〔先にストーリー編を読まれた後の方が、より分かりやすいです!〕 《それまでのアニメと比べて何が新しかったのか》 今では大人気のガンダムが、どうして24年前の初回放送時は、低視聴率にあえいで打ち切り になったのか?それはガンダムが従来のロボット・アニメのあらゆる常識をブッ壊した革命的 作品であり、子どもたちがついて来れなかったからだ!対象年齢を完全に無視した大人の ドラマだったからだ! 以下、渾身の力を込めて、何がどう新しかったのか比較&説明しようッ!! (注)マジンガーZやゲッターロボなど、ガンダム以前の主なロボット・アニメは“スーパーロボッ トもの”と呼ばれており、ここではそれらを“スパロボ”と略す。 (注2)ガンダム世界では大型ロボットのことを「モビルスーツ」と呼んでいる。モビルスーツとは “作業用動力付き宇宙服”のことで、元々はコロニー(大型宇宙ステーション)建設という平和 利用を前提に開発されたものだ。 目次〜14トピックス! 人類同士の戦争/単純な正義と悪の対決ではない/生命の重みを語っている/スパロボの 「お約束」がない/一話完結でない/同じ敵メカが毎回出てくる/リアルな演出/兵器の設定が 本格的!/ネーミング・センス/ニュータイプ/年齢設定/劇場版ガンダム3部作/後日談と ガンダム年表/最後に ●人類同士の戦争 従来のロボット・アニメの内容は「地球制服をもくろむ悪の異星人軍団VS正義の地球人」という 単純な勧善懲悪ものだったが、ガンダムで描かれているのは人類同士の戦争!“ロボット・ アニメなのにヒーローものじゃない…!”子どもたちは面食らった。ガンダムが撃破するのは 極悪ロボット獣や恐竜帝国軍ではなく、生身の人間が操縦する兵器。 敵兵だって家に帰れば恋人や家族が待っている…そんな現実的でシリアスな設定だ! ●単純な正義と悪の対決ではない さらに子どもたちの混乱に拍車をかけたのは、主人公アムロが正義の側だと胸を張って言えな かったことだ。アムロは地球連邦軍の兵士。敵は自治権を求めて独立戦争を挑んできたコロ ニー(大型宇宙ステーション)「ジオン公国」の人々。 彼らは領土を奪いに侵略してきたのでも、市場を求めているのでも、まして殺戮の美酒に酔い しれているのでもない。ただ「独立を承認して欲しい」、この一点の為に戦っているんだ(それも 外交活動に万策尽きての選択だ)。もちろん、ジオン兵は自分が「悪」だなんて、これっぽっち も思っちゃいない。 実際、地球連邦政府はコロニーの人々を、経済面でも人道面でも差別するような政策をとって きた為、ジオンの人々が立ち上がったのは理にかなったことだった。 生活の向上を求めて自治権を求めている人々を、なぜアムロは「弾圧」するのか?結論から 言うと、ジオンが「ザビ家」の独裁政治の下にあるからだ。総帥のギレン・ザビは、「目先の利益 を追う地球連邦政府に、もはや人類を統治する能力は皆無」と判断し、「愚劣な官僚が支配 する連邦政府ではなく、ジオン国民によって人類は管理されるべき」という信念を持っていた。 アムロは“腐敗した連邦政府でも独裁体制よりマシ”と、ザビ家の独裁を阻止する為にジオン を叩いた。では、もしジオンがザビ家の独裁国家ではなく、民主国家で議会が開戦を選択して いたら?…アムロに限らず多くの連邦兵士は“相手が攻めてきたから”以外に、戦う理由を 見出せなかっただろう。 以下のカイとミライの会話はひとつの核心だ。 「俺達が連邦の無能な官僚や参謀の盾となって死ぬのは嫌だってことなんだ」 「カイの言ってることは正しいわね。でも、今の相手はザビ家そのものよ」 「じゃあさ、そのあとで連邦も叩くかい?」 〔連邦軍上層部の腐敗〕 作中では“正義の源”であるハズの連邦軍上層部が、エリート意識に溺れて兵士を“モルモッ ト”と呼び、兵の命をゲームの駒の様に考える傲慢な言動が度々描かれている。その一方で ジオン側はランバ・ラルやドズル・ザビ等、部下のことを思いやる士官が登場する。視聴者は “悪”とされている側が本当に悪なのかと戸惑った。 「わしの出世は、部下達の生活の安定につながる」(ランバ・ラル) ●生命の重みを語っている〜名もなき敵兵の死まで描写 自分が作品中で最も衝撃を受けたものは、物語の後半、ソロモンの決戦で流れた以下の ナレーションだ-- 「生か死か、それは終わってみなければわからなかった。確かな事は、美しい輝きがひとつ 起こるたびに何人か、何百人かの人々が確実に宇宙の塵となっていくという事だ」 ガンダムを見始めた当時、正直言ってメカのカッコ良さにばかり目がいって、派手な戦闘 シーンでは“うおお、すげぇ迫力!”と爆発の閃光に興奮していた。このナレーションは、兵器 や戦争を「カッコ良いもの」と錯覚している若者に、“あの美しい輝きの中では人が死んで いるのだ”と、頭からバケツの水をぶっかけたんだ。 モビルスーツの爆光は一人のパイロットの死を意味するが、艦船の爆光はブリッジの人間全員 の死を意味し、さらには画面に直接描かれない、機関士や整備士、医療班や食料班など、 乗組員数百人の生命が奪われることを意味していた。 それまで自分は「お〜、敵の船が豪快に爆発しとるわ」くらいにしか感じていなかったので、 このナレーションに艦船の爆発=大量死を認識させられ愕然とした。 そして! これまた視聴者の度肝を抜いたのが敵兵の死の描写だ。従来のスパロボでは味方の死は 詳細に描かれても、敵の死は爆発のみが描かれるだけだった。だから子どもたちは主人公が 「生命を奪った」とはハッキリ感じていなかった。 ところがガンダムでは、脱出しようとしながら爆発の炎にのみ込まれる敵兵の姿が何度も 描かれている!それも、その場限りしか出てこない末端の兵士(若い新兵)が「母さーん!」 「マリアーッ!」と母や恋人の名を叫んで死んでいくんだ。敵の無名兵士の為に脚本を割いた アニメなど、前代未聞だった!! ●スパロボの5つの「お約束」がない 〔見えを切らない〕 スパロボは各パーツが変形合体したシーンで、「〜参上!」など主人公が見えを切り、背景が フラッシュのようにピカピカ点滅していたが(中にはロボットに唇があって喋るものも)、アムロは 「ガンダム見参!」等とは間違っても叫ばない。 〔武器の名前を叫ばない〕 スパロボのパイロットは「ロケット・パーンチッ!」「ゲッター・ビィィームッ!」となぜか使用武器 の名前を絶叫するが、アムロは「そこか!」「当たれ!」。ビームサーベルを使う時も「天空剣、 Vの字斬り!」なんて叫ばない。 〔いきなり敵の新メカの名をいわない〕 スパロボでは初遭遇した敵であるにもかかわらず「ちくしょう、○○め!」と、なぜか主人公が 敵メカの正確な名前を知っているケースが多々ある。ガンダムでは両軍の兵士が相手の機体 に呼び名を付けていた! 例)ガンダム=白いヤツ、ホワイト・ベース=木馬、ドム=スカート付きetc 〔主題歌逆転の法則がない〕 スパロボでは主人公が不利な状況の時にBGMで主題歌が流れ始めると、突然弱点を発見 するなど戦況が好転し、主役がハッスルして大逆転に至るという黄金法則がある。こうした 珍現象はガンダムでは起こらない。 〔必殺技がない〕 スパロボは“ブレストファイヤー”“超電磁スピン”などクライマックス用の必殺技があったが、 ガンダムにはない。ビームライフルやバズーカなど、地味に武器を持ち替えるだけ。っていう か、ガンダム自体が登場しないエピソードさえある。 (スパロボの必殺技は、主題歌の歌詞に盛り込まれている場合が多い!) ※“コンバトラーV”“ボルテスV”など多くのスパロボを手がけた長浜忠男監督が“もしもガン ダムを監督していたら”というジョークを紹介。 『ある日アムロがホワイトベースの中を歩いていると、子どもたち(カツ・レツ・キッカ)がヨーヨー で遊んでいる所に出くわす。ピキィィーン!「こ、これだッ!」とひらめいたアムロはさっそくガン ダムの新兵器を開発。襲い来る邪悪なドム軍団に向けて、必殺技『ガンダム・ヨーヨー』を 炸裂させ、見事これを全滅させる。夕日をバックに立つガンダムの雄姿。“有難う、カツ・レツ・ キッカ!”。』 仮面をかぶるシャアは悪玉の総親分で、ガンダムには心があり、アムロとガンダムは2人で 協力しながら悪党をやっつけてる…こんな感じだろうか。 ●一話完結でない スパロボは毎回ほぼ同じ展開で一話完結が基本だ。つまり、敵が攻めてきて、やっつけて、 悪党が「今度こそみておれ」と捨て台詞を吐いて去っていく、この繰り返しだ。ワンパターン なので、ぶっちゃけ、第一話と最終回だけ見ても意味が通じた。ガンダムでは全43話が連続 した大河ドラマになっており、すべての戦闘に意味があった! ●同じ敵メカ(モビルスーツ)が毎回出てくる スパロボが好きな子どもたちは、“今週はどんな新しい敵が登場するんだろう”そんな風に ワクワクしてチャンネルを合わせた。ところがガンダムは第一話に登場したモビルスーツ 「ザク」が、なんと最終回にもまだ活躍しているのだッ! むろん、ザク以降にも新しい機体は出ている。しかし、ザクは依然として現役であり、多数が 前線に配備されているんだ。放映当時、「毎週違う敵が出てくる」のが当たり前だったロボット ・アニメ界で、これは実に革新的だった。 それには監督・富野氏の「メカではなく人間ドラマを見せたい」という気持が強く込められて いた。従来のように次々と新メカを出せば、子どもたちの興味の対象が、登場人物の生き様 ではなくメカの方に行ってしまう…監督はそれを怖れたのだった。 本編中に描かれた「敵」モビルスーツは、(登場順に)ザク、旧ザク、グフ、ドム、ゴッグ、ズゴ ック、アッガイ、ゾック、ゲルググ、ギャン、ジオングの11種類。 11種類、というと多く思われるかも知れないが、全43話ということを考えると、この数はとても 少ないものではないだろうか(しかも、このうちの5体は単発出演のキワモノ的存在で、レギュ ラーではない)。ザクの後継機「グフ」は12話目にしてようやく登場した。 ※実際問題、戦争ではそう次々と新兵器が作られるわけではなく、富野監督はリアルさを追求 する為に、初期構想では敵モビルスーツを最終回までザクだけで押し通すつもりだった! ガンダムのデザインも、元々はスター・ウォーズのメカに触発された「白一色」というものだった が、おもちゃ会社が“これでは売れない”とクレームを付け、“ならば”とヤケクソで赤、黄、青 という「信号機カラー」にしたのだった。 ●リアルな演出〜ロボット・プロレスではない 【兵士の日常を描く】 TV版ガンダムの第14〜16話のシナリオはまさにリアル路線。 第14話『時間よ、止まれ』…ジオン兵が「自分たちはどんな奴らと戦ってるんだろう」と、作戦 とは関係なく一般市民に変装して連邦軍の兵士に会いに来る物語。 第15話『ククルス・ドアンの島』…ジオン軍を抜けて孤児たちを育てているザクの元パイロット、 ククルス・ドアンとアムロが出会う。ドアンはアムロに告白する-- 「子供達の親を殺したのは、この俺さ!」と。ドアンは自分の流れ弾で一般市民を殺してしまっ たのだった。 第16話『セイラ出撃』…食料倉庫が被弾して塩が尽きてしまうホワイト・ベース。彼らは塩湖 を求めて砂漠地帯をさまよう。ロボット・アニメで登場人物が塩不足に悩むというリアルな演出 におったまげた! 戦闘とは直接関係ないシーンを丁寧に描くことで、キャラの存在感が格段に増す。ストーリーの 進行上は不必要なシーンが、作品に生命を吹き込んでいる--これが「富野演出」と呼ばれる ものだ。単なる戦闘の連続ではなく、作品に人間ドラマを盛り込み、大人の鑑賞に堪えられる ものにしたんだ。 【思わず大人が唸る会話(というか、子どもには分からない会話)】 名セリフがテンコ盛りのガンダム。山ほど紹介したい会話があるんだけど、ここでは作品が 大人向けということが良く分かる例を3つ採り上げたい。 (ランバ・ラルと愛人のクラウレ・ハモンとの会話。ハモンがアムロに食事をおごろうとする) 「できるものを14人分ね 」 「ん?一人多いぞ、ハモン 」 「あの少年にも」 「ん? あんな子が欲しいのか? 」 「(静かに笑って)ふっ・・まさか 」 こっ、このやり取りは、絶対に子どもには分からんッ! (壺マニアのマ・クベ大佐が部下に) 「チン!(壺を指で弾いて)良い音色だろ?」 「はい。良い物なのですか」 「北宋だな」 「は?」 なんと劇場版ガンダムUの本編はこの会話から始まる!自分はずっと「ホクソウ」が何なのか 分からなかった。まさに「は?」だ。大人になってやっと白磁の壺に中国・北宋時代の名品が あることを知った。なんて渋いファースト・シーンなのか! (デギンとギレンの会話。デギン、大量破壊兵器の使用を求めるギレンに語る) 「貴公知っておるか。アドルフ・ヒトラーを」 「ヒトラー?中世紀の人物ですな」 「独裁者でな。世界を読みきれなかった男だ。貴公はそのヒトラーの尻尾だな」 「地球連邦の絶対民主制が何を生み出しましたか。官僚の増大と情実の世を生み、あとは ひたすら資源を浪費する大衆を育てただけです。今次大戦のような共食いを生んだのも、 連邦の軟弱ゆえです。もう人類は限界を超えましたよ(中略)ヒトラーの尻尾の戦い振りを ご覧下さい」 「言いぐさはいろいろあるものよ」 ロボット・アニメでヒトラーの名が会話に引用された例を、他に聞いたことがない! 【脅える主人公たち】 「戦いが終わったらぐっすり眠れるっていう保証があるんですか!?」(アムロ) スパロボでは勇気、熱血、根性を備えた主役が果敢に敵に挑んでいくが、ガンダムの登場 人物は敵に脅え、泣き、悲鳴をあげる。戦う姿勢は格好良くも勇敢でもない。みんな死にたく ないから戦っているだけなんだ。 「私、アムロが戦ってくれなければ、とっくに死んでたわ」(フラウ) 「僕だってそうなんだよ。だけど、もう怖いのやなんだよッ!!」 【補給の重要性を初めて描いた】 「帰還途中でありましたので、ミサイル・弾薬が全て底を尽き…」(シャア) 「補給が欲しいのだな、まわす!」(ドスル) 「幸いであります。それに、ザクの補給も三機」 「貴様がいて、ザクを三機も無くしたのか!」 ガンダムではほとんどのエピソードに補給の話題が出てくる。両軍とも手持ちのモビルスーツ は数機のみで、ひとつの戦闘が終わると補給を受けるまで次の作戦に移れない。それまでの ロボット・アニメで補給に触れたものはなかった! (捕虜のジオン兵コズンとブライトの会話) 「捕虜の扱いは、南極条約にのっとって、くれるんだろうな」 「もちろんだ。しかし、食事は悪いぞ。(補給が滞り)我々だってろくなものが食べられないんだ」 「ご同様さ。お偉方は最前線の俺達の事なんかこれっぽっちも考えてくれんからね」 (補給部隊のマチルダとアムロの会話) 「マチルダさんは、なんで戦ってるんですか?」 「そうね、補給部隊にいれば、戦争という破壊の中でただ一つ、ものを作って行くことが出来る から、かしらね」 【リアルな戦闘描写〜弾が切れたッ!】 〔弾切れ〕 なんといってもガンダムの戦闘描写の革命は“弾切れ”!ガンダムが放映されるまで、視聴者 はスパロボの主役メカが“無限ミサイル”であることを、何の違和感も感じずに見ていた。だが、 ガンダムでは頻繁にこの“弾切れ”が登場する。 ※既に第一話の時点で、弾切れになったアムロが「他に武器はないのかッ!?」とパニクッて いる! 〔大気圏突入〕 スパロボでは宇宙から主人公が鼻歌まじりで地球に戻って来るが、実際にはこの過程で 大気圏突入という大仕事が待っている。大気との摩擦で機体が超高温になるため、外壁が 少しでも破損していればいっきに炎上してしまうのだ…!ガンダムではパイロットを載せた まま溶けていくザクが描かれ、見ていて背中に戦慄が走ったッ! 〔モビルスーツの機体を番号で呼ぶ〕 「108、109、最大船速です」 ガンキャノンの機体には“108”や“109”など番号が書かれており、戦闘中に「○○が乗って いるガンキャノン」とは呼ばない。数字だけ! 〔死に様〕(注・ネタバレ) ザビ家の死に様は文章にするとかなり凄絶。 サスロ・ザビ…爆弾テロで爆死(本編未登場)。 ガルマ・ザビ…親友に裏切られ敵に特攻するも失敗、爆死。 ドズル・ザビ…ビグ・ザムを撃破され、爆死。亡骸は宇宙空間を永遠に漂流。 デギン・ザビ…自分の子どもの手で丸焼き(ソーラ・レイ)、蒸発。 ギレン・ザビ…妹に後頭部をライフルで撃ち抜かれ、射殺。 キシリア・ザビ…バズーカで首を吹き飛ばされてバラバラ。 ●兵器の設定がリアル!! 〔“量産型”という概念〕 ロボット・アニメ史でメカ設定における最大のガンダム革命は、“量産型”という概念だ。生産に 莫大なコストがかかるモビルスーツは、最低限の性能を備えた大量生産用の“量産型”と、 指揮官用のハイコスト機の2種類が劇中で描かれた。ザクが単純に「やられメカ」だからたくさん 登場するのではなく、量産化することでコストダウンを計ったリアルな「兵器」という認識を見て いる者に与えた! 〔作り込まれた設定〕 下記のザクに関する説明文は初心者にはサッパリだと思うけれど、“やられメカ”のザクでも ここまで設定が作り込まれているという好例だ。 『一般に「ザク」と呼ばれている機体の正式名称は「MS-06ザクU」。ザクUには数種の型が ある。大戦初期に使用されていたのはC型(MS-06C)で、これは核戦争を想定して耐核用の 装甲を持っていた。しかし南極条約の締結で核の使用が禁止されると耐核装備は無用に なり、耐核装甲をなくし、軽量化をはかったF型(MS-06F)が登場した。それゆえ、劇中に登場 するザクはほとんどがこのF型。 ただし、地球上では陸戦用に改装されたJ型(MS-06J)のザクUが一般的。ちなみに、ザクを 開発したのは軍事企業のジオニック社で、ドム系を開発したツィマッド社はライバル企業。』 (これはごく“簡単な”ダイジェスト。研究者ならこの20倍以上書ける) 〔ミノフスキー粒子の存在〕 ミノフスキー粒子は、散布することでレーダーを使用不能にさせる作品オリジナルの物質で、 ガンダムの最も重要な基本設定!レーダーが使えない事でパイロットは肉眼で攻撃すること になり、メカとメカが接近して射撃や白兵戦を行なう具体的な理由になる。これまでのロボット・ アニメが無視してきた「なぜわざわざ接近して戦うのか」「遠くから撃てばいいじゃないか」と いう疑問を完全に解決した画期的設定だ!! 〔胴体にコクピット〕 マジンガーZを始めスパロボの多くは頭にコクピットがあるため、頭部を破壊されることはなか った。だが考えてみれば、そんな装甲の薄い危険な場所にコクピットがあるのはおかしい。 ガンダムでは最も装甲が頑丈な胴体の中にコクピットがある。 有名なラストバトルでガンダムは頭が吹き飛ぶが、アムロは「たかがメインカメラをやられた だけだ!」と言って戦闘を続行する(ガンダムは左手も吹っ飛び、右足も…)。ロボットとは いえ、主役メカの首から上を失った姿はビジュアル的にかなりのインパクトがあり、視聴者は 大ショックを受けた。 ※胴体が一番安定している(揺れが少ない)から、という説もアリ。 〔“足”について〕 宇宙要塞の格納庫でのシャアとメカマン(技術者)との会話。足が付いてないモビルスーツ (ジオング)の前でメカマンが声を荒げる。 「80%?冗談じゃありません。現状でジオングの性能は100%出せます! 」 「足はついてないようだが」 「あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのです!」 素晴らしい!宇宙戦にのぞむのだから、確かに足は重要ではない。この作品の名セリフの ひとつ。 ※逆に「リアルではない」兵器設定の代表格はなんといっても“ギャンの盾”!敵の攻撃を 受け止める為の盾なのに、内部に機雷がドッサリ収納されているのだ。いつ誘爆してもおか しくない、あまりにデンジャラスな盾だッ! ※戦闘場面で呆然としたのは、重力圏下でのホワイトベース背面飛行。ミライがラルのグフを 振り落とすためにやったことだが、艦内のパニックぶりは相当なものだったに違いない。つか まる物がないブライトやセイラは天井に落下、ミライだけは舵にぶら下がっていたのだろうか? ●ネーミング・センス ガンダムはモビルスーツや戦艦のネーミングが実に上手いッ!メカの名前それ自体がアート している。機体のデザインと付けられた名前の響きが完全に溶け合っており、もはや機体と 名前を分けて考えることなんか出来ない! 例)初代ガンダム…ザク、グフ、ドム、ゲルググ、サラミス、ザンジバル、グワジン Zガンダム…キュベレイ、メッサーラ、百式、メタス、パラス・アテネ ガンダムZZ…ゲーマルク、Rジャジャ、クインマンサ 逆襲のシャア…サザビー、レウルーラ、アルパ・アジール、リ・ガズィ その他…ケンプファー、ガーベラテトラ、ノイエ・ジール、ヴァル・ヴァロ ●ニュータイプ ガンダムではアムロやシャアが「ニュータイプ」とされている。作品中では色んな言葉で語られ ているが難しく考える必要はなく、監督いわく「人よりちょっと勘がいい人」。人間は宇宙空間 という、今までと全く違う環境で暮らし始めると、それまで使用していなかった脳の機能が 覚醒すると作品ではされており、人類はもっとお互いの気持ちが分かりあえる次の段階へ 進化できる--そうした希望の象徴として描かれている。 ※シャアはこの能力が戦争に使われることを危惧している。「体制に取りこまれたニュータイプ が私の敵となっているのは面白くない」「パイロットでは体制は崩せんよ。ニュータイプ能力を 戦争の道具に使われるだけだ」 〔ラストシーンの感動〜アムロとララァ〕※ネタバレ 同じニュータイプとしてアムロが初めて心を通わせ、分かりあえた相手は敵の女性兵士ララァ だった。アムロはそのララァを戦いの中で誤って殺してしまう。敵とはいえ、初めて心を交流 した彼女をアムロは殺すつもりはなかったのに…。彼は号泣する 「僕は…取り返しつかないことをしてしまった…僕は、ララァを殺してしまった…!」。 そしてラストシーン。最後の決戦で負傷したアムロは、ボロボロになったガンダムの中で 「ララァのところへ行くのか…」と呟く。このアムロの声には恐怖や絶望といった響きはなく、 むしろ安堵に近いものがあった。(自分は、“死”をこんな風に誰かと再会できる場所とした 脚本に、その優しさに、このシーンではいつもウルウルしてしまう…!)。 ホワイトベースの仲間たちがアムロをサーチライトで照らし、「皆ここにいるから、がんばって たどり着くんだ!」と必死で合図を送り、皆の呼びかけでアムロが光の方向へ向かっていく ラスト。彼は泣きながら最後のセリフを言う。 「(ララァに)ごめんよ…まだ僕には帰れるところがあるんだ。こんなに嬉しいことはない! 分かってくれるよね…ララァにはいつでも会いに行けるから!」 9時間に渡る映画3部作の最後の言葉が、テレビ版全43話の最後の言葉が、なんと主人公 の死者に対しての「いつでも会いにいける」という語りかけだった!戦争をテーマにしたアニメ が、生者による死者への謝罪と、いつでもその気になれば会いにいけるというメッセージで 締めくくられたことに、自分は心の底から圧倒されたッ!激感動ッ!! ●ただし年齢設定、これはおかしい…! アムロやフラウが15才というのは分かる。デギン公王が62才というのも分かる。ギレンが 35才というのは、微妙だがそうだと言われればそういう気もする。しかし、セイラ17才(高校 生!)、ブライト19才(選挙権ナシ)、シャア20才(貴様が“若さゆえの過ち”を語るな!)は ないだろう!絶対に、全員5才以上サバを読んでいる。特にキシリア様!24才というのは、 サザエさんと同じではないか!?キシリア様の年齢設定に関しては制作サイドに猛省を うながしたい。リアル路線を狙ったガンダムの最もリアルでないもの、それが年齢設定だ。 ●貢献度120%〜劇場版ガンダム3部作 1981年3月14日、ガンダム劇場版第1作公開!首都圏では数千人が徹夜で並んだ為、 「早朝4時半」から繰上げ上映されるという未曾有の事態になった!ストーリー編に書いた ように、ガンダムがオンエアされた1980年前後は、まだビデオ・デッキが普及しておらず レンタルビデオ屋なんてのは存在してなかった(レンタル店が目につき出したのは85年頃。 最初は1泊1500円の鬼畜料金だった!)。 当時のアニメ・ファンは本放送を見逃したら一巻の終わりということで、毎日が緊張感と 悲壮感が漂う戦いの日々だった。いつオンエアされるか分からない再放送をひたすら待つ のは、気が遠くなるほど辛いことだった…。 だからこそ映画『ガンダム』に、例えそれが「テレビ版の総集編」であろうと、我々は公開初日 に始発列車で劇場に向かい、また猛者たちは徹夜で劇場前に並んだのだ。もちろん、1秒 でも早く作品に触れたいが為に! テレビ版のガンダムがビデオ化されたのは意外に遅くて1999年6月25日。ガンダム20周年 イベントの一環としてビデオになった。それ以前のガンダムのビデオは90年に発売された 劇場版3部作オンリー。映画がなければ99年までガンダムをレンタル出来なかった訳で、 この点からも劇場版の貢献度は計り知れないものがある。 ※劇場版の第3部は、ストーリーは総集編でも、絵は全面的に描き直されており、めちゃくちゃ きれいな画像だ。完全に新作といって良い! ●後日談とガンダム年表 下記の表のように、ガンダムは現在約15種類の作品に増殖している。第一作(ファースト・ ガンダム)を超える名作はまだ現れていないものの、繰り返して観ても鑑賞に堪えうる作品 は生まれている。その一方、初代への冒涜に他ならない戦犯ものの作品もあり、まさに玉石 混合といった感があるのが現状だ。 世の中には『ガンダム原理主義者』と呼ばれる硬派なファンがいて、彼らはファーストしか ガンダムと認めておらず、他の作品を唾棄すべきものとして憎しみの炎を燃やしている。 確かにタイトルにガンダムと冠しているだけで中身はスカスカの駄作もあるが、ターンAの ようにサントラを聴いただけで目にうっすらと涙が浮かぶ名作もある。特に『ポケットの中の 戦争』は連邦でもジオンでもなく、中立サイドの子どもの目から見た戦争を描いており、反戦 メッセージが静かに胸に響く、特筆すべき傑作だ! 宇宙世紀0079 機動戦士ガンダム 機動戦士ガンダム第08MS小隊 機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 (この3作品は時代設定が同じ) ↓ 宇宙世紀0083 機動戦士ガンダム0083 スターダスト・メモリー ↓ 宇宙世紀0087 機動戦士Zガンダム(ゼータ) ※ファーストのラストから7年後を想定 ↓ 宇宙世紀0088 機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ) ↓ 宇宙世紀0093 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ↓ 宇宙世紀0123 機動戦士ガンダムF91 ↓ 宇宙世紀0153 機動戦士Vガンダム(ヴィクトリー・ガンダム) ↓ 1万年後? ∀ガンダム(ターン・エー・ガンダム) ∀ガンダムの舞台となった世界は、一度もう文明が滅んでしまって、そこから2千年後の 地球だ(ザクやガンダムは遺跡になっている)。主人公ロランは月で生まれた人間だが、 地球にも友人がたくさんいる。それゆえ、月と地球の間で戦乱が勃発した時に、彼は両者を 和解させるべく奔走する。 その姿勢を見て人々が“あんたはどっちの味方なんだ!”と問い詰めた時、彼はこう絶叫 するんだ-- 「僕は2年前に月から来ました。けど、月の人と戦います。だけども、地球の人とも戦います。 人の命を大事にしない人とは、僕は誰とでも戦いますッ!」 ロランは組織や国家よりも、第一に人の命を大切にすることを明確に言葉にして訴えた、 ロボット・アニメ史上初の主人公ではないだろうか?スゴイッ!! 富野監督は宮崎駿氏と同じ1941年生まれで今年で62才。ファンとしては監督にまだガンダム を作って欲しいんだけどなぁ…。 〔外伝?宇宙世紀ではなくなっている〕 ガンダムW(ウイング) ゴッド・ガンダム ガンダムX(エックス) ガンダムSEED 上の4作品は、ガンダムが登場するがファーストとは何の関連もない。ガンダムという「メカ」 がキャラクター化しているだけ。評価が高いのはスパロボ路線に走った野心作のゴッド。 オンエア中のSEEDはあまりにキャラ・デザインがアニメチックで非難ゴウゴウだが、後半は なかなかシリアスなエピソードもあり、スタッフの健闘ぶりが伝わってきた。とりあえず音楽は 非常に良い。 「差別や憎しみが対立を生み出し、終いには戦争という異常な事態にまで発展してしまうこと の悲惨さを描きたいんです」(SEED制作者) ●最後に これで『ガンダムはなぜ名作なのか』はおしまいです!この様なつたない解説で、作品の魅力 を汚していないことを祈るのみです。ガンダムはファーストの放映終了から四半世紀になろう としているのに、今なお続編が作られ、TVシリーズの他にも劇場版が制作され、ゲーム、 プラモデル、マンガ、果てはハリウッド映画など、実に様々な形で表現されています。これから もガンダムは間違いなく新しいファンを獲得し続けるでしょうッ!! (長文を最後まで読んでいただき有難うございました!!) ★今回の執筆で発見した、役に立つガンダム・サイト ※ファーストからZガンダムに至る流れを、実に分かりやすくまとめた講座!脱帽! http://yossy.que.jp/gundam/beginner/history002a.html ※入魂の宇宙世紀年表 http://www.interq.or.jp/jupiter/mcmurd/uc1.htm ※マ・クベの壺のデータを紹介。「倣定窯白磁蓮弁龍首浄瓶」というらしく、このサイトの管理 人さんは1969年に河北省定市で発掘された北宋の名窯“定窯”の白磁だと語っている。 真面目な中国陶器のサイトに、普通にマ・クベの壺が紛れてるのが楽しい。 http://xiuyunxuan.s13.xrea.com/galleries_h_03.htm ★ガンダム・トリビア ・再放送の視聴率が高い!名古屋では平均25.7%!(最高視聴率は29.1%!) ・ファーストのDVD-BOXは約4万円にもかかわらず、発売後1ヶ月の売上げ12万個! ・06年末までのガンプラの総売上は約3億7600万個。国民一人当たり3個! ・04〜06年の3年間のガンダム・グッズの総売上は847億円。 ・12分の1スケールのガンダムの玩具が定価35万円。 ※この解説で重大な間違いがあればご指摘下さい。なんせガンダムには裏設定が山の ようにあるので… r(^_^;) |
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