★名盤誕生!!レディオヘッドの新譜『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』を聴く!! 全世界で無数のロック・バンドが活動しているけど、最高のバンドとなると意見が 分かれるもの。でも、それを奇跡的に一致させたバンドがある。60年代のビートル ズ、80年代のU2がそう。作品の質、セールスの両面で頂点に輝いていた。じゃあ 現在のトップ・バンドは? 97年以来洋楽ファンの意見は「完全に一致」している。それは英のレディオヘッド だッ!この5人組は97年に3rdアルバム『OKコンピューター』で世界のロック・ キッズをノックアウトして以来、浮き沈みの激しいロック界で5年間も「世界最高の バンド」(王者)として君臨している。 3本のギターが奏でる終末感の漂うメロディー、高い文学性を持った歌詞、ヴォー カルのトム・ヨークの切ないヴェルベット・ボイス!他のザコバンドとは音の深さの ケタが違う。そんな彼らが2年ぶりに6枚目のアルバム『ヘイル・トゥ・ザ・シー フ』(盗っ人にヒョウを降らせろ)を発表した!この全世界待望のアルバムをさっそ く聴いてみた!めちゃ良かった!もう訳わかんなくなるほど鳥肌! レディオヘッドがデビューから一貫して表現してきたものは「絶望」だ。彼らは全力 でリスナーを暗闇に放り込む。彼らの曲にはロックによくある「今夜はカワイイ あの娘と酒呑んでハイな気分だぜ!ゴキゲンなドライブに繰り出そうぜ!」みたい な馬鹿馬鹿しいモノは一曲もない! トムは語る。「アルバム・タイトルにあるシーフ(盗っ人)はブッシュの意味もある けど、それだけじゃない。シーフは人にとり憑いて悪へとマインド・コンロトール する存在なんだ。“自分は完璧に正しいことをやっている”、そう固く信じ込ませ て、何千人もの人々に苦しみを引き起こしているものがシーフなんだ。アルバム には静かな曲があるけど、それはもの凄く怒っているんだ。怒りすぎてもう言葉が 出てこない、それで静かに聴こえるだけさ」。 この新譜のライナーノート(山崎洋一郎著)が素晴らしかったので、以下に要約。 「ここには99%の絶望が描かれている。では残りの1%は“希望”か?ノー、そん な子供だましはない。トムは絶望を見、描くことに徹し、残りの1%に関しては 一切関知していない。ノーコメントなのだ。なぜか?それしか方法がないからだ。 だが、彼はこの残った絶望以外の1%の存在を全力で示唆する。この1%をどれ だけ確かな存在としてリスナーに実感させるか、それをレディオヘッドは試みて いるのだ」。 どれも良い曲だけど、特に印象に残ったものを。 2曲目『スィット・ダウン。スタンド・アップ』のグルーヴ感は圧倒的!何回聴いて も大興奮してしまう。壮絶ッ! 7曲目『ウィ・サック・ヤング・ブラッド』は彼岸の世界から曲が聴こえるようで、 その不気味さにゾクゾク。 9曲目『ゼア・ゼア』はシングル・カットされたキャッチーな曲。これぞメランコ リー・ロック。黄昏感がたまらない! 10曲目『アイ・ウィル』と11曲目『ア・パンチアップ・アット・ア・ウェディン グ』は切れ目なくつながったバラード調のメッセージ・ソング。トムの言う“怒り すぎて静かな曲”だ。『パンチアップ』の冒頭はビートルズの『アビーロード』後半 と雰囲気が似ている。渋すぎ。 13曲目『スキャッターブレイン』は哀しみの極み。トムの声が心を震わす。 最後の曲『ア・ウルフ・アット・ザ・ドアー』は3分21秒の短い曲だけど、ラスト にふさわしい宇宙的な広がり感を持つ超名曲!この曲は1時間リピート再生 してても飽きない! 全14曲が鳴り終わったあと、部屋を深い静寂が包んだ。これまでの彼らのアル バム同様、孤独な底なしの暗闇の中に取り残されたが、今までと違い“絶望 以外の何か”が確かに心に生まれた気がした。 |
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