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●夫編(サラリーマンの悲哀!親父さんに優しくしてあげてね)41首
運動会抜くなその子は課長の子
ボーナス日出逢った頃の妻に逢う
貯金なし証券もなし被害なし
家建てた通いきれずに家借りた
まだ寝てる帰ってみればもう寝てる
今日帰り今日寝て今日起き今日出勤
そっと起きそっと出かけてそっと寝る
終電車どうして俺だけしらふなの
晴天がやけに空しい月曜日
忘年会ハメはずしすぎ送別会
肩たたき昔童謡今我が身
肩は社長お尻は妻に叩かれる
冷戦の妻が六法読み始め
ボーナス日妻が鵜匠の顔に見え
いい家内10年経ったらおっ家内
予定より早い帰宅で見たごちそう
帰りぎわとらなきゃよかったこの電話
ゴミの日と丸つけられた誕生日
結婚前キミと来たねが墓穴堀り
友浮気どうして妻が腹立てる
評判の愛妻弁当自作です
おならにも家長のしめし付ける音
パスポートかつら外した僕がいる
妻の友来て当てもなく家を出る
例えばの話で課長にされた俺
俺の方ばかり見て言う注意事項
オイ今日は父の日だぞと言ってみる
家族愛父働いて働いて働いて
叱られに入る扉へ深呼吸
大黒柱だと妻が外では言うてくれ
日記には上司の名前君付けで
係長遂に休まず風邪治す
「私には夫います」と妻寝言
解放をしてあげようと離婚され
気がつけば妻も会社も髪も消え
原因はストレスですねを聞かせたい
お先にと帰り飲み屋で鉢合わせ
飛んできた美人の唾は気にならず
妻にない優しい語調に弱い俺
そのギャグがなぜおもしろいと迫る父
言い負けてよかった妻の上機嫌
●女性編(強い、あまりに強い) 34首
「お父さん」やさしく呼んでゴミわたす
痩せていた証拠のスカート捨てられず
血縁がないのは家では亭主だけ
工作にシャネルの空き箱子にもたせ
妻だから運転できる火の車
何とかいう人から電話と留守の母
買いにくくなった 隣家の子がレジに
プロポーズあの日にかえってことわりたい
休日を彼と過ごす屁がたまり
初めてと言っても貴方とだけのこと
マフラーのここ迄前の彼の分
どの彼の時も最初はこの料理
二番目に好きな男といる気楽
お見合いの写真修正もう限界
急カーブ密着オヤジを突き放す
本命に食べさせたくて皆にあげ
兄さんがいるのでしょうとよく聞かれ
半額シール貼る店員の後をつけ
スカートのホックつかんでくしゃみする
いま私何を捜しにこの部屋へ
ピアスまではずしてはかる体重計
目は一重アゴ二重に腹は三重
久々の化粧に子どもあとずさり
脳みそに分けてあげたい顔のシワ
編んだのが私と知らぬ娘の彼
サヨナラをしてから続く長電話
暗証の数字は彼の誕生日
旅からの妻の手紙は敬語入り
朝ドラが変わり鼻歌変わる母
オフクロの好きなタレント役しだい
探してたハンカチが出る夏バック
髪染めて出かける妻に犬が吠え
白髪抜く妻は殺気を漂わせ
義理チョコと知ってか妻も食べている
妻ついに15号ある店見つけ
●子供編(川柳で追う成長の記録) 26首
腹の子が胸なでおろす披露宴
私って原因それとも結果なの
貧乏と知らず赤ん坊あくびする
初孫の泣き声だけの電話代
歯をとれば眼もはずしてと2歳孫
俺でさえ言えない事を孫が言い
徒競走ビリに見せじとアップ撮り
三歳をかばう五歳の黙秘権
注射以後孫は行き先確かめる
半分こ 上手に割れて姉迷い
四人目はうさぎを生んでという三女
パトカーが付いて来るよと子ははしゃぎ
廻らない寿司屋もあると子が教え
刺青を見て騒ぐ子の口ふさぐ
つないだ手オモチャ売り場で強くなる
泣かない子誰も迷子と気がつかず
喧嘩して勝った子も泣く幼稚園
百点のごほうび新しいドリル
算数をクイズと言えばやる気出し
「勉強中」これが子供のご印籠
年頃の日記にそろそろイニシャル
間違いの電話かかると娘は出掛け
門限を無駄だと思うが言っておく
恋してるらしい寝言の娘を案じ
これ以上怖くて読めぬ子の日記
イチローを越えたと二浪の息子言い
●シルバー編 21首
老人になられましたと手帳来る
お若いと言われて若くはないと知る
白髪出て抜いているうちはまだ若い
婆ちゃんはアーモンドチョコの種捨てる
飛行機は座れたかいと聞く婆ちゃん
グーを出す孫の癖知りチョキを出す
孫の名に変えて絵本を読んでやる
祖母が居て「もったいない」を孫覚え
肩叩き券不渡りにして孫帰り
おねだりの孫の電話に陰の声
単純に祖母金持ちと孫信じ
この姑いなけりゃ彼もいなかった
点滴台 花子と呼んで連れ歩く
財産は犬にと言うのがわかる気が
喧嘩の種がつきて静かな老夫婦
猫に手を貸したいくらい今はひま
恋かと思っていたら 不整脈
このハゲはかつらですよと笑わせる
家中をびっくりさせたジジのギャグ
万歩計 半分以上 探し物
誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ
●学校編 10首
答案に「お願い」とだけ書いてあり
答案にぐらいをつけてバツになり
平均点下げるのいつも僕の役
質問もできないくらいわからない
質問をしたら寝ていた事がバレ
目の前に違う教師がいる目覚め
フォークダンスあの娘の前で終わる曲
古い辞書エッチな言葉にチェックあり
検便を忘れた友に分けてあげ
稲刈りがすめば近道復活し
●様々な場面で編 40首
いらぬ事医者に尋ねて血を採られ
手を出せば顔いろ変えた占い師
ポケットの数珠に慌てる披露宴
運動会 美人に我が子見失い
お噂は聞いていますと吹き出され
なお変になって出てくる美容院
横の子をあやして泣かれ席を立つ
二番目に好きと言われて終わる恋
「絶対にヒミツ」飛びかう昼休み
乾杯のグラス持たされ三十分
失敗をアララですます新社員 上座には新人類が来て座り
待合室グリーン券を上に持つ
客が来て客ほっとする暇な店
ゲイバーで妻とそっくり酔いがさめ
サンプルが腐った色のレストラン
看板にシーフードとあるタコ焼き屋
食い逃げ追って行った男も帰らない
いい事も時には言ってる酔っ払い
勘定を払って出たら誰もいず
髭剃って美人の床屋へ行く親父
結婚の時と窓口同じ人
禁煙と見事に書けて一服す
修正液塗った上にも誤字を書き
クラクション「どけ」「ありがとう」の区別あり
方言を聞きたくわざと怒らせる
年齢欄「青二才」だと書いておく
ミスはなしそれは当然何もせず
ちょっと声変えて2度目の問い合わせ
吠えた犬だけが存在認めた日
パノラマの隅に意外なツーショット
貸した本感想いかがと催促し
日が射してこんな埃の中にいる
鬼でも来い独り暮らしはもう飽きた
もう恋はしたくないのと結婚す
趣味日舞 詳しくきけば盆踊り
王冠という大げさなビンのフタ
矛盾するような消臭芳香剤
乾電池肩寄せ合って寿命尽き
動物に動物好きとすぐにバレ
●強烈!ブラック・ユーモア編 40首
子も子だが親も親なら国も国
地球上痩せたい人と飢えた人
神様に何でお金が要るだろう
武器売って戦争させて鎮圧し
戦争は行かない人がやりたがり
修身を学んだ人の不道徳
キャスターの怒りは次のニュースまで
暴くなら不正を暴けリポーター
ニッポンのどこに惚れたか密航者
日本はまっ青だったとシャトル言い
銀行の支店があの世にあるでなし
うますぎる話見抜けぬ欲の皮
涙する苦労語るにゃ太り過ぎ
陽当たりのよいマイホーム昼は留守
親孝行したい時には職はなし
懐かしい母校の便り寄付依頼
あの娘には二度も結婚先越され
誰かじゃなくて何かに似ている人
ドラマでは私住む街左遷の地
テレビ欄号泣とある生放送
”手作り”とわざわざ付ける手芸本
解説が応援になるボクシング
今妊娠3時間よという彼女
はらはらとさせぬ男で物足りず
眉毛ない朝の彼女にやっと慣れ
お化粧というよりきみのは変装だ
株下がり何故かうれしいわたしたち
祭り後連日金魚の墓作り
霊柩車最後に乗った高級車
俺の留守便座上がっている疑惑
マザコンと言われて母に相談し
初恋が結婚後だからややこしい
相談を受けてる内につい不倫
私から連絡しなけりゃ終わる仲
勤務先電話をすれば夫休み
離婚後も同居続けるへんな仲
結論は変えぬが相談乗ってくれ
結局は夫を誘ったコンサート
損をした話は人に喜ばれ
リダイヤルされないように時報聞き
●世の真理編(世界不変の法則なり) 33首
あの世からみれば死ぬ日は誕生日
臨終を旅立ちとする人の知恵
ご自慢の系図の上に猿がいる
こんなおれでもこの世ではオンリーワン
百年後ほとんど死んでる今の人
僕の死は僕から見ればすべての死
がんばろう生きているから悩めるの
言葉にて傷つき言葉で立ち直る
悪口も上手にいえばアドバイス
思いやり思い上がりと紙一重
現代人暮らし昔のお殿様
草の名を聞いてむしるのためらわれ
雑草の名前わかると抜きにくい
犬撫でているのが唯一打開策
薬より子犬が治療した軽いウツ
嫉妬して恋していると気がついた
相合傘濡れてるほうが惚れている
モテ方に二十歳からと迄があり
なんでなの彼氏できたらモテはじめ
好きになり後から考えてる理由
追伸が本文になるラブレター
記念写真誰より自分をまず探す
待ち合わせ遠い人から順に来る
怒りから不安に変わる待ち合わせ
子に頼り過ぎた夫婦の夢哀れ
ひとりっ子手をかけすぎて手におえず
更にヤな事ありどうでもよくなった
三年も我慢したのは石の方
死ねない刑あったら一番恐いかも
一年を神よ短くしましたか
だって明日死ぬかもしれんと強引に
美術館出ればもとの世界あり
●暮らしの1ページ編 22首
爽快に起き目覚ましの故障知る
窓開けて「ワー松茸」と子に言わせ
子供等を満腹にさせ寿司をとる
この料理ホントはこうだと本を見せ
このマズさ変ってないと懐かしみ
菓子作り失敗しても何か出来
腹立てて洗う茶碗の賑やかさ
お隣がタオル投げ込むほどにもめ
ゴメンネの代わりか皿を洗ってる
「寒いわね」「冬だ」で会話終わる父母
車にはあるクーラーが家に無い
オレ粗大ゴミならおまえ危険物
整髪料まだ買いますか妻が聞く
やめる前 力を入れる肩たたき
ナイターの拍手隣家と敵味方
愛犬の寝場所でわかる季の移り
忘れ物してたまるかの十五階
ゴミ収集の前日わが家スイカの日
褒め言葉聞こえぬふりして聞き返す
湯の旅の疲れをいやす家の風呂
ああ今日のパリは雨かと言ってみた
こりゃ誰だこの歌なんだ大みそか
●しみじみ編(まるで1本の映画) 37首
我が家の灯しばらく外で眺める
この人と渋茶すすっている不思議
駅からは早足になる里帰り
たったあれだけなのに母は嬉しそう
耐えたのにやさしく言われ出る涙
ぶたれるが熱もその手で計られる
じゃーねと片手を上げて嫁いだ娘
竿一本干し物減って娘は嫁ぎ
少しだけ手をあげ我娘とすれちがい
初孫の呼吸聞かせる娘の受話器
母の日の花は枯れても捨てぬ母
音が無く風呂の夫に声をかけ
家中でだまされてやる父の嘘
「無事着いた」ただそれだけの電話待つ
まな板のリズムで朝が動き出し
「ごはんよ」とよばれることのありがたさ
父母の幼き写真見る不思議
棒グラフ伸ばしてくれた子の寝顔
あの人の姓で我が名を呼んでみる
好きと言う勇気をくれた発車ベル
恋人のモーニングコール起きて待つ
子が病んで飼い犬までがおとなしい
とび出して守られていた事を知る
その夢にあんたもいたと妻が泣く
古傷と同じドラマに席はずし
花の名を聞いてケンカの仲なおり
セールスマン息子に似ていて断れず
故郷の石につまずくハイヒール
故郷の駅ではずした鼻ピアス
しみじみと妻のイビキを聞いている
友の数あの世の方が多くなり
母の棺に亡き妹へ土産入れ
しみじみと亡夫の歳越す誕生日
亡き妻のタンスに俺のラブレター
亡夫の靴へふと足入れてみたくなり
婆さんの遺品の梅酒ほろ苦し
妻逝って可愛い壺に納まれり
以上です!
これを書いた後、特に用事も無いのに、何か久々に親へ電話してしまいました。 |
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