【NHK朝ドラ BEST10】

2000−2022

2022年4月8日、人生の悲喜すべてを見つめた朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が完結。最終回は圧巻だった。自分的には朝ドラ史上の最高傑作に。戦前からの100年に及ぶ3代の主人公の物語、そのあらゆる伏線を完全回収した結末に脱帽。まさか闇市のおはぎ少年の伏線 まで…。脚本の藤本有紀さんは、大河『平清盛』や近松門左衛門を描いた人情喜劇『ちかえもん』も担当。同い年ということもあり、心からリスペクト!感謝の意味もあり、2000年代の“超個人的”朝ドラTOP10をまとめた。

  

1.カムカムエヴリバディ (2022)上白石萌音・深津絵里・川栄李奈
主役3世代の各々に救いが用意され、それぞれの運命を音楽や餡子(あんこ)菓子が繋ぐ脚本の上手さ!脇役(戦前の父、出征した夫、ジャズ仲間トミー、クリーニング屋の夫婦、虚無蔵)の存在も忘れられず。防空壕の回はガチ嗚咽。時代劇の舞台裏を見られたのも良かった。前半は「おはぎ」、後半は「回転焼き」を毎回食べたくなった(っていうか食べた)。
主題歌『アルデバラン』AI
※作品の裏主題曲『オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート』サッチモ

2.あさが来た (2015)波瑠
江戸時代から朝ドラが始まる新鮮さ。女性の地位がまだ低かった時代に、日本初の女子大を建てたいと志した主人公。ひょうひょうとした夫・新次郎(玉木宏)の何気ない優しさがたまらない。五代友厚、土方歳三、大久保利通など歴史上の人物も登場する豪華さ。主題歌『365日の紙飛行機』も爽やか。

3.エール (2020)窪田正孝
作曲家が主人公。音楽が人を勇気づけたり、傷を癒したり、いかに人生を豊かにするか伝わり感動。一方、戦時中の歌は軍国主義を煽っており、主人公は人を戦地に向かわせたことを苦悩。音楽業界の仲間たちとの友情エピソードはどれも素晴らしかった。オペラ歌手を目指した妻役の二階堂ふみさんも好演。
主題歌『星影のエール』GReeeeN

4.芋たこなんきん(2006)藤山直美
小説家・田辺聖子の半生をモデルに、天才コメディエンヌの藤山直美がヒロインを演じた爆笑シーン盛りだくさんの楽しいドラマ。朝ドラといえば20歳前後の若い主人公が、苦労をはねのけて強く生き抜く物語が多いけれど、藤山直美は当時47歳で「史上最年長ヒロイン」と呼ばれ、「単独主演」では2022年時点でも最年長記録は破られていない。中年になったヒロインの回想シーンで物語が進むという斬新なストーリー構成で、「それでこうなったのか!」という伏線回収が見事だった。夫となる健次郎を演じた國村 隼(くにむら じゅん)は実に包容力のある演技。ケンカを笑いに変える話が多く視聴後はいつも爽やかな気持ちに。
主題歌『ひとりよりふたり』Fayray

5.ゲゲゲの女房 (2010)松下奈緒
“水木しげる”という強烈な個性を持つ夫を、超貧乏時代から側で見守ってきた夫人。マンガ業界の裏話がたくさん聞けて面白かった。徴兵された水木しげるが南方戦線で片腕を失うエピソードでは、朝ドラに戦場シーンが登場。下積み時代を経て、『悪魔くん』『鬼太郎』がテレビ放映されるシーンでは感無量に。
主題歌『ありがとう』いきものがかり

6.まんぷく (2018)安藤サクラ
インスタントラーメンの開発秘話がこんなに面白いとは!夫役の長谷川博己と試行錯誤しながら、最適な原材料と製法を見つけ出す過程は、見ているこちらも喜んだり残念がったり。ユーモアだけなく、戦時中に冤罪で憲兵に拷問された夫が、不屈の精神で無実を訴え続けた姿も強く記憶に残る。
主題歌『あなたとトゥラッタッタ♪』ドリカム

7.あまちゃん (2013)能年玲奈
大友良英さんが作曲した陽気なオープニング曲を聞くだけで元気が湧いた!とにかくよく笑った作品で、コミカルなシーンの多さは歴代トップでは。海女からアイドルへという意表を突くストーリーは最後まで楽しめた。アイドルの苛烈な生き残り競争を知り、いやはや大変な業界だと。放送後の同年の紅白で、薬師丸ひろ子さん含め皆が歌ったのは胸熱だった。『あまちゃん』大ヒットのお陰で、それまで朝ドラを見なかった層が視聴するようになり、以降の『ごちそうさん』『花子とアン』『マッサン』も高視聴率を叩き出しており、その功績、計り知れず。ウニ丼が美味しそうだった(笑)
※朝ドラで初めて東日本大震災が描かれた作品でもある。
オープニングテーマ &『潮騒のメモリー』

8.おちょやん (2020)杉咲花
大阪・道頓堀で劇団の女優となるヒロインを杉咲花さんが熱演!朝ドラの女優さんは高い演技力の人が多いけど、杉咲さんは何かが憑依してるんじゃないかというほど演技が上手く、画面に見入った。悲しいシーンの作り笑顔とか、もうたまらなかった。イプセン《人形の家》の台詞を語る場面は伝説に。また、サイドストーリーの千之助(星田英利)と万太郎(板尾創路)の喜劇役者対決も、それだけで映画になりそうな良い話だった。劇中劇を本編に取り込む演出が見事。
主題歌『泣き笑いのエピソード』秦基博

9.花子とアン (2014)吉高由里子
英米児童文学の日本語訳を行ったヒロイン。ラジオの子ども番組の語り手となった彼女が「全国のお小さい方々」と呼びかける度に、その表現が実に可愛らしく涙腺にきた。「ごきげんよう」という挨拶も良い。そして歌人蓮子(仲間由紀恵)の駆け落ち!蓮子の夫(吉田鋼太郎)は傲慢だが切ないほど弱い部分もあり、鋼太郎さんの名演に引き込まれた。
主題歌『にじいろ』絢香

10.ひよっこ (2017)有村架純
朝ドラの主人公は実在した著名人をモデルにすることが多いけど、ひょっこのヒロイン・みね子は、ごく普通の一般人。上京して町工場で働いたり、洋食店のホール係になったり。それだけに親しみやすく、彼女が壁にぶち当たると応援したくなる。突然始まるミュージカル・シーンが楽しかった。ビートルズの大ファンでいつも陽気な叔父が、先の大戦で日本陸軍史上、最も悲惨で無謀とされるインパール作戦(死者3万の大半が餓死)の生還者とわかり、凄絶な過去に驚愕した。ビートルズは叔父がインパールで戦った相手・イギリスの出身。「ビートルズが好き」という叔父の言葉の重みよ。
主題歌『若い広場』桑田佳祐


次点.なつぞら (2019)広瀬すず
記念すべき朝ドラ第100作。ヒロインはアニメーターで、往年の名作子ども劇場のアニメを彷彿させる作品を制作。アニメが完成するまでの全行程を朝ドラで見られるとは!若き日の宮崎駿さんをモデルにしたような若者もいて、わくわくしながら鑑賞。戦災孤児のヒロインを孫のように見守った北海道の牧場主役・草刈正雄さんが心に残る演技。
主題歌『優しいあの子』スピッツ

他にも「カーネーション」(2011/尾野真千子)、「ちりとてちん」(2007/貫地谷しほり)、「ごちそうさん」(2013/杏)など名作があるけど、僕は墓巡礼で離日中だったりでフル視聴できなかったため、ベストには入れず。全部通して見たら、順位も変わってくると思う。




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