ようこそムーミン谷へ!
〜フィンランド/ムーミンワールド訪問記 2005〜
原作通りに再現されたムーミン谷にファンはエキサイト! | 興奮のルツボの子どもたち! |
2005年夏、ムーミンの原作者トーベ・ヤンソンさん(1914-2001)の墓参の為にフィンランドに向かった。その過程で
1992年にオープンしたムーミンワールドがフィンランド南西の港町ナーンタリにあると知り、さっそく足を運んでみた!
※6月中旬から8月中旬の2ヶ月間のみオープン。残りの季節、ムーミン家は冬眠中(笑)
●ヘルシンキからトゥルク、そしてナーンタリへ
ヘルシンキ中央駅 | ムーミン・ジュースでテンションを上げる | トゥルクから路線番号11番に乗車 |
首都ヘルシンキからトゥルクまで列車で2時間。トゥルクの観光案内所で市街地図をもらい、中心部のバス停まで歩く。
そこから11番のバスに乗って、約30分で終点のナーンタリに到着。ところがバスを降りてもムーミンランドのムの字も
見えない。どうやら、バス停から離れた所にあるらしく、付近の店や通行人に道を尋ねまくって歩いていった。
小さなナーンタリの最大の名所のハズだから、町の至る所に案内看板が出てると思っていたのに、楽勝予想に
反して一向に看板が視界に入らない。だんだん「他にもナーンタリって名前の町があるんじゃないのか?」と心配に。
「うおッ!あれは!?」 |
不安がピークに達しかけた頃、道路標識の下に小さなムーミンの絵の看板を発見!この町で間違いなかった!
●正面ゲート
島全体がムーミン谷と化していた! | あの島が全部そうなのか!? | 正面ゲートの長い 桟橋 |
なんとムーミンランドは街中にあるのではなく、ひとつの島が丸ごとテーマパークになっていた。ビックリ!
※ちなみに入場料は16ユーロ(約2千円)
●ムーミンパパ&ママ
ムーミンたちは常に姿を見せているわけじゃないので、出現した時は大人からも大きな歓声が上がった!
左右から「ヒシッ」。子どもが 抱きつきムーミンママは歩けない |
ムーミン家のテラスで夢のツーショット! |
皆パパの帽子を触りたがる |
●ムーミントロール
我らのムーミンは一般客にトロッコをひかせて登場! | ここでも「ギュッ」。もう放しませんから! |
●フローレン
彼女の名前は旧アニメ版ではノンノン、新版ではフローレン、原作では“スノークのお嬢さん”。ここでは
今の日本の子どもたちに一般的なフローレンで統一します。※ムーミン族とスノーク族は別種族
「いないいない…」 | 「バァ!」 |
子ども達と遊んであげる優しいフローレン。金色の髪は意外に硬かった(笑)
●スニフ
左端の女の子が一生懸命、スニフ人形をスニフに見せているのが可愛い |
手前の少年の帽子を… | スニフが頭に被った! |
満を持してミイ様の登場!眉間のシワ(不機嫌メイク)、無敵の仁王立ちなど、その存在はまさにミイだった! |
Oh!ビューティフル・ノウズ! |
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広い窓のある大広間 | これが寝室だ!スペアの帽子が置いてあった | 暖かく燃えている暖炉 |
壁には結婚式の写真が(演出が細かい!) | 鏡の前には息子とガールフレンド | パパの帽子はかなり巨大! |
右上にある小屋がスニフの家 | 窓からバルト海が見える |
ムーミンのベッドと、こっそり抜け出す為の縄梯子(笑) | 魚の網やルアー、本、ガラス玉など | 机には算数の勉強の形跡があった |
ママの聖域 | ムーミン家の食卓に欠かせない食材がいっぱい! | 丹精込めて作ったジャムや漬物がドッサリ |
さらに奥へ入ると仕込み中のフルーツ・ジュースが。た、たまらん! | 興奮したチビッコがオレンジをゲット |
側面が膨らんでいるユニークな家 | 清潔好きのヘムレンさんらしく 家の中は奇麗に片付いている |
ベッドの横にはライフワークの蝶のコレクションが 掛けられ、枕元には虫取り網が立てかけてあった |
警察署は観光案内所になっていた | 自らの意志で獄中に繋がれた子どもたち |
船体の見取り図。これを再現。 | パパの「海の男講座」。ロープの結び方を伝授 |
棒を外せば今にも海に繰り出しそう | 「ドリャー!」子どもが舵をブンブン回していた |
3つの演目が1時間おきに上演されていた | サーカスに入団したムーミンが、フローレンの 前で力のあるところを見せようと奮闘するが… |
バーベルが足に落下! 哀れ、右足にギブス |
実にシュールな光景が続く |
空中ブランコの女性にムーミンが見とれ、フロ ーレンが嫉妬。喧嘩になって背中を向け合う |
何だかよく分からない展開に… |
★動画で楽しむ!ムーミン劇クライマックス!(35秒) ムーミン骨折→空中ブランコの女性にトキメキ(フローレンの動きに注目) →仲直り、そしてハッピーエンド(最後の効果音がスゴイっす、笑) |
飛行オニが探していた七色に変化する “ルビーの王様” |
スナフキンのテント |
フィリフヨンカの家? |
ぬり絵コーナー。 みんな超真剣。目がマジ。 |
多くの子ども達がホッペタに好きなキャラを描いてもらってたんだけど、一番人気はムーミンか フローレンかと思いきや、なんとムーミンママ!あまりのムーミンママの人気ぶりに目を見張った。 やっぱり子どもは安心して甘えさせてくれる相手を求めてるんだなぁと、あらためて実感したデス。 |
お金が幾らあっても足りない恐怖のムーミン・ショップ |
普通のイチゴ・ジャムでも「ムーミンママのイチゴ・ジャム」とラベルが 貼られるだけで、めっさ美味しそうに見えてくるから不思議 |
ただのドーナツ店ではなかった | この素敵な紙皿は持って帰っても可! |
ヤンソンさんのアトリエを再現! | イーゼルとスケッチ | 原作のムーミン谷地図 |
ニンニやホムサといったサブ・キャラ も描かれた、ファンには嬉しい絵 |
各国の翻訳本の展示コーナーや、日本版 アニメを自由に見られるコーナーもあった |
一番感動したのは老後のパパ&ママの 写真!エプロンでママって分かった!(笑) |
実はまだヤンソンさんが存命中だった17年前(’89年)、学生時代にひと目お会いしたくてフィンランドに渡ったことがある。首都ヘルシンキではどこに住んでいるのか分からなかったので、タンペレという街の図書館内のムーミン博物館に足を運んで尋ねてみる事にした。館長さんいわく、「夏期のヤンソンさんは孤島に住んでるから誰も会えないんだよ」との返事。その島は無人島でヤンソンさんしかいないという。僕は残念に思いながらも、“孤島に住んでる”というのがヤンソンさんらしく感じられて嬉しくもあった。 その12年後、ヤンソンさんが他界されて今回の墓参りとなった。日本では墓がどこにあるのか情報が得られず、渡航したもののヘルシンキの観光局でも分からず、トゥルクでもムーミンワールドのインフォメでも分からなかったので、“もう巡礼は無理かも…”と諦めかけていた。ところが最後にダメ元で訊いたドーナツ・ショップの子が“私もヤンソンさんの墓の場所が知りたい”と、町役場や展示資料の貸し出し元など数ヶ所に電話をかけてくれ、ついに「ヤンソンさんは重い墓石の下になるのを拒否して、遺灰を海に撒くよう遺言を残したので、お墓はないようです」と教えてくれた。続けて「しいて言うなら、海そのものがお墓です」とも。遺灰が撒かれたのはナーンタリのはるか沖合いとのこと。僕はもう一度海岸線に出て、彼女が眠る海に向かって手を合わせた。 ※2009年追記!ヘルシンキのヤンソン家の墓地に分骨(?)されたのか、お墓を確認しました! |
彼女がヤンソンさんの墓を調べてくれた | 遺言に従い、遠くの沖合いに遺灰が撒かれたという |
「大丈夫、怖くないよ」 スニフにビビる子どもに声をかけるお父さん |
どの親も必死で我が子の シャッターチャンスを狙う |
牢屋の子どもをパチリ |
スニフに抱きつきたいのに勇気を 出せない子どもの背を押してやる |
Tove Jansson(1914-2001) |
スノーク(フローレンのお兄さん) Mさん撮影 |
ヘムレンさん(ヘムル族) mineralさん撮影 |
12階建ての超巨大客船! |
船体にはハッチャケたムーミン |
レストランにもムーミン・キャラ |
中央コンコース。船の中とは思えない |
「ムーミン!ムーミン!」と親に報告 |
大抵の子どもは喜ぶけど、この子は直後に 泣き出した。あまりにも近すぎたか(笑) |
白夜で零時頃に日が沈む。日没後もずっと 薄明るく、4時頃にはもう陽が昇ってくる |
「長旅お疲れさま!」 |
●小説『ムーミン谷の十一月』は最高ッス!! ムーミン・シリーズの最終巻。この作品は最終巻なのに、なんとムーミンを始め、パパ、ママ、ミイ、スニフ、スノークのお嬢さん(ノンノン)が出て来ない!主要キャラがみんな旅に出てしまったムーミン谷を舞台に、普段は目立たない脇役達の初冬の生活を描いてるんだ。なんて渋い設定なのか(スナフキンは出てくるよ♪)。登場キャラは皆が孤独で、ムーミン家に暖かさ、優しさを求めてやって来るんだけど、肝心のムーミンたちは留守。皆ションボリ。 その後、がっかりした者同士が集まって共同生活を始めるんだ(ムーミン屋敷の鍵はいつも開いている)。皆、個性的で一癖あるから最初は喧嘩ばかり。でも、ムーミンたちが帰ってくるまでに屋敷を大掃除してあげようという事になってからは、共同作業を通して目に見えない結びつきが生れていくんだ。それぞれが胸に抱えていた問題がゆっくりと浄化され、ムーミン家に元気をもらわなくても一人で立つことが出来るようになる。 ムーミン谷に残っていた住民は、まさしく読者の僕たちだ。ムーミン・ファンはどちらかというと内気でシャイな人が多い。辛いことがあると、ムーミン家に癒されたくて、本のページを開く。ところが、ムーミンを頼ってやって来たら、彼らは留守で登場しない。これに最初は戸惑う。“癒して欲しいのに、どうしたらいいんだろう”。ヤンソンさんはなぜ最終巻でムーミン家を留守にしたのか。おそらく、ヤンソンさんは読者の皆に、「もうあなた達はムーミン家がいなくても、自分の足で歩くことが出来るのよ。自分の力を信じて!」と語りかけているんだと思う。僕はそんなメッセージを受け取った。 大掃除が終わった時の描写が実に良い。「皆は揃ってベランダの前の階段に腰掛けました。夜になると、とても寒くなりました。でも、皆、何となく別れるのが名残惜しくて、それに、今まで皆で一緒に暮らしてきた生活が懐かしくて、寒くなっても立とうとしませんでした」。誰も“さあ解散しようか”って言い出せない。こういうシーンはたまらないッス。
スナフキンは別格として、僕が一番好きなキャラはホムサ。小柄な彼はいつもだぶだぶのコートを着込んでいて、海岸の半分放棄されているボートにひっそりと住み、夜、眠る時には、ちんまりと丸まって、自分で作ったお話を自分に聞かせている。それも毎晩同じ物語ばかり。人見知りなホムサは休みなく降り続く雨の音が大好きで、ちびちび虫(要するに小さな虫)の生態に関心がある。この物静かで孤独なキャラの、一挙手一投足がたまらなく愛おしい。 ムーミン・シリーズを読んでいると、翻訳もアートだとつくづく思う。スウェーデン語の原著を、下村隆一、山室静、小野寺百合子、鈴木徹郎という4人の訳者が翻訳していて、各人がムーミンの世界観に合った日本語をチョイスしている。中でも『ムーミン谷の十一月』を担当した鈴木氏の訳は詩心大爆発。その言い回しは、まるで文字を読むというより音楽を聴いているようだ。雪に閉ざされたムーミン谷の朝は『ほんとに谷間は、とまどうほどひっそりと美しく、静まり返っていました。そして残った人たちは、あまりしょっちゅうは顔が合わない為に、かえって親しみが深まっていきました』。裏山は『この森の中は年中、昼でも暗いのです。木々は枝の置き場もないほど混み合っていて、心配そうにくっ付きあって立っていました』。 寂しい響きの言葉の積み重ねが物悲しさを深める。例えば新書版の238頁。 この頁の15行だけで「割れて」「小さくなって」「どぎまぎ」「ちびちび虫」「引き返して」「屋根裏部屋」「そっと」「ちんまり丸まって」「皆が引揚げて」「あとに残った」「げんなりした」「踏みつけられて」「床に落ちていた」「また雨が降り出して」とこれだけ陰のあるフレーズが出てくる。別頁には「何だか急に、夏なんてずっと遠くへ行ってしまって、一度だって来たことがなかったような気さえします」というのも。そして心地良い 一方、フィリフヨンカの掃除シーンは超爽快。『フィリフヨンカはどんなゴミが隠れている所でも、ちゃんと知っていました。ゴミ屑はふわふわした灰色の固まりになって、方々の隅っこにちゃっかり収まっていました。ころころ転がっていくうちに、大きく太って、髪の毛だらけになり、絶対に見つかりっこないと安心しているゴミというゴミを、フィリフヨンカは片っ端から掃き出しました。愉快愉快。蛾やら、蜘蛛やら、ゲジゲジやら、もそもそ這いずり回っている虫けらどもが、皆フィリフヨンカの大きなほうきにかかって、引っくり返され、そこの所へザーッと石鹸の泡をブクブク立てた、洪水みたいなお湯が流れてきて、すっかり洗い流してしまうのです。バケツに入って次々とドアから表に運び出されていくゴミの山も、ちょっとやそっとのものではありませんでした。人生って、まあ本当に、なんて楽しいんでしょう』…なんか読んでるだけで、部屋をパーッて掃除したくなる! 味わいのある挿絵と心に浸みるストーリー、素晴らしい翻訳で紡がれた『ムーミン谷の十一月』。なんて楽に呼吸ができる世界なのかと、読み終えるのが惜しくて仕方なかった。(*^v^*) ※『ムーミン谷の十一月』(Ama ) |
ムーミン・ファン必見。福岡県古賀市の五所八幡宮には『ムーミンの木』があります!樹齢千年、高さ40mのクスノキなんですが、幹のコブがムーミンにそっくり。写真を見て驚いたんだけど、本当にムーミンが木の中にいるみたい。木の根元にちゃんと看板も立ってて、地元では有名みたいですね♪※九州在住の方、もし行かれることがありましたら、是非別の角度から撮った画像を送って下さい〜。 |
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