分をはめてどこかに連れて行ってくれる理想の相手を待っていた。欠けた部分を持つものが次々と現れ彼をはめてみるが、ピッタリと形の合う相手はなかなかいない。
ある日、彼は自分で転がることを勧められ驚く。「角が尖っていて、一人じゃ転がれないよ」「やってみたの?角はとれて丸くなるものさ」。彼は長い時間座っていたが、ついに体を引き起こしてひっくり返った。バタン、バタン。転がりだし歓喜するかけら!誰かの一部になるのではなく、誰かを同化させる訳でもない。何かに属して生きればラクだし寂しくないけれど、彼は不器用ながらも自分の力で前進する。そのひたむきな姿に激感動。ラストも良い!




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