《2014年おすすめ展覧会 特選19本立て!》

今年度にチョイスした展覧会は19本。目玉は秋の『日本国宝展』(東京国立博物館)と、修復が終わった「鳥獣戯画」全4巻の一挙公開(京都国立博物館)。宝塚歌劇100年を記念した展覧会も各地を巡回する。個人的には菱田春草の代表作が一堂に会する生誕140年展が楽しみ。公式WEBがある場合はリンクも貼っているので、ぜひ鑑賞の参考に!
※美術館&博物館は、過去の実績、交通の便などを考えて、以下の24館を中心に年間スケジュールをチェックしました。

《以下、すべて2014年5月14日時点の公式サイトから》
札幌芸術の森美術館 15年3月29日まで発表
東京国立博物館 14年12月7日まで発表
国立新美術館  14年10月20日まで発表 
国立西洋美術館 15年1月12日まで発表
東京国立近代美術館 15年5月17日まで発表
東京都美術館   15年3月15日まで発表※同美術館による芸術家弾圧事件は実に残念
Bunkamura ザ・ミュージアム 14年12月14日まで発表
江戸東京博物館 15年5月17日まで発表
サントリー美術館 15年3月1日まで発表
出光美術館    15年3月29日まで発表
東京芸大美術館 14年6月22日まで発表
愛知県美術館 15年4月5日まで発表
京都国立博物館 15年4月7日まで発表
京都国立近代美術館 14年11月16日まで発表
京都市美術館  15年5月10日まで発表
国立国際美術館 15年3月22日まで発表
大阪市立美術館 14年12月7日まで発表
大丸ミュージアム梅田 14年6月2日まで発表
奈良国立博物館 15年3月15日まで発表
奈良県立美術館 15年3月15日まで発表
神戸市立博物館 15年5月10日まで発表
兵庫県立美術館 15年5月24日まで発表
九州国立博物館 15年3月1日まで発表
福岡県立美術館 15年3月15日まで発表
毎年のように国立新美術館、東京芸大美術館、京都国立近代美術館はスケジュールの公開が遅れている。秋以降の予定が出ないのは、単純に開催内容が未定なのか、それとも人員がいないのか。私企業の美術館の方がまともに宣伝活動をしている。


●開催日順にピックアップ!!

★『開館60周年 特別展〜序章』藤田美術館(3/8-6/15)関西
数年に一度しか公開されない国宝茶碗「曜変天目茶碗」が開館60周年を記念して展示される!漆黒に映える瑠璃色の宇宙!涙モノの美しさ…必見です。
1088件の国宝(13年時点)のうち、焼き物(茶碗)で指定されたものはわずか8件のみ。東京・静嘉堂文庫美術館の曜変天目も傑作だけど、美しいというより“妖しさ”が全面に出ている。京都の曜変天目は青より黒が強くて地味な印象。銀河系のイメージに最も近いのが大阪・藤田美術館の曜変天目と思う!
http://fujita-museum.or.jp/exhibitions.html





茶碗の中に“天の川”が見える。
人間が作ったものとは思えない。
次の公開は2年後、或いは3年後かも。
足を運べそうなら、ぜひ大阪の藤田美術館へ!

※画像は日経から。高画質!

★開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展『栄西と建仁寺』東京国立博物館(3/25-5/18)関東
日本に禅宗(臨済宗)を広め、京都最古の禅寺「建仁寺」を開創した栄西禅師の800年遠忌にあたり、ゆかりの宝物を一堂に集めた展覧会。最大の見所は、俵屋宗達の最高傑作・国宝「風神雷神図屏風」!海北友松筆の重文「雲龍図」もド迫力。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1632

★『鎌倉の仏像〜迫真とエキゾチシズム』奈良国立博物館(4/5-6/1)関西
鎌倉国宝館が所蔵する仏教彫刻と仏画に加え、近隣寺院の仏像も一堂に展示。関東の外で名品がまとめて展示されるのは初めて。特に鎌倉東慶寺の流麗な美仏・水月観音がお出ましになるのは有難すぎる!
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2014toku/kamakura/kamakura_index.html

  池に映った月を愛でる水月観音。このリラックス感が良い!

★『日本の美・発見IX 日本絵画の魅惑』出光美術館(4/5-6/8)関東
出光美術館が誇る日本絵画の名品を8年ぶりに一挙公開。喜多川歌麿、長谷川等伯、能阿弥、田能村竹田、酒井抱一等々。
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/highlight.html

★『近衛家の家宝』九州国立博物館(4/15-6/8)九州
平安中期に世の春を謳歌した藤原道長で知られる藤原氏の嫡流・近衛家。ユネスコの世界記憶遺産に登録された道長の日記「御堂関白記」(国宝)のうち自筆本六巻・古写本二巻を公開。歴代天皇の宸筆(しんぴつ)や、「寛永の三筆」の近衞信尹(のぶただ)にもスポットをあて、近衞家伝来の名宝を紹介。
http://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s35.html

★特別展『キトラ古墳壁画』東京国立博物館(4/22-5/18)関東
奈良県明日香村のキトラ古墳の極彩色壁画を、村外で初めて特別公開。「四神(しじん)」のうち白虎(びゃっこ)・玄武(げんぶ)・朱雀(すざく)、「十二支」のうち獣の頭に人の体を持つ子(ね)・丑(うし)を展示。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1646

★特別展『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』
神戸市立博物館(4/26-6/22)関西
北九州市立美術館(7/12-8/31)九州
上野の森美術館(9/13-11/9)関東
ボストン美術館が誇る世界屈指の北斎コレクションが里帰り。「富嶽三十六景」「諸国瀧廻り」など代表作品約140件を展示し、70年に及ぶ北斎の画業を紹介。錦絵や肉筆画の珍品まで出品。
http://ukiyoe.exhn.jp/

★『篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE』札幌芸術の森美術館(4/26-6/15)北海道
1950年代後半から写真の第一線を走り続ける篠山紀信。これまで美術館での回顧的な展覧会を拒み続けてきた篠山が満を持して世に問う、大規模な個展。50年間の写真の中から、とびきり「写真力」のある作品を紹介。
http://www.stv.ne.jp/event/kishin/index.html

★特別展『軍師官兵衛』江戸東京博物館(5/27-7/13)関東
戦国時代末期、信長、秀吉、家康の三英傑に重用され、乱世を生き抜き福岡藩52万石の礎を築いた天才軍師・黒田官兵衛。あり余る才能ゆえに、主君から警戒され恐れられた男の生涯を、ゆかりの品や歴史資料からたどる。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/2014/05/index.html

★『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』国立新美術館(6/18-9/1)関東
伝説のロシア・バレエ団「バレエ・リュス」は、20世紀を代表する画家ピカソやマティス、同世紀を代表する作曲家ストラヴィンスキー、ファッション界の革命児ココ・シャネルが関わった。多くの前衛アーティストたちが手がけたコスチュームを大規模に紹介する日本で初めての展覧会。
http://www.tbs.co.jp/balletsrusses2014/

★『宝塚歌劇100周年記念 宝塚歌劇100年展〜夢、かがやきつづけて』
博多阪急(7/9-7/22)九州
兵庫県立美術館(8/5-9/28)関西
東京国際フォーラム(12/6-12/28)関東
1914年4月1日の初公演以来、人々に夢と感動を与え続けている宝塚歌劇100周年を記念して開催。多くのスターと名作を世に送り出してきた華麗なる宝塚歌劇の世界を紹介。大階段、オスカルの部屋など再現。
http://www.nikkei-events.jp/takarazuka100/

★『オルセー美術館展 印象派の誕生』国立新美術館(7/9-10/20)関東
「印象派の殿堂」として知られるパリ・オルセー美術館から、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌ、コロー、クールベら珠玉の絵画84点が来日。あのミレーの『晩鐘』も来る模様!
http://orsay2014.jp/

★『ホイッスラー展』京都国立近代美術館(9/13-11/16)関西
イギリスで活躍したアメリカの画家ホイッスラー(1834-1903)。印象派や日本の浮世絵版画の影響をうけ、詩情ある独自の画風を打ち立てたホイッスラーの風景画・肖像画を展示。

★『菱田春草展』国立近代美術館(9/23-11/3)関東
近代美術の草創期に活躍し、36歳の若さで亡くなった菱田春草の生誕140年記念展(約100点展示)。春草の作品は近代芸術家の中で最多となる4点が重要文化財に指定され、それら「落葉」「王昭君」「賢首菩薩」「黒き猫」がすべて集結。中でも「落葉」は連作5点が揃って出品されている。
http://shunso2014.jp/index.html

  静けさがたまらない『落葉』

★『ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展』京都市美術館(9/30-11/30)関西
19世紀後半に西洋で大流行した日本美術がジャポニスムという潮流を生んだ。モネの大作「ラ・ジャポネーズ」をはじめ、ボストン美術館の所蔵品より厳選された絵画、版画、素描、写真、工芸など約150点を紹介。
http://www.boston-japonisme.jp/top/

★修理完成記念『国宝 鳥獣戯画と高山寺』京都国立博物館(10/7-11/24)関西
修復が終わった「鳥獣戯画」全4巻を一挙公開!平安時代末期に描かれた日本のアニメーションの原点。※全巻がまとめて公開される機会はめったにないです。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/pdf/20141007_kosanji_pre_pink.pdf

★『日本国宝展』東京国立博物館(10/15-12/7)関東
「祈り」をテーマに、絵画・彫刻・工芸・典籍等の国宝を展示。日本文化形成の精神を見つめ直す壮大な試み。展示される作品はすべてが国宝。まさに「日本文化の粋」が集結する展覧会。期待大!
http://kokuhou2014.jp/

★特別展『語り継ぐココロとコトバ・大古事記展〜五感で味わう、愛と創造の物語』
奈良県立美術館(10/18-12/14)関西
日本現存最古の書物「古事記」。当展覧会では古事記を題材とした美術・芸能作品、古社の神宝、考古・歴史資料などを紹介。

★『ガウディ×井上雄彦〜シンクロする創造の源泉』兵庫県立美術館(2015.3/21-5/24)関西
アントニオ・ガウディの偉業を貴重な資料で紹介するとともに、人気漫画家・井上雄彦が鋭い観察力で“人間・ガウディ像”を描き下ろし。

いざ美術館へ!ビバ芸術!!




〔美術館は芸術家の表現の自由を権力・圧力から守るべきもの〕

人の一生は短い。でも、芸術家のおかげで生涯に何度も感動を体験でき、生の喜びを感じることが出来る。僕は芸術家を心からリスペクトしている。それだけに、2014年2月に東京都美術館が展示中の作品について、“政治的”という理由で作家に手直しを強要したことに絶句した(従わねば作品撤去と通告)。
美術館側が問題にしたのは「現代日本彫刻作家連盟」代表の造形作家・中垣克久さん(70)の作品「時代(とき)の肖像−絶滅危惧種」。竹を直径約2メートル、高さ1.5メートルのドーム状に組み上げ、星条旗や日の丸をあしらい、秘密保護法の新聞の切り抜きや、「憲法九条を守り、靖国神社参拝の愚を認め、現政権の右傾化を阻止」などと書いた紙を貼り付けたものだ。
70歳の表現者が、安倍氏の強権政治に民主主義の危機を感じ“絶滅危惧種”と名付けた本作。作家にとっては貼り紙を含めて完成作品だ。
いろんな意見を人々が持っているのが健全かつ成熟した民主国家であり、誰もが同じ意見の国なんて独裁者による洗脳国家だ。日本は憲法で心の自由が保障された近代市民国家のはず。芸術家にとって表現の自由は、それがなくては活動できない、最も大切なもの。自身の存在意義にかかわる死活問題。市民にとっては、最初に弾圧される表現者を守ることが、後々、自分自身を守ることに繋がっていく。

今回の東京都美術館の圧力騒動をより深刻にしているのは、美術館が右翼から具体的な脅迫を受けたのではなく、美術館側の“自主規制”によるものということだ。同美術館の小室副館長いわく「こういう考えを美術館として認めるのか、とクレームがつくことが心配だった」。政権や右翼が介入しなくても、国民が萎縮効果により自発的に黙ってくれる。まさに今の時代を象徴している。
クレームがついてもいいじゃないか。芸術とはそういうものだ。昔から、様々な芸術家が絵筆や音楽を武器に権力に抵抗してきた(ピカソ『ゲルニカ』、ベートーヴェン『第九』、ボブ・ディラン『戦争の親玉』など)。むしろ、圧力団体の抗議に対して、身体を張って作家を守るのが美術館の役目じゃないのか。

中垣氏は「長年の創作活動で初めて。自分の作品を改変するのは、身を切るようにつらいことだ。あまりに暴力的な物言いで驚いている」と語る。さぞかし無念だったろう。…それにしても、なぜ日本の三大美術団体、「日展」「院展」「二科展」の大御所会員は、同じ芸術家仲間を守るために立ち上がらなかったのか。芸術家から表現の自由を奪うことは極刑の宣告に等しいと分かっているはずなのに…。権威ある人々が沈黙し、中垣氏をある意味において見殺しにした現実を、僕は文芸研究家の端くれとして哀嘆すると共に、恐怖と危機感を覚える。自分の作品にメッセージを込めて咎められるなど、まるで戦前じゃないか。二度とこのような前例を作ってはいけない。
(参考記事:東京新聞2014年2月19日朝刊)








中垣克久さんの作品「時代(とき)の肖像−絶滅危惧種」。
「日本病気中」という文字が見え、鬼気迫るものがる。
ドームの中には星条旗があるといい、これは独立国で
ありながらアメリカの言うがままになっている現状への
皮肉だろう。



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