【日本はもっと素敵な国になる!欧米に可能なら日本にも
可能のはず〜残業ゼロが常識になる社会へ】
 ※和民社員過労自殺の件

国際競争してるのは日本だけじゃない。それなのに日本だけ延々とサービス残業しないと立ち行か
ないなんて、そんなに日本の経営者も労働者も無能なのか?そうではないはずだ!(2010.7.6)

ネット掲示板を見ていると、派遣労働者を残業でヘトヘトになった正社員が叩いていたり、サービス残業の長さを競う
“不幸自慢大会”と化している場に出合うことがある。本来は立場の弱い労働者同士が団結しなきゃいけないのに…。
こういう時、僕はいつも米国の黒人詩人アミリ・バラカ(旧名リロイ・ジョーンズ)の次の言葉を思い出す。


●黒人詩人リロイ・ジョーンズ(現アミリ・バラカ)の言葉

奴隷は、奴隷の境遇に慣れ過ぎると、
驚いた事に自分の足を繋いでいる鎖の自慢をお互いに始める。
どっちの鎖が光ってて重そうで高価か、などと。

そして鎖に繋がれていない自由人を嘲笑さえする。
だが奴隷達を繋いでいるのは実は同じたった1本の鎖に過ぎない。
そして奴隷はどこまでも奴隷に過ぎない。

過去の奴隷は、自由人が力によって征服され、やむなく奴隷に身を落とした。
彼らは、一部の甘やかされた特権者を除けば、
奴隷になっても決してその精神の自由までをも譲り渡すことはなかった。
その血族の誇り、父祖の文明の偉大さを忘れず、隙あらば逃亡し、
あるいは反乱を起こして、労働に鍛え抜かれた肉体によって、肥え太った主人を 血祭りにあげた。

現代の奴隷は、自ら進んで奴隷の衣服を着、首に屈辱のヒモを巻き付ける。
そして、何より驚くべきことに、現代の奴隷は、自らが奴隷であることに気付いてすらいない。
それどころか彼らは、奴隷であることの中に自らの 唯一の誇りを見い出しさえしている。
(1968年、NYハーレムにて)



あまり知られていないけれど、「過労死」という言葉は「KAROSHI(カロウシ)」として、そのまま世界に伝わっている。「KARAOKE(カラオケ)」「JUDO(柔道)」などと同じで、外国には代わりになる言葉が存在しないからだ。世界から見れば明らかに異常な社会なのに、日本人は日々の労働であまりに疲れ果て、社会を変革しようという気力を奪われている。
“サービス残業”という名の「無賃労働」を約半数の労働者が強要され、正当な権利である有給休暇もとることができない。しかも後者に関しては、上司が拒否するまでもなく、同僚の白い目に耐えきれなくて申請できないという悲しさ。

平日の夜に家族や友人と遊んだり、自分の趣味の為に使える時間はゼロ。限界まで働き、帰れば食事して風呂に入って寝るだけ。多くの人間をそんな生活に追い込んで、個人消費が活発になるわけがない。

※日本の首都圏労働者に多い生活パターン…職場拘束9時間+サービス残業3時間+遠距離通勤往復3時間+睡眠8時間=23時間。残りの1時間で、2度の食事と風呂、そして翌日の仕事の準備。子どもと接する時間はほぼ皆無。

働いても生活保護水準以下の暮らしという“ワーキングプア”の問題を放置すると、国家として自らの首を絞める事になる。今の年金制度は25年以上納めなければ無年金となるけど、非正社員では納めたくても困難な人が多い。健康保険料が払えない人も激増しており(4年で4倍)、早期治療なら治る病気をトコトン悪化するまで我慢するので取り返しのつかない事態になる。
既に貯蓄ゼロの世帯は3割を超え、自殺者は12年連続で3万人を越えた。将来に希望が持てない国民がこのまま増えると、社会からどんどん元気がなくなり、人心が荒廃して治安も悪化し全員が不幸になってしまう。

※厚労省によると、残業は月45時間(1日約2時間)で注意領域、80時間(1日約3時間半)で危険領域。



●先進国で最長の勤務時間なのに、どんどん低下していく日本の経済的地位



あまりに働き過ぎて、過労の疲れから非効率になってしまっている



●日本の家計は先進国の中で最低の貯蓄率!
これはもう、「自民が」「民主が」などと言ってる場合ではない



非正規雇用が激増した結果、多くの人が貯金どころではなくなった。日本人は貯金好きと
言われていたけど、今や大量消費しまくりのアメリカ人よりも少ない。日本企業は明らかに
正社員を非正規社員に入れ替えすぎ!(日本の貯蓄ゼロの世帯は3割に達している)

※図表は経済通産省が2010年2月に発表したレポート『日本の産業を巡る現状と課題』(PDF)より。



●スイスのIMDによる『国際競争力ランキング』(2010) 



かつては1位だったのに、どうしてこうなった!



●日本人、将来への「安心」は最低、「不安」は最高(2010)

国際的な世論調査会社IPSOSが世界23カ国の国民を対象に世論調査



日本人の86%が将来に不安を感じており、これは最高値!



●有給休暇をすべて取得した人の割合の国際比較(2009年、米国Expedia社による調査)





●有給休暇の取得日数(青)/付与日数(緑)の国際比較





●2008年の1人当たり国民総所得



日本人はこんなにボロボロになるまで働いているのに18位



●失業扶助制度

多くの先進国では、失業保険が切れるまでに次の仕事が見つからなかった場合、家賃など生活費を援助する制度がある。これによって低収入の職を転々とせざるを得ない状況に追い込まれず、職業訓練を行うなど、安心して次の職を探すことができる。

ポルトガル〜失業保険切れ後24ヶ月給付(失業保険の給付期間は30ヶ月)
オランダ〜失業保険切れ後24ヶ月給付(失業保険の給付期間は3年間)
オーストラリア〜失業保険切れ後無期限に給付
オーストリア〜失業保険切れ後無期限に給付
フィンランド〜失業保険切れ後無期限に給付
フランス〜失業保険切れ後無期限に給付(失業保険の給付期間は30ヶ月)
ドイツ〜失業保険切れ後無期限に給付
アイルランド〜失業保険切れ後無期限に給付
ニュージーランド〜失業保険切れ後無期限に給付
イギリス〜失業保険切れ後無期限に給付
日本〜失業保険切れ後何もなし(失業保険の給付期間は最長330日。非正規労働者の大半は90〜180日。09年末に約100万人の雇用保険が切れる)

※ちなみにベルギーは無期限に失業保険を給付(これはこれで驚愕)
※デンマークは失業扶助制度がない代わりに失業保険を4年間給付。そして職業訓練プログラムへの参加義務を給付の条件にしている。職業訓練を通して専門技術を身につけ、低賃金で不安定な仕事を転々とするのではなく、安定した高賃金の職業に就けるよう国が道を作っている。



●「最低賃金をあげると大量解雇が起きる」は本当か?



近年、イギリスは最低賃金を毎年5%以上あげているけど、失業率は逆に下がっている。
国民の購買力があがりモノが売れているんだ。最低賃金を上げると失業率が増えるというのは古い話。



●WHO発表による自殺率の国際比較
※日本の場合、変死体(自殺に認定されない)が09年に14万5千体もいる。実態は3万人よりはるかに多いと考えられる。





●国からの教育費の援助〜日本は先進国で最低レベル



公財政教育支出(対GDP比):日本は3.5%で、OECD平均5.0%を大きく下回る。
高等教育については日本は0.5%で、データの存在するOECD 加盟国(28 カ国)で最も低い。
教育にほとんどお金をまわさず、学力低下だけを問題視している狂気の日本政府。



●オフィスに椅子がなく、早く歩かないと警報が鳴るキヤノン工場
















椅子が消えたオフィス。店舗の立ち仕事と
事務の立ち仕事は疲れ方が別と思う…
床の文字は「急ごう さもないと 会社も地球も滅びてしまう」
この空間を3.6秒で通過しないと大変なことになるらしい
「偉大なる改革者」酒巻社長


キヤノン電子の酒巻社長は職場から「椅子」をなくした。酒巻社長によると、(1)会議室から椅子を撤去したことで会議への集中力が高まり、年間の会議時間が半減(2)オフィスでは立つことで社員同士のコミュニケーションが密になり、問題解決の精度やスピードが劇的に改善(3)椅子代も不要(4)椅子をなくした分スペースが節約、このように「椅子をなくすことのメリットは計り知れない」という。

「酒巻社長の説明を聞きながら工場内を歩いていくと、突然、警報(のような音)が鳴り回転灯が光った。足元を見ると、廊下に青く塗られたゾーンがあり、『5m 3.6秒』と書いてある。この5メートルのゾーンの両端にはセンサーが設置してあり、3.6秒以内で通過しないと警報が鳴るのだ。“広い工場なので移動に費やす時間がバカにならない。社員に歩くスピードを体得してもらうための仕掛け”(酒巻社長)だという」(羽野三千世)



※以下のコラムは2010年7月上旬に、サイト日記に連続アップした内容を再構成したものです。欧州礼賛が目的ではなく、日本の未来に希望を見出す為のものデス!

日本で暮らしていると長時間労働やサービス残業が普通に思え、派遣が低賃金ということも“自己責任”という言葉で片付けられるけれど、これらは世界の常識からかけ離れたことだ。僕も文芸研究家になる前は複数の会社に勤め、ノルマ達成の為の休日出勤(自主出勤で給料なし)や、連日4時間のサビ残をしている時期があった。社長の労基署対策に社員が協力し、全員が17時にいったんタイムカードを押し、それからエンドレスの仕事を続けるという絵に描いたような滅私奉公。過労でノイローゼになった同僚が寮に火を付けるという騒ぎまで起きた。


転職を決めた僕が墓巡礼で欧州を訪れると、人々はみんな定時で帰宅しており、18時を過ぎるとオフィス街の電気は消えていた。長時間労働、サビ残に慣れきっていた僕にとって、その光景は別世界のようだった。スーパーも19時に閉まってしまう。みんな、ビジネスマンも商店主も、家族や友人と過ごす時間を大切にしているからだ。北欧では平日の昼間に乳母車を押している男性も多く、長期の育児休暇を父親も取得可能なことを知った。

 

2009年6月にスウェーデン・ストックホルムで著者撮影。平日の昼間にパパ3人が乳母車を押している。
男性の育休が白い眼で見られる日本ではあり得ない光景!


僕は日本が好きだからこそ、皆がその気になれば、もっと幸せになれることを訴えたい。日本と他の先進国の労働環境の決定的な違いは次の3点!

★海外の先進国は一般的に残業がない
労働者を残業させないと利益を出せないような経営者は無能と見なされる。まして、残業させた上に賃金も払わないなどもってのほか。同様に、残業している労働者は、時間内に業務ができない役立たずと思われ、恥ずべきこととされる。一方、日本ではより長く残業することが真面目=美徳とされる。08年の各国の年間勤務時間は次の通り。



(注)近年は日本より米・伊が多く見えるけれど、日本の数字(労働省統計/毎月勤労統計調査)にはサービス残業が入っていないうえ、パート労働の女性も含んだ平均値。就業者の40%が女性であり、男性社員の実態とかけ離れている。また、従業員5人以上の事業所だけを対象におり、労働条件が整備されていない小規模事業所は除外されている。要注意!

日本…年間約1770時間(残業なしの場合)、2300時間(2時間残業)、2800時間(4時間残業のケース)
アメリカ…約1790時間
イギリス…約1650時間
フランス…約1540時間
ドイツ…約1430時間
オランダ…なんと約1390時間!
多くの日本人が2時間程度の残業を普通にしており、年間2300時間労働に該当する。その場合、ドイツ、オランダ人の約1.6倍の1000時間以上も働くことに。1000時間といえば、約42日間に相当する。同じ先進国でこんなに差が!


★多くの先進国では会社に月単位の夏休みがある(以下の数値はネット・コピペなので裏付けはまだ。でも海外の知人に話を聞くと、内容は大きく間違っていないと思う)

【海外企業の夏期休暇】
オーストラリア…1ヵ月半
スペイン…1ヶ月
スウェーデン…年齢に応じて25日から32日
オーストリア…35日
フランス…5週間+労働時間が半分になる日が2週間
ポーランド…46日 ※10年以上働いてる人は+10日
ドイツ…最低33日・最大37日
イタリア…最低32日・最大42日
ノルウェー…平日だけで25日
日本…5日(お盆)

上記の海外企業は申請すれば交代で休めるとかじゃなく、会社がまるごと休みになるんだ。大人になっても1ヶ月の夏休みがあるなんて、日本人には夢のよう。これについて「かわりに祝日の数は日本が最多」という意見がある。確かに日本には祝日が15日ある。米国12日、仏11日、伊11日、ドイツ9日、英国8日。だから何だというのだろう。祝日が多いのに年間勤務時間がトップなのは、それだけ過酷な日々を送っていることの証明でしかない。海外は有給休暇もガンガン申請している。「子どもの誕生日だから」「結婚記念日だから」と早退を願うと、却下されるどころか、上司から「おめでとう」と声をかけられる(映画にもそんなシーンがあるよね)。
また英国は8日しか祝日はないけど有給休暇は年に平均26日付与され、そのうち24日分が消化されている。ガンガン有休を使いまくっており、英国人で有休を使い切った人の割合は先進国トップの79%だ。かたや、日本はたったの8%。他国は祝日が少ない分、有休が多く、そして堂々と使い切っている。それを無視して日本の祝日の多さを語るのは経団連のミスリードだ。日本の職場で24日も有休を使う度胸のある人はそういないだろう。

★欧州では派遣と正社員の給料に差がない
EUは「同一労働同一賃金」の原則を尊重しており、先進国で正規と非正規の賃金格差がこんなに酷い国は日本だけ。また欧州の最低賃金は時給1200〜1400円であり、ヘタをすると日本の倍近い。米国の最低賃金は約820円だけど、これにチップが加算される。日本の場合、全国平均は687円。時給1000円でも年収200万まで行かないのに、行政は賃上げに消極的。
時給1000円…1000円×8時間×240日=年間192万円
時給1500円…1500円×8時間×240日=年間288万円
時給2000円…2000円×8時間×240日=年間384万円
この様に時給2千円ですら正社員の平均約500万には遠く及ばない。年収200万以下の人間は早急に救われるべきなのに、時給1000円でさえ実現しない。反対している人は時給687円で生活できるのかどうしてそんな境遇の人がいていいと思うんだ。あと、日本は東京と青森など地域で最低賃金が異なるけれど、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、韓国、そして広大な土地のアメリカさえ全国一律だ。

「サービス残業に金を払ったら中小企業が潰れる」「時給1000円にしたら次々倒産する」、そんな声もある。しかし、世の中には残業ゼロで黒字を出している企業がたくさんある。労働者をタダで働かせたり、年間200万以下で雇わなければ黒字を出せないなら、それは経営者がどこかでやり方を間違っていると考えるべきでは?国際競争をしてるのは日本だけじゃない。どうして日本だけ過労死するまでサービス残業しないと立ち行かないんだ?「他の先進国レベルの賃金を払うと会社が潰れる」って、経営者のプライドはどこにいったんだよ…。


忘れがちだけど、日本にも労働者を保護する為の労働基準法第32条がある。
(1項)休憩時間を除き1週間に40時間を超えて労働させてはならない。
(2項)休憩時間を除き1日に8時間を超えて労働させてはならない。
違反は最高で罰金30万円か6ヶ月以下の懲役。たったの30万!甘ッ!3千万でもいいくらい。この32条が順守されていれば、過労死の悲劇は起きない。でも、国内の企業が約500万社あるのに、労働基準監督官はわずか3千人のみ。3千人で500万社をチェックできる訳がなく、監視の目が全く行き届いていない。
(注)第36条では雇用主と労働組合(組合がなければ労働者の代表)との協定によって、1週40時間・1日8時間を超える労働を認めている(36協定、通称サブロク協定)。厚労省は残業時間の上限を、1週間15時間以内、1ヶ月45時間以内、年間360時間以内とつうたつを出しているが、これはあくまでも努力目標であり罰則規定はない。しかも恐ろしいことに、『特別条項』をつければ半年以内という条件で、無制限に残業させても法的に許される。
サブロク協定の有効期限は1年。毎年更新されているので、あまりに労働環境が過酷であれば、労働者側は“もう更新しない”と抵抗できる(現実的には解雇が怖くて、なかなか言えないけど…)。

厚労省は月45時間以上(1日2時間以上)の残業が続くと脳出血や心不全を発症しやすいとしている。それなのに今年4月の労働基準法の改正では「月60時間以上の残業は割増賃金を引き上げます」。なんで月45時間以上は危険領域と言っておきながら、月60時間以上の賃金の話をしているんだ!?そうじゃないだろう!?お金と命のどっちが大切と厚労省は思っているんだ。賃金引き上げを勧告しても、どうせサービス残業でゼロになるんだから、早く帰らせる方向に法整備してくれないと。たとえば「月45時間以上の残業をさせた事業者は殺人未遂罪を適用」とか。“殺人未遂”って大袈裟に聞こえるかも知れないけど、実際、08年は158人が過労死と認定されており、リアルに犯罪だと思う。
一方、労働者保護の勧告に対して、経団連は次のように抗議している「企業の労使自治や国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著」。うーん。経団連はふた言目には「国際競争力」「グローバル化」という。日産社長カルロス・ゴーンの年俸8億9千万円に関しても、“グローバル視点では決して高くない”という声が経営サイドから聞かれた。よろしい。他の先進国と同じ土俵に立つというのなら、残業なし、夏休みあり、非正規と正社員の給料は同一、これら欧州と同じルールで勝負せよ。日本だけが特別不利な条件で中国や新興国と戦っている訳じゃない。欧米だって同じ条件だ。都合の良い時だけグローバル化を引き合いに出すのはナシ!
※海外のスーパーのレジ係は基本的に椅子に座ってる。考えてみれば立ち続ける必要性はない。そういう小さなところから、待遇を海外並に改善できればいいんだけど。

ところで、欧州に問題点はないのか?次の4点はネットでよく見かける批判だ。これを検討したい。

●(1)欧州には移民という奴隷階層がおり、彼らが一般市民の生活を支えている。年間勤務時間の統計には不法移民・不法労働者の労働時間が入ってない。
→僕は墓巡礼のため、20年前から欧州各地を訪れている。郊外や地方も歩いてきた。確かに移民労働者が肉体労働やキツイ仕事をしている光景を見かける。でも、だからといって、社会を支える“奴隷階層”というほど、不法移民だらけには見えなかった。仏、伊、スペイン、ポルトガル、ギリシャ5カ国の人口は計約2億人。この地域に過去30年で定住した移民は約370万人。2億に比べれば370万なんてごくわずか。「一般市民の生活を支えている」は大袈裟すぎる。不法移民についても、08年以前の欧州は基本的に移民を歓迎していたから、大半は普通に移民してきたのでは?ここで強調したいのは、欧州各国は移民層を救済する為に失業扶助制度を設けていること。これは失業保険の加入期間不足で給付を受けられない移民等に、生活費を給付して就職を支援する制度だ。しかも、イギリス、フランス、ドイツなどは“無期限”に支給される。こういうことからも「移民を奴隷のようにこき使う」っていうイメージが僕には湧きにくい。っていうか、日本の労働者はサービス残業という美化された名前の無賃労働をしている点で、(給料をもらえる)不法移民より酷い境遇にいる気が…。
※そもそも(1)の批判の具体的なソースを探しているんだけど、納得できる資料を見たことがない。

●(2)欧州の豊かさは後進国の犠牲のうえにあるもの。旧植民地・アフリカの農業を壊滅させて自分たちの輸出農作物で市場を独占している。また、アフリカの電気や水道などライフラインも欧米の企業が抑えている。
→欧州をひとまとめにして批判するのは悪意のあるミスリードといえる。「輸出農作物でアフリカの市場独占」は本当のこと。武器もけっこう売りつけてるし、その辺は批判していかなくちゃならない。でも、“そういう国もある”と付け加えるべき。ひとくくりにして叩くのは誤り。北欧諸国は元々アフリカに植民地を持っていないし、アフリカ・マネーに頼らず高い経済力を持つ国の方が多い。このあたり、アフリカと欧州経済の関係を詳しく分析した資料が見つかれば、もっと具体的なことが書けるんだけど…。検索してもなかなか出て来ず参った。


●(3)「欧州は失業率が高い」について
→ユーロ圏の失業率は10%前後で、日本(5%)の倍もある。これは一見高く見えるけど、この数値には2つの注意すべき点がある。まず、日本はハローワークに毎月通わないと失業者認定してもらえないから、5%に働く意志のないニートは入ってない。また、自宅待機の休職者も入っておらず、経済産業省は日本の潜在的な失業率を13.7%と弾き出している。実数はユーロ圏の方がマシということに。次にもっと重要な点。オランダの失業保険給付期間が3年間、ベルギーは無期限(日本は1年だけ)というように、欧州は社会保障が充実しており、人々は無職になることを恐れてはいない。だからこそ、経営者に堂々と労働条件の改善を主張できるし、ストライキをうてるし、足元を見られることもない。日本の労働者はあまりに貧弱な社会保障のため、解雇が怖くて黙ってサービス残業の命令に従うしかない。うーむ!
※“失業率が高くなると自殺が増える”--これって当たり前だと思ってたけど、なんと「KAROSHI(カロウシ)」と同じで、日本特有の現象とのこと。スウェーデンでは1992年の金融危機で失業率が2%から10%に激増したけど、自殺者は減り続けている。手厚い失業給付が人々を絶望に追い込まず、失業を前提にした制度設計があるためという。

●(4)「欧州は消費税(付加価値税)が高い」について
→この議論も要注意だ。日本の税率5%に対して、英国17.5%、ドイツ19%、フランス19.6%、北欧諸国25%であり、この数値だけなら日本は低く見える。しかし、多くの国は生活必需品の税率は低いかゼロ。たとえば、英国は食料品、医薬品、水道、公共交通の税率はゼロ。豪州、アイルランドも食料品はゼロ。フランスは医薬品2.1%、食料品・公共交通5.5%、ドイツは食料品・水道が7%。日本のように贅沢品から日用品まで根こそぎ課税してしまうのは国際的にも異例のことだ。さらに!(これを知って驚いたんだけど)他国の税収の内訳を見ると、英国は全税収のうち消費税が占める割合が38.4%になっている。約4割が消費税の税収だ。
皆さん、日本の場合、消費税が占める割合は何%と思われますか。英国の消費税が17.5%ということを考えると、日本の消費税は「5%しかない」のだから、僕は1〜2割と思っていた。しかし、実際は英国とほぼ同じの36.3%を占めていた!つまり、5%の消費税でも幅広く課税している為に、割合的には17.5%の英国と同じくらい税収があるということ!オーストラリアと比べてもショックな結果が。豪州は日本の2倍となる10%の消費税だけど、税収全体の26.8%を占めるに留まっており、日本(36.3%)の方がずっと重い負担になっていた。今の税率5%でも、けっして日本人の消費税負担が軽いわけじゃないんだ。表面の数字だけ取り出して「欧州レベルの社会保障実現のために消費税をあげるべし」という、政治家や財務省の意見を鵜呑みにしないように。

※ペルー在住の方から、「途上国のペルーでも夏は1カ月休暇制ですよ。時給は日本の半分ですが、サービス残業はあり得ないし、遊びながら仕事してます。今日スーパーに行ったら、みんなワールドカップを見ながら仕事してました(笑)」とメールを頂きました。目からウロコです。海外にお住まいの読者の皆さん、仕事に関するご当地の情報を頂けると助かります! メール欄

次は未来に希望が湧く一番大事な話。これを最後に伝えたくて書き連ねてきた。皆さんに是非見て頂きたい短い動画が。先進国で最も労働時間の短い国、オランダのワークシェアリング(10分57秒)を伝えたもの!ワークシェアリングとは、労働者同士で仕事を分け合うこと。たとえば1人が10時間働いて片付ける仕事を、2人で5時間ずつ行うというものデス。
オランダは1983年頃、14%という高い失業率に喘いでいた。それが2001年にはわずか2.4%まで減少した!リーマン・ショック後の世界不況の中、今でもオランダの失業率は2%台だ。ワークシェアリングは仕事を分け合うため収入は少し減るけれど、皆が仕事に就けるし、労働時間が短いから家族・友人と過ごす時間や、趣味に没頭する時間も確保できる。身体もラク。家族団らんの時間がたっぷりあるおかげか、ユニセフ調査の“子どもの幸せ指数”の結果は、オランダが先進国中で1位になった。サッカーも強い(これは関係ないか、笑)。※ワークシェアリング導入で賃金が下がった分、政府は減税で庶民の家計を支援した。

こうした社会が可能になったのも、オランダでは労働法改正により「同一労働同一賃金」(パート労働者もフルタイム労働者も時給が同じ)が実現したからだ。日本の場合、パートと正社員の時給を比較すると、パートは正社員の約半分の時給しかない。オランダ政府は、パートもフルタイムも共に正社員とし、時給、昇進、雇用期間、保険制度などに、格差をつけることを禁じたんだ。さらに、労働者がフルタイムとパートタイムの間を自由に移行する権利や、労働者が週の労働時間を自分で決める権利を、法律で保護している。最初は賃金格差があったものの、10年かけて格差を撤廃したとのこと。たくさん稼ぎたい人は複数の仕事をやればいいし、独身であれば週3日働けば十分暮らせるという。 オランダは派遣労働者であっても3年間は失業手当(給与の7割)で保証してくれるし、次の仕事を見つける義務は派遣業者側にある(ウソみたいな話!)。動画に出てくる「長時間働くことよりも、いかに効率的かが重要」が印象的。企業側は人件費が増すものの、失業者が減って社会が安定するし、国民の余暇が増えて経済活動に活気が生まれるため、結果的にプラスに働く。今年発表された“国際競争力”ランキングでは、日本27位に対してオランダは12位だ。08年の1人当たりの国民所得も、日本18位に対してオランダは6位!米英独仏より上だ。

「オランダでワークシェアリングが成功したのは、人口が1360万人しかいないから、国民が一丸となって新しい勤労形態を作ることが出来た。日本はその9倍もいるから無理」という否定的な意見がある。僕は2つの理由でけっこう楽観視している。
(1)日本全体の1億3千万人という単位で考えるから難しくなる。オランダの人口は、東京と静岡の合計人口と同じ。これからは地方自治の時代だし、地方レベルでワークシェアリングを導入していけばいい。
(2)むしろ日本だからこそ1億人でも実現可能。個人主義が強いとされる欧米人に対し、日本人は“1億総ムラ社会”と言われるほど、他人との親和性を重視する傾向がある。日本人のこの特性は、ひとつの目的を持った時に団結しやすく、皆で「これからはワークシェアリングで行こう!」となった時に、世界が仰天するくらいの速さで導入が進むと思う。

僕は「大企業は悪!」とか、「経営者は敵!」なんて思っていない。社員の幸せを願っている経営者はたくさんいるし、会社が発展すれば労働者の給料も上がる。社員のモチベーションが高ければ生産性も向上する。Win-Winの方向を目指すべきだと思ってる。一方、日本の1人当たりGDPの世界ランキングが、2000年の第3位から、たった8年の間に23位まで落下しているという歴然とした事実がある。国際競争力に至っては、バブル末期の1990年は世界第1位だったのに、今年は27位まで転落している。ここから見えてくるものは何か。もう日本独自のエンドレス・サービス残業は、労働意欲を削ぎ、疲労させるだけで効率も悪く、世界に対してWin-WinどころかLose-Loseになっているということだ。
残業がなく夏休みがある他国の企業に対し、過労死を出すほどサービス残業させても負けている日本企業。しかも、国内の自殺者は12年連続で3万人を超え、自殺率は西側先進国でトップ。年収200万円以下が1000万人。貯蓄ゼロの世帯が3割を超え、今やアメリカよりも家計の貯蓄率は低い。日本の経営者も心の中では、従来の精神主義はもう通用しないことに気付いているはず。これからはサービス残業をアテにる経営から方針転換していくだろう。…でも、その時が来るまでに、あと何百人、何千人が、「カロウシ」で世を去るのか。

「サビ残は当たり前、有給休暇は甘え、出社は当然30分前」、そんな考え方を経営者じゃなく労働者自身が持っているのも、状況の改善を遅らせている要因。日本人は忍耐強く真面目。これは美徳なんだけど、それがために倒れるまで働いてしまう。この事態は国が法律で「有給は必ず消化せねばならない」「サビ残させたら即実刑」と上から命じるしかない。それくらい日本人は真面目なんだ。他人に仕事を振らずに自分で限界まで背負い込み、優し過ぎて、過労で死んでいく。
日本は四季を通して美しい国土であり、何だかんだ言っても治安は良いし、娯楽の選択肢はたくさんあるし、礼節を重んじ、情のある人が多い。芸術の分野にもオリジナリティ溢れるものがいっぱい。これで「カロウシ」が死語になり、みんなが17時に家路につき、家族団らんや自分の趣味の為にゆったり夜の時間を使えたら、どんなに素晴らしい国になるだろう。

おそらくオランダが成功していなければ、「ワークシェアリングなんて机上の空論さ。ムリムリ」って僕も思っていただろう。また、1ヶ月の夏休みが仏やスペインだけなら、「奴らは旧植民地を持ってるからな」と冷めた目で見ていただろう。でも実際は、ドイツ、イタリア、オーストリア、豪州、その他多くの国で既に月単位の夏休みが実現している。日本は資源がないというけど、欧州の国だって極端に豊かな資源を持ってる訳じゃない。他国の人間に出来て、日本人だけが出来ないとは思えない。「同一労働同一賃金」を基本としたワークシェアリングが日本経済に合うかどうかは分からない。でも、ここまで疲弊したら、試してみる価値はある。今までのやり方ではダメということが分かっているのだから。

このコラムは、どうすれば「過労死」を根絶できるのか、もっと日本は素晴らしい国になれるんじゃないか、この閉塞感が全体主義に突き進むことを回避せねば、そんな風に悩むなかで見つけた僕なりの答えです。かつての左派の労働運動は右派と対立したけれど、「同一労働同一賃金」「ワークシェアリング」は働けば働くだけリッチになるという資本主義のシステムに合致しているので、右派・左派の関係なく協力して目指せると思うし、そう思いたい。いつの日か、日本が“子どもの幸せ指数”1位になり、もっと大人の笑顔がたくさん溢れる国になるよう皆で力を合わせましょう。p(^^)q



(追記)
・以前、ネット掲示板にこんな意見があった。「サービス残業は会社が労働者から贈与されたものだから、贈与税を適用すればいい。税収上がるのが眼に見えてるから、役所もノリノリで調査するだろう」。贈与税を払うのが嫌ならサビ残をなくさなきゃならない。これはユニーク!
・日本国内の失業者数は09年時点で約350万人。公益財団法人・日本生産性本部の推計によると、サービス残業がなくなれば90万人、全ての残業がなくなれば170万人、つまり失業者の半数の雇用が創出可能とのこと。
・ワークシェアリングに関してはイギリスでも広がりつつある。これも良い記事。



●「倒れるまで働け」 過労死防止の法律さえも、労働者でなく会社側に配慮(06年4月5日 毎日新聞)

02年2月9日。内野健一さん(当時30歳)は愛知県の自動車工場で申送り書を仕上げた直後にいすから崩れ落ちる。意識は戻らなかった。亡くなる直前1カ月の残業は144時間余。「時間外業務」の解釈に隔たりがあり、今も労災と認定されていない。

先月半ば、厚生労働省労働基準局長名で「残業を月45時間以下とする」ことなどを事業主に指導するよう求める通達が出された。法的拘束力のないことを示す「努力義務」の表現が目立って増えている。これを見た現場の労働基準監督官は落胆した。「こんな指導にどこの会社が従うのか」
同省は02年、リストラで増えた過労死や過労自殺を防ぐ通達を出した。規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)のワーキンググループは昨年6月、同省の担当課長を呼び、02年通達について「事業主に対する強制力はございません」と明言させた。
一昨年8月、厚労省の検討会が臨床データを基に報告書をまとめた。月の時間外労働が100時間を超えた場合、会社が労働者に医師の面接を受けさせる。02年通達内容に法律で強制力を持たせる内容だ。
しかし法制化審議会は最終段階で「労働者の申し出があった場合」とする条件を加えた。会社側委員の「時期尚早」「企業の負担が重い」という反対意見に配慮したためだ。

元検討会委員の保原・北海道大名誉教授は「自ら進んで残業するしかない中、本人の申告を面接条件にするのは非現実的すぎる。過労死防止の最後の一線を骨抜きにした」と憤る。85年に初めて法律で認められた派遣労働者は今、250万人。旧労働省事務元次官は「当初は派遣労働の分野が無秩序状態になるのを避けるため、法律が必要という発想だったが(派遣法の改正を経て)こんなに増えるとは想定していなかった」と打ち明ける。

景気回復の陰で、労働者の権利は弱められていく。労災認定された脳・心臓疾患死や疾病は年間300件前後で推移。自殺者3万人のうち労働者は4分の1を占める。



●法人税「40%は高い」といいながら実は…ソニー12%、住友化学16%

経団連は現在40%の法人実効税率が高すぎると、25%に引き下げるよう減税を要求している。しかし、大企業は研究開発減税で大幅な恩恵を受けており、さらに海外進出を進めている多国籍企業には外国税額控除などの優遇措置があり、40%の税率は実質骨抜きになっている。
例えば、経団連会長の企業・住友化学が払っている法人課税の負担率はわずか16.6%!前会長の企業、キヤノンは34.6%。トヨタ自動車が30.1%、本田技研工業は24.5%。パナソニックが17.6%、ソニーに至っては12.9%のみ!
日本のトップ大企業の負担率は、様々な優遇措置によって30%程度であり、法人税減税の財源を消費税増税に求めるのは身勝手すぎる。

経団連の税制担当幹部・阿部泰久氏「(法人税は)表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない」「税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されている」。
阿部氏は大企業の実際の税負担率が高くない理由について二つの要因を指摘。一つは、研究開発減税や租税特別措置などの政策減税。製造業では「実際の税負担率はおそらく30%台前半」。もう一つは、大企業は「税金の低い国でかなりの事業活動を行って」いることから、「全世界所得に対する実効税率はそれほど高くない」。
------------------------------------------------------------
※研究開発減税…企業が製品開発や技術改良のために支出した試験研究費の一定割合を法人税額から差し引ける制度。研究開発費の多い大手製造業に得な制度。減税額の9割程度が資本金10億円以上の大企業。07年度決算データから推計するとトヨタ自動車は822億円、キヤノンは330億円の減税。
※外国税額控除…海外に進出した日本企業が外国で法人税を払う場合、その分を日本で払う法人税から差し引く制度。外国企業に優遇税制を敷いている途上国で法人税の減免措置を受けた場合でもその分を「払ったとみなして」控除される場合がある。(元記事

                     



●派遣社員の数 (総務省「労働力調査」より)

H12  33万人  
H13  45万人   
H14  39万人 
H15  46万人 
H16  62万人    ←小泉政権「派遣法改正」
H17  95万人
H18 121万人



●新自由主義・インチキ改革の成果=「国民所得を搾取しただけ」の景気
      国民所得  労働者報酬 企業経常利益
2000年 372兆円  271兆円   36兆円
2004年 361兆円  255兆円   45兆円
(差分) −11兆円  −16兆円  +9兆円(ここだけプラス!)



●日本の貧困世帯率ワースト2(非正社員増加が背景)

相対的貧困率ランキング(06年)
順位   国 名      相対的貧困率
〈1〉  アメリカ     13.7
〈2〉  日  本     13.5
〈3〉  アイルランド   11.9
〈4〉  イタリア     11.5
〈5〉  カナダ      10.3
〈6〉  ポルトガル    9.6
〈7〉  ニュージーランド 9.5
〈8〉  イギリス     8.7
〈9〉  オーストラリア  8.6
〈10〉 ドイツ      8.0
〈11〉 フィンランド   6.4
〈12〉 ノルウェー    6.0
〈12〉 フランス     6.0
〈14〉 オランダ     5.9
〈15〉 スウェーデン   5.1
〈16〉 デンマーク    5.0
〈17〉 チェコ      3.8

※相対的貧困率とは国民を所得順に並べて、真ん中の順位(中位数)の人の半分以下しか所得がない人(貧困層)の比率を意味する。つまり、中位の人の年収が500万円だとしたら、250万円以下の所得層がどれだけいるかということだ。

http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06072111.cfm



■欧米の常識 vs 日本の非常識■

1)派遣労働者が受け取る賃金は必ず正規以上と法定 vs 正規の半分以下

2)派遣労働が2年超だと直接雇用義務      vs   期限撤廃して無期限派遣

3)派遣のピンハネ率は10%未満と法定      vs  ピンハネ率は自由、平均30%以上

4)企業が支払う総額はガラス張り          vs  けっして派遣労働者に教えないブラックボックス

5)派遣労働者の巨大全国組合がある        vs      何も無い

6)派遣労働は事業拡大時などにのみ使うと法定 vs 正社員をクビにしてどんどん派遣に置き換えてよい



●囚人とサラリーマンを比較したブラック・ジョーク

        刑務所           日本のサラリーマン
----------------------------------------------------
労働時間  8時間厳守         大体10時間以上
----------------------------------------------------
始業時間  7時50分          8時30分〜9時
----------------------------------------------------
終業時間  16時30分         21時〜24時
----------------------------------------------------
通勤手段  徒歩数分          満員電車1時間
----------------------------------------------------
昼食     食う              食えない日がある
----------------------------------------------------
夕食     食う              食えない日がある
----------------------------------------------------
夕食後    テレビや読書など自由  仕事
----------------------------------------------------
残業     全くない           ない日がない
----------------------------------------------------
残業代    残業がないから無い   残業あっても無い場合がある
----------------------------------------------------
休憩     午前午後それぞれ15分  上司次第
----------------------------------------------------
土日祝    確実に休み         出勤する日もある
----------------------------------------------------
年数     刑罰に応じる        自動的に40年
----------------------------------------------------



●日本滞在の外国人までが過労死 (2010年7月2日 時事通信)

外国人研修制度で来日し、技能実習生として茨城県潮来市の金属加工会社「フジ電化工業」で働いていた中国人男性=当時(31)=が死亡したのは、長時間労働などによる過労死だったとして、鹿嶋労働基準監督署(同県鹿嶋市)が労災を認定する方針を固めたことが2日、分かった。外国人研修生問題弁護士会によると、外国人実習生の過労死が認定されるのは全国で初めて。同労基署は同日、労働基準法違反容疑で同社と男性社長(66)を書類送検した。
同労基署によると、同社は2008年3月1日〜5月31日、中国人男性に1月最大98時間の残業をさせ、ほか2人の外国人実習生も含め、1時間当たり400円の手当しか支払わなかったという。また、虚偽の退勤時刻が記録されたタイムカードと賃金台帳を作成、実際の時刻が記録された台帳などはシュレッダーで廃棄していた。
中国人男性は05年12月、「外国人研修・技能実習制度」で来日。同社でメッキ処理などに従事していたが、08年6月、寮で心不全になり死亡した。
男性の代理人で同弁護士会共同代表の指宿昭一弁護士は、「これは氷山の一角。外国人実習生の問題を象徴しており、二度と繰り返さないために実態が明らかになったことはよかった」と話した。
フジ電化工業は取材に対し、「本人の希望もあって、残業させてしまった」などとしている。
-------------------
ついにここまで来たか。上の記事にはひと月の残業時間が「最大98時間」とあるけど、NHKのニュースでは「140時間の時もあった」と伝えていた。140時間!毎日6時間以上の残業をしていた計算になる。実習生は働きながら日本語を学べることを期待したが、日本語学習に当てられた日は1日もなかった。また、記事では「本人の希望もあって」とあるがNHKニュースでは、過労死した中国の方が故郷の妻子に出した手紙を紹介していた。そこには「休みをとりたいのに許可されず、身体が本当につらい」「異常に残業が長い」と書かれていた。社長の証言とは正反対。この社長はタイムカードをシュレッダーにかけて偽造しており、まったく酷い話。
現在、この男性と同様に実習生として約17万人が来日している。一方、労基署から滅茶苦茶な労働環境を改善するよう指摘された研修先は、昨年だけで実に300社を超えたという。男性の弁護士は「過酷な労働で病死した実習生はたくさんいる。今回のケースは氷山の一角でしかない」と語っていた。
※09年に死亡した27人の外国人研修・技能実習生のうち、21人が中国人。



●「日本の消費税率は低い」は大ウソ (2010年06月29日 ゲンダイ)

財務省がよく使うのが、「世界でも日本の消費税率は低い」という“解説”だ。しかし、これにダマされたらダメだ。とんでもないカラクリがある。消費税を導入している国は現在、145カ国。財務省のホームページを見ると、日本と主要国の消費税を比較する資料があり、日本の5%に対して、フランス19.6%、ドイツ19%、イギリス17.5%、スウェーデン25%などとなっている。数値を見れば、日本の税率が低く見えるが、そんな単純な話ではない。

「主要国の多くは、食料品など生活必需品の税率を軽くしています。イギリスでは食料品、国内旅客輸送、医薬品などの税率はゼロ。フランスも新聞、医薬品の税率は2.1%です。アイルランド、オーストラリアも食料品の税率がゼロ。日本のようにすべての国民を対象に、日用品も贅沢品も関係なく一律に分捕る制度ではないのです」(経済ジャーナリスト)

一概に比較できない数値を“喧伝”して「増税やむなし」の雰囲気をつくろうとする財務官僚には注意した方がいい。税収(国税)に占める消費税の割合を比べると、日本の36.3%に対して、イギリスは38.4%。日本の2倍の消費税(10%)のオーストラリアは26.8%だから、日本国民の消費税負担が極端に軽いワケではない。

「『日銀貴族』が国を滅ぼす」の著者で、旧日本長期信用銀行出身の経済評論家・上念司氏はこう言う。
「米国・カリフォルニア州では家の売買に消費税はかからない。課税対象が限定されている国と、すべてに課税される日本を比べて消費税率を論じるのはおかしいのです。これは『日本の法人税率は高い』という言い方にも当てはまる。ナフサ原料の非課税(約4兆円規模)などの税制優遇があるのに、法人税だけを見て、日本の企業の税負担は大きいというのは乱暴です」

仮に消費税増税の方向に向かうとどうなるのか。
増税で財政再建した国はどこもありません。EU統合の際、財政赤字を減らすために各国が取った方法には『歳出削減』と『増税』の2通りあったが、増税を選んだのは(事実上破綻した)ギリシャとイタリアの2カ国。デフレ下の日本で増税すれば、さらにモノが売れなくなり、税収も落ち込む。官僚たちの言い分を信じてはいけません」(上念司氏)




かつて、かの松下幸之助氏(現パナソニック創業者)はこう語った--「松下は人をつくる会社です。あわせて、
家電もつくっています」
。これは経済史に刻まれる名言だと思う。1989年に氏が他界されてから、はや20年。
草葉の陰で以下の経営者の言葉をどう聞いているだろう。

【イマドキの経済人の“ありがたい御言葉"集】※ネット掲示板より

奥田 碩(日本経団連名誉会長 トヨタ自動車相談役)
「格差があるにしても、差を付けられた方が凍死したり餓死したりはしていない」

鈴木修(スズキ会長)
「土曜休んで日曜も休む奴は要らない。8時間働けばそれでいいなど通用しない。成果で報酬がでるんだ」

猿橋 望(NOVA創業者)
「労働基準法なんておかしい。今は24時間働かないといけない時代なのに」

折口雅博(日雇い派遣グッドウィル・グループ会長)
「日本で払う給料は間違いなく中国で払うより高い。労働者が、もの凄く安いコストで働いているというようには
私は思っていません」

宮内義彦(オリックス会長 元規制改革・民間開放推進会議議長)
「パートタイマーと無職のどちらがいいか、ということ」

奥谷禮子(人材派遣会社ザ・アール社長 日本郵政株式会社社外取締役 アムウェイ諮問委員)
「競争はしんどい。だから甘えが出ている。個人の甘えがこのままだと社会の甘えになる」

南部靖之(人材派遣会社パソナ社長)
「フリーターこそ終身雇用」

林 純一(人材派遣会社クリスタル社長)
「業界ナンバー1になるには違法行為が許される」

渡邉美樹(ワタミ社長)
「24時間仕事のことだけを考えて生きろ」 「人間はなにも食べなくても“感動”を食べれば生きていけるんです」

御手洗冨士夫(キヤノン会長、日本経済団体連合会会長)
「偽装請負は法律が悪い」

秋草直之(富士通代表取締役会長)
「業績が悪いのは従業員が働かないからだ」

永守重信(日本電産社長) 
「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて
人員整理するのでは意味がない」

※うーん。土日が休みでもちゃんと成長している企業がある一方で、休日返上で社員が働かないと利益が出ない
ような会社経営をしている、自分の能力に対する疑問って全然感じることってないのかな…。




【どうすれば過労死を防ぐことが出来るのか〜居酒屋チェーン『和民』女性新入社員の過労自殺と
経営者の非情さ、そして日本そのものが海外から見ればブラック企業であることについて】
(2012.2.28)

※以下のコラムは、大手居酒屋チェーンで起きた悲劇について、これまで論じてきたことを踏まえて、2012年2月に新たな考察を加えてサイト日記に書いたものです。最後の提言のワークシェアリングなど重複部分もありますが、人気企業の労使協定の危険な内容や、国際労働機関(ILO)の話題なども入っているので、そのままここにアップします。


-------------------------------------------------
ワタミ新人社員の遺書 社員研修会における渡邊氏の“ありがたい”訓示

「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」。大手居酒屋チェーン「和民 (ワタミ)」で働いていた26歳の女性社員が、悲痛な声をメモ書きし、入社から2か月後にマンションから飛び降り自殺したことが労災と認定された。厚労省 は脳・心臓疾患の危険が生じる残業時間について、月45時間(1日約2時間)の残業で注意領域、80時間(1日約3時間半)で危険領域と定めている。だが死亡女性は時間外労働が月140時間を超え、朝5時までの深夜勤務が連続1週間続き、休憩時間もろくになく、さらに貴重な休日もレポート提出やボランティア研修への参加が強制され、まったく心身を休める時間がなかったという。冒頭の言葉は自殺の1ヶ月前のもの(08年他界)。
ネットでは彼女の死に対するワタミ社長・渡邊美樹氏(前・都知事候補)のツイートに非難の嵐が起きている。渡邊氏いわく「労災認定の件、大変残念です。四年前のこと 昨日のことのように覚えています。彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できていなかったとの認識は、ありません。 ただ、 彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」。反省するどころか、真っ向から労働局審査官の方が間 違っていると開き直っている。審査官は「業務の負荷が主因で適応障害を発病し、自殺を思いとどまる力が著しく阻害されていたと推定できる」と認定している のに、渡邊社長の自己正当化の言葉の端々から“女性の弱さが原因”“サポートが評価されずむしろ自分は被害者”という思いがにじみ出ている。
労働基準法第32条は「1日に8時間を超えて労働させてはならない」と定めており、例外として雇用主と労働組合の協定がある場合はそれ以上の残業を認めて いる(第36条/サブロク協定)。ただし、サブロク協定があっても“平成10年労働省(現・厚労省)告示第154号”では残業の上限を「1週間15時間、 1ヶ月45時間、年間360時間以内」と指導しており、「1ヶ月45時間」が公の限界点だ。ところが、渡邊社長は“140時間超え”(実際は休日も仕事の 延長なのでもっと多い)という事実を完全に棚に上げ、「労務管理できていなかったとの認識はありません」という驚愕の発言をしている。さらには別のツイー トで、現在取り組んでいる海外事業に関して「バングラデシュで学校をつくります。そのことは、亡くなった彼女も期待してくれていると信じています」と、氏 が死に追い込んだ故人を利用し(恥知らずにも)美談にすり替えようとしている。一般常識と遊離したヒンシュク発言の連発。普通なら「今後はこのようなこと にならぬよう再発防止に取り組みます」と声明を出すところだけど、新入社員が過労死に追い込まれても「会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」と 言い切るのは狂気の沙汰。このような人物が都知事にならなくて本当に良かった。
しかし、僕はここで渡邊氏を執拗に個人攻撃するつもりはないし、視野を広げねば問題を根本的に解決できないと思っている。理由は明日の日記で。
※この件へのネット界の反応はコチラコチラが象徴的。

しかし、僕はここで渡邊氏を執拗に個人攻撃するつもりはない。理由は(1)飲食業界全体に長時間労働の傾向があること(2)海外から見れば日本そのものがブラック企業、この2点だ。順に説明しよう。

(1)飲食業界に蔓延する長時間労働
●2007年に居酒屋チェーンの『庄や』(大庄/東証1部上場)で働いていた吹上元康さん(享年24歳)が入社から4ヶ月後に急性心不全で急死した。この 間の残業時間は月平均112時間で厚労省の過労死ライン=80時間を超えていた。問題はそれだけではない。入社前に伝えていた月給19万4500円という のは、80時間の残業をした場合の金額であり、「本来の支給額は12万3200円」ということを吹上さんは入社3週間後の新入研修で初めて知らされた。つ まり、“大庄”は「サービス残業しないならその分給料から天引きするぞ」と、最初から危険領域80時間まで働くことを前提に給与体系を構築していたんだ。 吹上さんのご両親は同社を告訴し、地裁、高裁とご両親が勝訴しているけど、会社側の上告により最高裁の判断待ちとなっている。“大庄”については、労使協 定であるサブロク協定についても、厚労省が上限とした月45時間を大幅にオーバーする「半年を限度に月100時間」という条項を作っており、一審判決で 「労働者への配慮がまったく認められない」と糾弾されている。この批判を受け、“大庄”は2審の場で同業13社のサブロク協定を提出。同業者には月135 時間に設定した企業もあったことから、「上限100時間の残業は外食産業で一般的だ」と反論した。おそらく最高裁の判決は年内に出る。この裁判は非常に重 要だ。なぜなら、ご両親は会社だけではなく、社長など経営陣4人に対し「安全配慮を怠った」と民事訴訟を起こしているからだ。最高裁でも勝訴すると、過労死に追い込んだ大手企業・経営陣の“個人責任”が初めて確定する。有罪になれば、「80時間なんて残業にならない」「160時間〜200時間だってある」、そんな声も普通に聞かれる外食産業への影響は計り知れない。
※“大庄”の事件は会社だけなく社長ら幹部も個人的に訴えられているので詳細に書いた。他にも外食産業の過労死は多い。
●すかいらーく…2007年10月18日、非正規社員の店長が脳出血で他界。死亡直前は月200時間以上(!)の残業。すかいらーく系列では他にも『グラッチェガーデンズ』の店長が月150時間以上の残業で脳梗塞となり2004年8月15日に死亡している。
●マクドナルド…2007年10月19日、社員が勤務中にくも膜下出血で他界。直前3カ月間の残業時間は月90〜120時間。(参考URL
こういった外食業界の“常識”の中にドップリ浸かっているワタミの渡邊社長であればこそ「労務管理できていなかったとの認識はありません」と、臆面もなく 言い放てるのだろう。だが、『すかいらーく』のように店長クラスではなく、『和民』で過労死認定されたのは新人の若い女性社員。入社からわずか2カ月で死 に至ったことは業界的にも異常なことなんだと、社長にはその自覚くらい持って欲しいし、そうでなければ故人が救われなさ過ぎる。

理由(2)“海外から見れば日本そのものがブラック企業”
国際労働機関(ILO)の第一号条約(1919年採択)は「労働時間は1日8時間」と定めている。残業を求める条件は厳しく、 「3週間の平均が1日8時間を超えてはならない」としている。つまり月曜に2時間残業させたら、火曜〜金曜のどこかで2時間早退させねばならないんだ。日 本のように長時間かつ恒常的な残業は固く禁じられている。これは第一号条約であり、基本中の基本だ。
だが、日本は93年も前に採択されたこの条約を批准していない。 同条約だけではない。ILOが採択した労働時間に関する条約約10本のすべてを日本は未批准だ。ILOの元理事、中嶋滋氏いわく「一本も批准していない先 進国は珍しく、日本も早く批准すべきだという国際的な圧力がある」「もしも批准をしたら即、実態が条約違反に問われてしまう。批准しないのではなく、でき ないと言った方が正しい」。また、ILOで批准された条約の履行状況を調査する専門家委員会の横田洋三委員長(国際司法学者/元東大教授)も「ILOの国 際基準に沿って、日本の実態を変えた方がいい」と警鐘を鳴らしている。
経団連の中には長時間労働の理由を「日本人の勤勉さ」「真面目な国民性」に変換している人もいる。勤勉・真面目、その通りだが、そこにつけ込んで残業代も 払わず過労死させていることを他人事のように思ってないか。そもそも、長時間労働が“国民性”にされてしまったのは対外戦争を始めてからだ。日清戦争の2 年前、明治中期(1892年)の日本の官庁の就業時間は春(4〜6月)が8時〜16時、夏(7、8月)が8〜12時で午前だけ(!)、秋冬(9〜3月)が 9〜17時という短さで、しかも今のEU諸国のようにバカンス=約20日間の夏期休暇があった。日清・日露戦争を経て、大正後期(1922年)にバカンス が廃止され、3年後に『女工哀史』が発表され、日中戦争が勃発し、首都・南京陥落の翌年(1938年)、泥沼化していく戦況の中で夏期もフルタイムで勤務 するようになった。昔から仕事の為に家庭やプライベートを犠牲にしてきたわけじゃない。
戦前&戦後も日本人とドイツ人は勤勉な民族として世界に認知されているけど、労働者がたどった運命は正反対だ。今のドイツはEU圏でもトップを行く短い労 働時間で知られている。09年の調査では日本人が毎日2時間の残業で年間2300時間働いているのに対し、ドイツ人は約1430時間という、驚きという か、ショッキングともいえる差が出ている。ドイツの労働者には夏4週間&冬2週間のバカンスがあるうえ(交代で休暇とかじゃなく、会社がまるまる休みにな る)、週35〜40時間労働が徹底されているため、このように短い労働時間が実現した。ちなみに一人当たりのGDPは日本とさほど変わらない(2010年/日本16位、独19位)。
日独労働者の勤務時間の差“約1000時間”を8時間労働で計算すると125日分に相当する。実に日本人は年に4カ月も多く働いていることになる!ドイツ は石油が出るわけじゃないし、むしろ海洋資源は日本が圧倒的に豊富だ。同じ時代に生き、同じ先進国で、ここまで差が広がっている。長時間のサービス残業は 生産効率を落とすうえに、他人と交流する気力も時間も奪い、身も心も疲れ果てさせ、先進国では異例の高い自殺率(毎年3万人以上)の大きな要因になってい る。
過労死弁護団全国連絡会議の尾林芳匡弁護士は、パリで開催された労働法の国際会議で次のスピーチを行い反響を呼んだ。「国際競争力をつけるために、労働者を保護する規制は緩和されてきたが、どんな競争にもルールは必要だ。 労働者の生命と健康を危険にさらす競争は、不公正ではないか」。日本が真に国際社会で名誉ある地位を求めるならフェアな戦いが必要だ。相手が「1日8時 間、週40時間」という国際ルールを守っているのに、こちら側だけが掟破りのエンドレス・サービス残業では公正な競争とは言えない。資本主義の戦いは、新 しいアイデアや顧客へのサービスによって行われるべきで、従業員の待遇の悪化を競ってはいけない。労働者の命はポーカーのチップではないのだから。
※この項を書くに当たってサンケイの『過労死の国・日本/繰り返される悲劇』(5回シリーズ)をかなり参考にさせてもらった。サンケイは経団連ベッタリの記事が多いけど(原発も露骨に推進)、この特集にサンケイの良心を見た。こういう記事を書く人がサンケイにいて良かった。

●サブロク協定“特別条項”は労働者の命を絶つ斧
いまや「Karoshi(カロウシ)」という言葉は「カラオケ」「ニンジャ」のように、海外でも「カロウシ」で通じるようになった。他の先進国にはない日 本特有の死因だからだ。これまで書いてきたように、国際労働機関(ILO)は「1日8時間労働」を大原則にしているし、日本の労基法も第32条で「1日8 時間」と定めている。ところが、せっかくそう決めているのに、第36条で労使の協定(サブロク協定)があれば残業可能になったことから第32条の存在価値 が消えてしまった。
バブル崩壊までは基本的に残業代が出たので、高給が欲しい労働者にとってはサブロク協定も価値があった。ところが、今や不況で残業代が出ないのに延々と働 かされ、協定を破棄したくても解雇を恐れて労働者側は強気になれず、真綿で首を絞めるような法律と化している。
相次ぐ過労死を受けて厚労省は1998年に「サブロク協定があっても月45時間が限度」と規定したが、サブロク協定には「納期が迫るなど特別な事情がある 場合、半年以内であれば“上限なく”残業させていい」とする『特別条項』があるため、過労死の歯止めにはまったく無力。08年には外国人実習生まで過労死 する悲劇が生まれている。
サブロク協定の内容を見ると、外食産業だけじゃなく、有名な大企業が軒並みブラック企業ということが分かる。こちらの サイトでは『就職人気企業225社の年間時間外労働ランキング』を作成し、サブロク協定の上限残業時間を徹底的に調べ上げている。その結果、実に半数以上 の6割にあたる137社が、過労死“危険領域”と国が警告している80時間以上の残業を可能とする協定を結んでいたことが初めて明らかになった。ソニー、 NTTドコモ、三井物産、野村総研など50社もの名だたる大企業が上限100時間以上と規定。トヨタ、スクウェア・エニックス、ベネッセ、ユニクロ、富士 通など66社が80時間以上。その他、本田技研、日産、三菱東京UFJ銀行、日テレ、日立製作所など21社は、3カ月単位で限度を設定しているため、1カ 月に100時間を超える可能性があるという(よく調査したもの!)。
就活人気企業に含まれない有名企業も統計に加えた場合の年間ワーストも結果が 出ている。念を押すけど、厚労省は健康被害を抑えるため残業は「年360時間以内」と指導している。トップ5のワースト1位は大日本印刷の1920時間。 天文学的数字。2位が任天堂の1600時間、3位がソニーとニコンで共に1500時間。4位が三菱電機、東レ、清水建設、大成建設の1200時間、5位が 丸紅の1100時間だ。一方、これらの企業は社員の年収が非常に高いことでも知られている。つまり、フォローするならば、残業代がきっちり出ているから高 収入ということになる。健康が第一とは思うけど…。っていうか、他国ではサービス残業の強要なんて許されないのだから、残業代をちゃんと払っていることを プラス要素にカウントせねばならぬ日本の現状が書いていて辛い。ゲームメーカーの中ではコナミが月45時間以下で、任天堂の200時間と比べると良心的な ようだ。
サブロク協定は労働組合か、組合がない場合は労働者の代表が経営者と結んでおり、先のリンクでは「労使一体となって社員を死ぬまで働かせる仕組みが、大半の企業でまかりとおっている」と指摘している。
※海外の労働環境と比較した際に、馬鹿に出来ないのは通勤時間の長さ。残業時間や有休消化率(有休を使い切った人の割合は英仏独が約80%、日本は8%) と共に重要だ。なぜなら日本の通勤時間はダントツで先進国ワースト1位だからだ。主要国の片道の所要時間は米国23分、英国30分、フランス31分、ドイ ツ33分。一方、日本は男性79分、女性66分(総務省調査)。最長の千葉県は93分、往復3時間だ。欧米と3倍近い差があり、これが毎日何年も続くわけ で、膨大なロスタイムになっている。

●「Karoshi(カロウシ)」はこうして海外に伝わった
「カロウシ」を海外メディアで最初にローマ字表記(Karoshi)で伝えたのは米紙シカゴ・トリビューン。1988年11月13日、「仕事に生き、仕事 に死ぬ日本人」という見出しで日本の過労死問題を1面トップで報じ、日本の発展は「労働への狂信的な献身」「経済戦争の戦死者」などの犠牲の上に成り立っ ていることを指摘した。シカゴ・トリビューンはその記事で「椿本精工」(現ツバキ・ナカシマ)の工場班長、平岡悟さん(享年48歳)の過労死を取り上げ た。平岡さんは日勤と夜勤を1週間ごとに繰り返しながら製造ラインに立ち、度重なる早出と残業が加わり、1日当たり12〜19時間(!)の労働に従事して いた。死亡前1年間の拘束労働時間が4038時間、休憩時間を除いた年間実労働時間は3663時間という途方もない長さ(前回書いたようにドイツ人の平均 は約1430時間)。そして、88年の年始から51日間、まったく休みを与えられないまま2月に急性心不全で他界した。だが、経営トップは誰も逮捕されな かった。同社にはサブロク協定によって「残業は最長15時間まで可能」と定めていたからだ。15時間!正規の8時間と休憩1時間を加えると、なんと24時 間拘束しても違法にならない。この四半世紀前の平岡さんの死の教訓はまったく生かされることなく、『和民』『すかいらーく』『庄や』『マクドナルド』等の 従業員をはじめ、08年だけで158人が過労死・過労自殺と認定しされている。虚しい。先日は昨年5月に福島原発で心筋梗塞により死亡した労働者が初の労 災(過労死)認定を受けた。
厚労省は国民の生命を守る為に存在している。そして同省は脳・心臓疾患の危険が生じる残業時間について「月45時間で注意領域、80時間で危険領域」と定 めておきながら、上限なしの残業を認める『特別条項』の存在を認めるのは筋が通らない。かつて、僕はサブロク協定の存在もやむなしと考えていた。どこの国 も同様と思っていたからだ。でも、墓巡礼でEU圏や北欧を訪れて、残業しなくても国家が成り立っているのをこの目で見て、さらにそれらの国は国民の幸福度 指数が総じて高いレベルであることを知り、同じ人間なのになぜ日本人はサブロク協定と特別条項に過労死するまで縛られるのか、そこまでしなければ社会が成 立しない無能な民族なのか、そうではないはずだと思うようになった。西洋諸国にできて日本人に不可能なはずはない。
※日本政府は少子化対策についてあれこれ議論しているけど、そんなもの欧州トップの出生率を誇るフランスを見れば一目瞭然。特効薬はある。労働者を早く家 に帰らせること。そして多く休ませることだ。フランス人は週35時間労働(金曜が半ドン)、夏期休暇は5週間、保育園は無料。そりゃ赤ん坊も生まれてく る。
(つづく〜“では、具体的にどうすればいいのか”)

●それでは過労死防止のため具体的にどうすればいいのか
他の先進国は一般的に残業がない。労働者を残業させないと利益を出せないような経営者は無能と見なされる。まして、残業させた上に賃金も払わないなどもっ てのほか。同様に、残業している労働者は、時間内に業務ができない役立たずと思われ、恥ずべき事とされる。日本も(人命がかかっているので)早くそうなっ て欲しく、具体策を5点ほど思案してみた(サラリーマンを念頭に置いており、働くほど腕に資産が貯まると考えている職人さんはまた別)。
※当コラムの第1回でワタミの渡邊美樹社長が140時間残業させても「労務管理できていた」と主張したことや、第2回で“大庄”が「上限100時間の残業 は外食産業で一般的だ」と高裁で反論した背景には、200時間まで残業を可能にさせている任天堂や住友不動産、IHI本社(旧・石川島播磨重工)など、 もっと過酷な労使協定を持つ企業の存在があるからだろう。

【5つの改善案】

(1)労基法第36条の削除/労使協定(サブロク協定)の廃止…残業を認めた第36条が削除されれば、先進国の常識 である1日8時間が徹底される。“そんなの無理に決まってる!”“倒産する!”という人は、自分たちが北欧やEU諸国の企業に劣っていると認めることにな るので、「日本企業だって不可能ではない」という気骨を見せて欲しい。

(2)労働基準監督官を17倍に増やす…国内の企業が約500万社あるの に、労働基準監督官はわずか3千人のみ。3千人で500万社をチェックできる訳がなく、監視の目が全く行き届いていない。1人で100社を担当する状態に 持って行くためには、5万人(17倍)の監督官が必要。

(3)労働基準監督官の意識改革と権限を強化する…企業から「残業上限は月200時間」という恐ろしい労使協定が提出されても、今は「月45時間以内にし ないと危険です」と伝えるだけ。法的拘束力がない行政指導(要望)しかできない。もっと、余程のことがないと45時間を超える労使協定は受理しないという 毅然とした対応を望む。全国の労基署が過酷な労使協定であっても受理するから、経営者は「おカミのお墨付きが出た」と良心の呵責が薄れ、人員を補充せず無 理な残業でしのごうとする。労基署は過労死をなかなか認めようとしないし(認定率約50%)、経営側に近すぎる。もっと国際労働機関(ILO)がうたう労 働者保護の精神を学んで欲しい。

(4)『業務上過失致死罪』の適用…過労死が絶えないのは、これが殺人罪、重大犯罪と認知されていないことにある。日本の刑法には「業務上必要な注意を怠り人を死亡させる行為」に対して「5年以下の懲役・禁錮」や罰金刑を定めている『業務上過失致死罪』(刑法211条)が ある。これまで社員を過労死に追い込んだ経営者が同法で投獄されたことはない。最高裁で係争中の“大庄”の件も、故人のご両親が勝訴しても民事訴訟なので 懲役刑はない。慰謝料だけでは資産家の経営者にとって心理的ブレーキにならない。あえて踏み込んで言う。僕はワタミの渡邊社長は牢獄に送られるべきと思 う。これは個人攻撃で言ってるんじゃない。「大企業は悪!」とか「経営者は敵!」なんて思っていない。社員の自殺が労災と認定されたのに、残業強要を微塵 も反省していないことを表明したのはあまりに悪質で、本来なら“過失致死”ではなく確信犯も同然だ。これで何の咎めもなければ世間は渡邊イズムを認めたこ とになり、何も事態は改善されず、また犠牲者が出てしまう。

(5)ワークシェアリング(仕事の分かち合い)の導入…昨年からネット上で「日本には過労死するほど仕事があり、自殺するほど仕事がない」というフレーズを何度か見かける。社会の矛盾を見事に言い表している。明らかに仕事が一部に偏り、いびつな構造になっている。僕は2年前にオランダのワークシェアリングを紹介した動画(10 分57秒)を見て、実際にオランダの人々とも何度か交流して、是非日本も導入すべきと実感した。シェアするとは、たとえば1人が10時間働いて片付ける仕 事を、2人で5時間ずつ行うというもの。仕事を分け合う以上、給料は多少減るけれど、かわりに残業が完全になくなり、欧州で第1位の時短を成し遂げた(あ の独仏よりさらに労働時間が短い)。導入時に賃金が下がった分、政府は減税で庶民の家計を支援した。1983年頃、オランダは14%という高い失業率に喘 いでいたけど、ワークシェアリングのおかげでリーマンショック後も失業率は2%台だ。
仕事を分け合うため収入は少し減るけれど、皆が仕事に就けるし、労働時間が短いから家族・友人と過ごす時間や、趣味に没頭する時間も確保できる。身体もラ ク。家族団らんの時間がたっぷりあるおかげか、ユニセフ調査の“子どもの幸せ指数”の結果は、オランダが先進国中で1位になった。同一労働同一賃金が 法律で定められ、パートも正社員も時給は同じ。オランダ政府はパートと正社員の間で、昇進、雇用期間、保険制度などの格差をつけることを禁じ、労働者が週 の労働時間を自分で決める権利を法律で保護した。たくさん稼ぎたい人は複数の仕事をやればいいし、独身であれば週3日働けば十分暮らせるという。金銭と自 由時間のどちらを重視するのか、大切なのは生き方を“選択”できること
オランダは派遣労働者であっても3年間は失業手当(給与の7割)で保証してくれるし、次の仕事を見つける義務は派遣業者側にある(ウソみたいな話!)。動画に出てくる「長時間働くことよりも、いかに効率的かが重要」が印象的。
企業側は人件費が増すものの、失業者が減って社会が安定するし、国民の余暇が増えて経済活動に活気が生まれるため、結果的にプラスに働く。今年発表された“国際競争力”ランキングでは、日本27位に対してオランダは12位だ。08年の1人当たりの国民所得も、日本18位に対してオランダは6位!米英独仏より上だ。
日本は派遣と正社員との間で生涯賃金にとんでもない格差がある。派遣は、ボーナスも、有休も、保険も、退職金も、すべてが無いか雀の涙だ。日本はもっと良い国に変われるはず。

経団連はふた言目には「国際競争力」「グローバル化」という。日産社長カルロス・ゴーンの年俸9億円に関しても、“グローバル視点では決して高くない”と いう声が経営サイドから聞かれた。他の先進国と同じ土俵に立つというのなら、残業なし、夏休みあり、非正規と正社員の給料は同一、これら欧州と 同じルールで勝負してくれ。日本だけが特別不利な条件で中国や新興国と戦っている訳じゃない。欧米だって同じ条件だ。都合の良い時だけグローバル化を引き 合いに出すのはナシ!どれだけ金銭を得ても、健康あってのもの。厚労省が発表している健康被害の境界線「月45時間」(1日2時間以内の残業)をすべての 経営者、労働者が意識しながら社会を築けますように。

長文を最後まで読んで下さり有難うございました。



●このコラムに寄せられた疑問点やそれに対する答え。

Q.親方と呼ばれる人は、自身が猛烈に働いて技術を磨いてきたので、“これがオレ流のやり方だ”と弟子にもそれを求める。そして弟子もそれを納得し、早く高度な技術を身につけたいと思っている。ワークシェアリングはそこを壊してしまう恐れがあるのでは。人の命と同様、技術もまた失われてしまうと取り返しがつかない。実際にワークシェアリングを世の中に導入しようとするとき、そこに強引さがあってはダメ。職人や技術屋の世界では「たくさん働けば働くほど腕に資産がたまる」という伝統的な価値観がある。小さな事業主や職人カタギの人ほど「遊んでいてオマンマが食えるか」と抵抗するだろう。「他人は他人、オレはオレ」の気質の職人だからこそ、人が真似できないような高い技術を持つ人間になれる。そういう人に「海外の先進国はやっているよ」では通じないし、むしろそれを言ったが最後、いっさい耳を傾けてもらえなくなる。

A.確かに「もっと働きたい」「向上したい」という本人の意志を、無理やり法律で奪うのは問題ですね。…僕が不思議なのは、労働時間の短いドイツの家具が粗悪だとか、フランスのガラス工芸が壊滅的状況といった話を聞かないこと。働くほど腕を磨けるという事実と、短い労働時間なのに高い品質を維持している国があるという相反する事実。職業訓練制度などがしっかりと整備されているのでしょう。
いずれにせよ、中小企業がこの法制度で倒産しないように、導入の際は法人税を累進制にしたり、臨機応変に国が補助金を出すべきですね。これは非現実的な案ではなく、世界でも企業減税と抱き合わせで導入しているケースが多いです。
このコラムは基本的にサラリーマンを念頭に書いています。それは過労死がサラリーマンに圧倒的に多く、職人さんの過労死の記事を殆ど見かけないからです。おそらく親方と呼ばれる人は、技術を後世に残そうとしており、弟子を死に至らしめては本末転倒になると思っているからではないでしょうか。

Q.単に労働条件が良くなるだけでは「怠け組」が増えるだけの可能性があるのでは?

A.最近の研究で組織には「2:7:1」の法則があるとのこと。2は開拓者として何かを生み出したり世の中を動かす人、7は額に汗して真面目に世の中を支える人、そして1は(様々な事情により)他者に支えられて生きる人。まずは健全な社会を作る為に、7割の人が心にゆとりをもって生きられるようにしなくては。だから、「単に労働条件を良くする」だけではなく、この社会を国民みんなで築いているという認識を広めることが必要ですね。


背筋が凍りそうなネット記事があったので転載します!
---------------------------------------------------
★現役ブラック企業社長が、社員を安くこき使う華麗な手口を暴露!(ビジネスジャーナル/2012.10.30)

給与、勤務時間、休日など労働条件が労働法に違反している、もしくはその企業が行っている事業そのものがなんらかの法令に違反しているなど、決して他人に入社を勧められない企業のことを「ブラック企業」という。そんなブラック企業の実態に迫ってみた。

●入社して、この会社おかしいと思ったなら?
どのような会社でも、入社前、外からでは、その内情をうかがい知ることはできない。では、もしブラック企業に入社してしまった場合は、どうすればいいのだろうか。できるだけ早く、まっとうな企業に転職するしかないだろう。決して我慢して長く勤めようと考えてはいけない。なぜなら、そもそもブラック企業の経営者は、社員の人生を背負っているという発想がないのだ。労働の対価である給与もできるだけ安く抑え、なんだかんだ理由をつけて、踏み倒すことさえ厭わない。
事実、従業員30名程度を擁するあるIT企業経営者のA氏は、自らをブラック企業経営者と認めたうえで、「従業員は敵だと思っている。いかに安くこき使い。文句を言わせず、上手に辞めさせるかだ」と言い切る。従業員サイドに立ってみれば、こんな企業に長居し、忠誠を誓ったところで人生を空費するだけだ。A氏は採用時、労働時間、待遇などに文句を言わず、黙々と働きそうな「使い勝手のいい人材」のみを採用するという。A氏に詳しく話を聞いてみた。
●使い勝手のいい人間を採用して、こき使う
ーー「使い勝手のいい人材」の基準というか、見分け方は?
A氏 人の上に立とうとか、そういう野心がない人間。人に使われるしか能のない人間だ。学歴はあまり関係ない。真面目で、人を疑うことを知らず、そこそこ育ちがよくて、素直に人の言うことを聞く、それでいて責任感が強いかどうかだ。
ーー御社における社員の待遇は? 給与や、勤務時間、休日などを教えてください。
A氏 給与は月に13万5000円。残業代はない。勤務時間は一応、朝9時から夕方5時まで。昼休みも1時間ある。しかし社員はみんな、自発的に朝は8時には会社に来ている。夜も自発的に終電に乗れるまでは働いている。泊まり込みも自発的に行ってくれている。月2回は土曜日も出勤。そうしないと仕事が回らないからね。
ーー本当に、それだけの勤務時間を要するほどの仕事があるんですか?
A氏 ない。意図的に「仕事のための仕事」をつくって、長時間働かせているだけだ。

ーーなぜ、そのようなことを?
A氏 長時間働かせ、ピリピリした社内の空気に長く触れさせることで、余計なことを考えさせないようにするためだ。今の言葉でいえば「社畜」というのかな。そうすることが目的だな。
ーーそれにしても、条件面ではかなり厳しいですよ。社員の方は文句を言わないですか?
A氏 文句を言うような人間は採用していない。文句や不満を言わせないよう、社内の雰囲気を日頃からつくっている。また最初にガツンとやっているので、社員から不満だの文句だの出ない。
ーー最初にガツンとやるとは、どういうことをやるのですか?
A氏 仕事でミスがなくても、些細なことで厳しく叱責する。そしてそれをしばらく続け「このような仕事ぶりでは給与は払えない」と言う。「お前はこんなにミスが多いが、それでも給料を払ってやってる」と刷り込む。つまり経営者である私を怖いと思わせることだね。
ーーミスは徹底的に責めるというわけですね?
A氏 ミスに限らない。勤務時間中の私用メールや電話、新聞など読んでいても「私用」としてどやしあげる。これで社員へのにらみは利く。もっとも、褒めるときには褒める。「アメとムチの使い分け」も重要だ。
●劣悪な環境に慣れさせて、たまに優しくする
このIT企業経営者がいう「アメとムチ」は、劣悪な環境、雰囲気に慣れさせ、たまに優しくすることで、社員の喜びをくすぐるというものである。例えば、この企業では、労働基準法で定められた休暇の取得すら、一切認めていない。休暇が認められるのは、風邪をひいたなどの病欠時のみだ。この部分がムチである。ただし、たまに仕事量が少なくないとき、1000円程度の昼食をおごる、3000円程度の夕食をおごり、早めに帰す……これがアメだという。A氏は、「日頃から厳しくしている分、たまにある『アメ』の部分で、社員は自分が認められていると思い込む。その心理につけ込むというわけ。これで社員は私の言うことを聞く」という。
引き続き、話を聞いてみよう。
ーーもし社員が、労働基準監督署にでも告発したら?
A氏 そういうことを考えさせないために、仕事を増やし、拘束時間を長くし、にらみを利かせてプレッシャーをかけている。
●社員が定着しないための環境づくり
ーー長くいる社員の方は、やはりその方が定年を迎えるその日まで、大事にされるおつもりですか?
A氏 それはない。年齢が高くなれば、それだけ給料も上げなければならない。長くてもせいぜい5年、できれば3年くらいで出て行ってもらいたい。
ーー誰しも、せっかく就職した会社を3年から5年で退職したいとは思わないでしょう?
A氏 それは居心地がいいところなら、それでもいい。しかしうちは、まだまだそんな居心地のいい会社にできる余裕もなければ、するつもりもない。3年から5年で自発的に辞めてもらう。
ーー皆さん、そのくらいの期間で都合よく辞めてくれるものですか?
A氏 1年目、2年目で、とにかくどやしつける。ただし、少し仕事を覚えてきたら褒める。この頃が一番使い勝手がいい。でも、仕事の振り分けで、うちに長居しても同業他社で通用しそうなスキルなどは絶対に身につけさせないようにしている。それに本人が気づいて、休暇も認めていないので、転職するにはうちを退職するしかないと気づかせるのです。もちろん自発的に退職するときには、盛大な送別会はする。それが退職金代わりになるというわけだ。
ーー古株で、仕事を覚えているような方の場合は、どうやって辞めさせるのですか?
A氏 仕事の面で無視する。使い勝手がよくなると、ある程度権限を与えて、新人の指導もさせているが、些細なきっかけでいいので、新人の前で叱りつけ、それまでの権限を取り上げる。これで普通は辞めていく。
ーー起業家として、そうした経営に思うところはありませんか?
A氏 まったくない。今は一人一人が経営者という時代だ。社会保険料まで、こちらが支払って、その恩恵を受けているのだから、それで十分だろう。嫌なら自分が経営者になればいい。企業経営とは、従業員をいかに効率よく働かせるかだ。もっともそれは社員のためではなく、私の会社のためだ。そこを履き違えてはいけない。
●さっさと見切りをつけるにしても……
これでは、とても企業として発展するとは思えないのだが、ある経営コンサルタントは、こうした経営姿勢について「確かに発展はしない。しかし経営を維持するという面では、あながち間違いではない」という。
また、こうしたブラック企業、経営者の下で働いた経験のある人は、「少ないながらも貯金ができて、退職し、失業保険で食いつなぎつつ、再就職に向けた活動を行うと、労働基準監督署に告発しようという気もうせた」と話す。
もしブラック企業に入社してしまった場合、さっさと見切りをつけて退職したほうがよさそうだが、一歩間違えればドツボにハマる可能性があるという。ある労働基準監督官は、次のような本音を漏らす。
「早期退職で、きちんと仕事をしていない……、ゆえに会社に迷惑をかけたなどの理由で給与の支払いを拒んだり、逆に違約金を支払えという企業もある。あまりに労働者側に立った労働基準監督行政を行い、企業を閉鎖、倒産に追い込むと、それはそれで問題となり、我々もそうしたことを嫌う傾向がある。どのような仕事でも、給料をもらえる仕事をしている以上、従業員側が耐えてもらいたいというのが本音」
いやはやブラック企業に入社してしまうと、泣き寝入りしかなさそうだ。
(文=秋山謙一郎/経済ジャーナリスト)

★日本は男女平等度ランキングでウルトラ後進国!135カ国中、101位!(2012年)

世界経済フォーラム(本部ジュネーブ)が135カ国の女性の雇用機会・賃金、学歴、健康・長寿、政治参加の4分野を調査・比較し、社会進出や教育などの男女平等度ランキングを2012年10月に発表した。135カ国中、総合ランキング1位=性別格 差が最も小さい国はアイスランド。2位はフィンランド、3位ノルウェー、4位スウェーデン。北欧諸国は女性の社会進出が完全に定着している。主要国ではドイツ13位、英国18位、カナダ21位、米国22位。だがしかし!我が日本は、はるかに下位の101位!しかも昨年の98位から3位も後退 している。もちろんG8で最下位だ。
日本の女性は世界一寿命が長いのに、それでも総合101位なんだから、いかに雇用機会や賃金、政治参加などで酷い不平等に晒されているかがよく分かる。男性は日本の男社会を反省すべきだし、女性はもっと怒るべき。
そしてこの社会を改革するのは日本の男性にとっても良いこと。他の先進国で女性が男性並に働いている=働けるのは、会社で残業がないからだ。みんな夕方に帰るし、店も閉まる。何度も日記に書いてるけど、エンドレ スでサービス残業しているのは先進国で日本だけ。それを疑問に感じさせないよう、過労で思考力を奪い、若者には“外敵”をバッシングさせガス抜きさせている。
何度でも言う。欧州では殆どの男性が、民間も公務員も関係なく定時にあがっている。女性をまともな時間に帰宅させる社会=男女平等=男性も夕方に帰宅 できる社会。もちろん有休も完全消化。独仏なら1カ月の夏休みまである。女性の地位を101位からトップ10にランクインさせ、男性も人間らしい生活を手 に入れよう。


●あとがき
選挙の際に演説を聞いてると、「世界に尊敬される日本」「先進国の中の名誉ある地位」、そういった言葉を好んで使う政治家がいる。それなら、「カロウシ」が世界語になってしまった恥ずべき状況をなんとかしようと本気で頑張って欲しい。世界に類を見ない長時間労働が、高い自殺率の原因のひとつであることは間違いない。そもそも、残業代を組込まないと生活できない社会もおかしい。少なくともサービス残業(これも欧州ではあり得ない)をさせた経営者は、重大な反社会的行為として懲役刑にするくらいじゃないと、カロウシを根絶することはできないと思う。速やかに「過労働致死罪」を立法すべき。この意見は欧州では極論ではないし、これを暴論とか言ってるうちに、また人が死んでいく。
より良い社会を作る為に、死を呼ぶサービス残業の廃止、同一労働同一賃金の実現を!



★2012衆院選前に作成した、管理人用のおさらいコラム

日本には過労死するほど仕事があり、一方で自殺するほど仕事がない。だけど衆院選では左派の政党ですらサビ残撲滅を争点にせず、ため息が出る。日本の労働環境はサービス残業が常態化しており、「KAROSHI(過労死)」という言葉は外国でそのまま通じる。他国は代わりの言葉がないからだ。日本社会は資本主義を採用している国の中でも異常。っていうか、海外から見れば日本そのものがブラック企業。なんたって1919年(93年前)に採択された国際労働機関(ILO)の第一号条約「労働時間は1日8時間」をいまだに批准していない。同条約だけじゃない。ILOが採択した労働時間に関する条約約10本のすべてを日本は未批准。ILO元理事いわく「一本も批准していない先進国は珍しく、日本も早く批准すべき。批准をしたら即、実態が条約違反に問われるが」。
ILO憲章には「いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となる」と書かれている。日本は国全体が労働ダンピングして、海外の富を不当に奪ってるみたいなもの。ILOが採択した184条約のうち日本が批准しているのは48条約で、わずか四分の一に過ぎず、G8の各国から「未批准だらけじゃないか、このインチキ先進国」「極東の途上国」と罵倒されても反論不可能。日本の場合、残業代の未払いは2年で時効になるうえ、労基法は違反していても指摘後に応じれば罪に問われないから経営者はわざと守らない。労基署も甘々で「今から査察行きます」と電話入れてる時点でアウト。ガンガン抜き打ちしていかないと改善しない。そもそも国内の企業が約500万社あるのに、労働基準監督官はわずか3千人。計算上、1人が約1600社をチェックすることに。これで監視の目が全く行き届くわけがない(ちなみに僕も過去の職場は全員が17時半にタイムカードを強制的に押されていた。無茶苦茶なんてレベルじゃない)。
/こういうことを言うと、経団連は「労基法を遵守したら国際競争力で負ける」と言い始める。ふざけるなと。どんな競争にもルールはある。他の先進国がルールを守っているのに、日本だけがルールを無視して良い訳がない。それに、日本経済は外需が2割しかなく、基本的に内需メインの国だ。国際競争のために生活レベルを落とすなど馬鹿げている。労働者はヘトヘトだから残業しまくってるのに生産性は上がらず、むしろ労基法を守らないせいで国際競争力が落ちている。日本人が毎日2時間の残業で年間2300時間働いているのに対し、ドイツ人は約1430時間。ドイツは夏4週間&冬2週間のバカンスがあるうえ(交代で休暇とかじゃなく、会社がまるまる休みにな る)、週35〜40時間労働が徹底されている。だけど一人当たりのGDPは日本とさほど変わらない(2010年/日本16位、独19位)。
/「サビ残を払うと9割の企業が倒産する」なんて意見も見たことがあるけど、違法労働の会社が潰れてまともな労働環境でやってる会社が本来の売上を取り戻し、市場全体が正常化するだけ。サビ残させまくってる会社のせいで、まともな会社が潰れる方が問題。競争になってないんだから、違法労働の会社が出した利益は不当なものとして没収し、経営者を逮捕しないと健全な社会にならない。どうしても労基法を無視した経営がしたいなら、成熟した市民社会の価値観とは合わないから、人権無視が当たり前の中国や、どこぞの弾圧国家に渡って起業して欲しい。サビ残しないと生活レベルが落ちる?生活レベルが落ちたとしても健康や育児の方が重要に決まってる。
/昭和の高度経済成長期は、多くの家庭が夕方に家族で食事しながらTVでプロ野球を観ていた。早く帰るからベビーブームもあった。もし労基法がきちんと守られたら家族の会話が増えて家庭円満、飲食業などの内需も回るし、少子化対策になるし、過労のウツが減って医療費削減、先進国トップの自殺者も減る。こんな当たり前の事を主張しない政治家は必要ない。
/冷戦終結後も社民や共産の議席は減るばかりで増えていない。キレイごとばかり主張して説得力0だから?僕は原発事故後に明らかになった電力会社と大手メディアのタッグと同じ戦術を感じる。スポンサーに都合の悪い労基法問題は殆ど扱われない。逆に既得権益を守ってくれる連中をメディアにどんどん出すから、そういう人物が“テレビに出ている人だから信頼できるだろう”という理由で当選していく。
/最後にもう一度書く。どんな競争にもルールは必要。労働者の生命と健康を危険にさらす競争は不公正。日本が真に国際社会で名誉ある地位を求めるならフェアな戦いが必要だ。相手が「1日8時間、週40時間」という国際ルールを守っているのに、こちらだけが掟破りのエンドレス・サービス残業では公正な競争とは言えない。資本主義の戦いは、新しいアイデアや顧客へのサービスによって行われるべきで、従業員の待遇の悪化を競ってはいけない。法律違反して平気なんて犯罪者の発想だし、それで得られる利益なんて一時的なもので、結局は民衆の購買力が落ちて業界全体の利益低下に繋がるのに、そんな簡単なことが目先の欲で見えなくなってる。
僕の世代も変革のために頑張らないといけないけど、若者が「会社に殺されるような生き地獄の未来はいやだ」と結束して変えていかないと。ネットの中で弱者や外国人をバッシングして悦に入ってる場合じゃない。選挙の争点にするように持って行きましょう。
※保守のエース・田母神氏の発言「私たちはもっと権力者や金持ちに敬意を表することを国民に教えなければならない」(航空自衛隊連合幹部機関誌『翼』2004年6月号)をネットで散見するんだけど、前後の文脈が分からないので真意を測りかねている。もし全文をご存知の方は御一報頂けると助かります。安倍さん、「若者の未来を取り戻す」というならブラック企業をまともにして下さい…マジで。(既に日本人の貯蓄率はコレ



《時事コラム・コーナー》

★愛国リベラル近代史年表/日本と中国編
★愛国リベラル近代史年表/日本と韓国・朝鮮編
★愛国リベラル近代史年表/日本と台湾編
★愛国リベラル近代史年表/日本とアメリカ編
★愛国リベラル近代史年表/日本と東南アジア編
★昭和天皇かく語りき
★愛国心について僕が思うこと
★日の丸・君が代強制と内心の自由について
------------------------------
★残業ゼロが常識になる社会へ!
★地獄!ホワイトカラーエグゼンプション
★アフガン・伊藤和也さんを悼む
★パレスチナ問題&村上春樹スピーチ
★チベット問題について
★普天間基地を早急に撤去すべし
★イラク海外派兵に思う
★暴力団について
★死刑制度について
★官僚の天下りと地方自治体の闇
★障害者自立法の問題点
★映画『男たちの大和』レビュー
★マジな戦争根絶案




TOPページへ戻る