【普天間基地の移転問題に思う】


普天間基地は国外or県外に移設するのが筋!本土の人間は65年前の恩返しを今こそ沖縄の人々にするべき(2010.5.25)

沖縄戦の時に沖縄島を守っていた海軍司令官の大田実中将は、司令部壕で自決する前に「沖縄県民、かく戦えり」とする訣別電報を海軍次官宛に打った。そこには“軍は戦いに専念し県民のことを顧みる余裕がなかったのに、県民は軍の召集に進んで応募し戦ってくれた”と沖縄県民への感謝の言葉がある。そして、“沖縄島はこの戦闘の結末と運命を共にして、草木の一本も残らないほどの焦土と化そうとしている”と絶望的状況を報告し、訣別電報の一番最後で「沖縄県民はよく戦った。沖縄県民に対し、後世に特別の配慮を願う」と締めくくっている。それから64年。沖縄には75%の米軍基地が集中し、米軍機の墜落や騒音、米兵の暴行事件に悩まされ続けている。大田中将の遺言となった“県民には後世に特別の配慮を”という願いは実現しただろうか?

米軍が沖縄戦で使用した銃弾は約300万発というとんでもないもの。沖縄は地形が変わるほどの激しい艦砲射撃(鉄の暴風)を受けた。日本側の死者・行方不明者は約19万人。このうち現地で召集されたり戦闘に巻き込まれて死んだ県民は約12万人にのぼる(民間人は9万4千人)。人口45万のうち12万、実に県民の4人に1人が帰らぬ人となった。日本軍を支援する防衛隊には小6の少年まで動員されたという記録も読谷村に現存している。
沖縄守備隊は何度も大本営に援軍を求めたが聞き届けられず、東京の軍上層部が下した決定は「沖縄を本土防衛の捨て石にする」。本土の防衛体制を整える時間稼ぎと、沖縄で少しでも米軍の兵力を削りとり、本土上陸の敵兵を減らそうというのだ。戦略としては正しくても、捨て石にされた沖縄県民と守備隊はたまったものじゃない。

そして今、日本政府は普天間基地の移設問題で、また県民を“捨て石”にしようとしている。選挙前の公約だった「普天間基地を国外か県外に移設」が、“アメリカが怒っている”“公約は状況によって変化する”とドンドン弱腰に。
一昨年、僕は実際に普天間基地を訪れ、住宅街のド真ン中にあるのを見て、“なんて危ない場所にあるんだ!”と仰天した。実際、普天間の米軍ヘリが近隣の大学に墜落した事件も起きている。軍事評論家は「県外への移設は即応戦力としての機能に支障を来たす」としたり顔で論じているが、周囲に市街地・学校があり「世界一危険な基地」といわれる普天間をこのまま放置して良いはずがない。
何より、普天間基地は米国法では安全基準に満たないため本国では運用できない。米国内では危なすぎて使用不能な基地を、なぜ沖縄なら使用しても良いのか。酷い話だ。

普天間基地を沖縄から動かせない最大の理由として、「台湾有事の際にすぐさま介入できるから」と語られてきた。ところが、台湾の馬英九総統が米CNNのインタビューで、米国が台湾のために戦争することを「永遠に求めない」と述べた。馬総統は防衛の為に米国から武器を購入しつつも、たとえ台湾海峡が戦争に突入しても、米国が台湾のために出兵することを“永遠に”求めないというのだ(馬総統は従来の台湾指導者より中国に近い立場で知られているが、台湾人が民主的に選挙で選んだ人間)。これは普天間基地の移転問題が佳境になってきた今、非常に大きなニュースと思うんだけど、なぜか大手マスコミは伝えようとしない。

本来、米軍基地をどこに移転するか悩むのは、日本政府ではなく米国政府だ。しかし、米国は沖縄以外への移転案を拒否した。サンゴ礁を守るために、埋め立てずに杭打ちにする案も拒否。一体、米国は何様なのかと。沖縄は日本の国土だ。国際法上、日本が出て行けと言えば出て行くしかない立場にあるのに、なんでそんな偉そうな態度がとれるのか。
マスコミも問題。責められるべきは危険な基地を放置している米国政府なのに、まるで日本側に問題があるように報道している。どの国の報道機関なのかと。

台湾有事に米軍が不用となると、日本を守る抑止力としての存在価値が問題になる。米国は本当に日本を守ってくれるのか。米軍は竹島が韓国軍に支配された時に何をしてくれのか。北方領土の返還に向けて、何か効果的な圧力をかけてくれたのか。これらの問題では何の役にも立ってない。米国は日本が抜かれると本土がヤバイと思えば守るだろうけど、それはあくまでも米国自身のため。日本の領土が奪われても知らん顔だ。
思いやり予算だって、日本の負担は欧州の同盟国(NATO)の約2倍、韓国の約5倍も払ってきた。日本は1978年から合計5兆6千億円も米軍に貢いでいる。もっと米国は日本に対して謙虚であるべきだ。こうした声を押さえつけるのによく使われるのが、かつてのソ連脅威論であり、今の中国・北朝鮮脅威論だ。

僕は言論の自由を弾圧し、チベットを抑圧する中共政府が嫌いだし、最近中国海軍が日本近海を挑発的に航行することに憤っている。だけど、それでもなお「沖縄から米軍が消えると、すぐにでも中国が攻めてくる」とする意見には否定的だ。

(1)日本を攻撃すれば多国籍軍の介入を招き、北京は制圧され、中国共産党の指導部は戦犯として全員裁かれる。日本侵略=即体制崩壊。自分の保身ばかり考えている中共幹部が、120%自分の命運が尽きるのに、なぜそこまでして日本を攻撃するのか。

(2)以前なら日本の科学技術や工業技術を狙う意味もあった。もちろん、今も日本は各分野で時代の先端を行くが、中国は有人宇宙ロケットの打ち上げに成功して、この分野で日本を大きく引き離し、経済全体の規模でも今年中に日本を抜き、世界第2位の経済大国になる。今の路線で成功しているのに、たくさんの人間の命を犠牲にし、また世界中から経済制裁を受けるのに、それでも日本を攻撃する説得力のある理由が思いつかない。日本の水資源を狙うという意見もあるが、その危惧には日本から水を運搬する手間と莫大なコストの計算が抜け落ちている。多くの水源は内陸部にあり採算があわないし、至る所で日本人が徹底抗戦するだろう。日本に核を使えば水は汚染されて飲めないし、陸続きならともかく、僕には非現実的な気がする。

(3)幸運なことに日本は四方を海に囲まれている。国土自体が広大な堀を持つ城。自衛隊の戦力は、敵国まで行って攻撃するには不向きだが、防衛に特化するなら最強クラス。守るだけなら米軍がいなくても自衛隊で十分。しかも、中国には日本占領の為に必要な人員を運ぶだけの艦船がない。どんな勝算があって中国は攻撃してくるのか--。
恐怖を煽る人は、まんまと武器商人やタカ派政治家に乗せられているとしか思えない。中国の軍事予算の2桁成長や24基の中距離ミサイルの存在、北朝鮮の200基のノドンミサイルは確かに不気味だ。台湾をめぐる緊張もある。だが、そこから日本に攻めてくるまでの論理が飛躍し過ぎている。

★それから、日本側にとっても軍事衝突を避けねばならない理由がある。

(1)日本は狭い国土に55基もの原発がひしめいている。そこに一発でもミサイルが撃ち込まれたら、人が住めない土地になる。しかも、どれほど軍備を増強して対空防御を強化しても、今の技術力では高速で飛んでくるミサイルを全部迎撃する事はできない。その事実をとりあげずに、戦闘機の数や艦船の数で優劣をはかり、軍備増強を唱えるのは完全に的外れ。もうとっくに時代は変わっている。誠意ある外交でしか平和は実現しない。これ以上、軍需利権に群がる悪徳政治家や軍事産業を儲けさせることはない。

(2)日本の世界最大の貿易相手国は中国であり、もはや日本経済は中国なしでは成り立たない。また、日本の労働者の4人に1人が年収200万以下となった現在、安い中国製品がなければ生活を維持することが出来ない。※僕のデルのパソコンも、シャープのエアコン、東芝のテレビ、象印のジャー、スニーカー、ジョジョ・グッズまで中国製。

(3)少子化で若い世代が減っているのに、このうえ戦争で若者がたくさん死ねば、老人しか残らず国家として完全崩壊。

(4)核兵器がないので最終的に負ける(でも、核武装せよとは思わない)。アインシュタインは今度世界大戦になれば文明が滅ぶことを示唆し、「第三次世界大戦がどのように戦われるかは分からない。だが、第四次世界大戦が戦われる方法は知っている。それは棒きれと石でだ」と述べた。旧ソ連が開発した最強の水爆「ツァーリ・ボンバ」は、たった一発でヒロシマ型原爆の「3300倍」という狂気の兵器。人類はこんなものまで作るようになってしまった。日本には核ミサイルがない。日本はその気になれば核兵器を開発できるけど、ヒロシマ・ナガサキの惨状を誰よりも知っているから、「作らない」という選択肢を選んだ。人類を絶滅させかねない愚かな核開発競争に参加することを拒否した。日本は核を振りかざすアホな国より、誇りを持ってさらに先へ進む!

太平洋戦争で沖縄の人々は本土防衛の時間稼ぎのために死んでいった。「普天間は米国内へ無条件撤去」。日本政府が米国に求めるのはこのことだ。本土の人間は、沖縄県民に感謝し、これ以上沖縄に負担を強いるのは止めるべき。どうしても普天間の国外移設に反対なら、在住の県知事に「我が県に受け入れよ」と嘆願運動を始めればいい。「海兵隊の機動性が落ちるから沖縄しかダメ」という言葉が、どれほどごう慢か。そこには同じ日本人である沖縄の人々の苦しみを、自分の身のように理解しようとする気持ちが微塵もない。どうしても国内というのであれば平等に他県の知事がクジ引きで引き受けるしかない。“沖縄には基地ビジネスで儲けている人がいる”と主張する人は、“学校にヘリが墜落することもあるけど、基地がくれば経済が活性化する”と知事に言えばいいと思う。



【重要!】2010年5月10日追記…海兵隊出身で元CIA顧問という米国の大物政治学者チャルマーズ・ジョンソンが「日本人は団結して普天間基地の無条件閉鎖を訴えるべき」と主張した驚愕のインタビューが、ダイヤモンド・オンラインに掲載されていた!僕の持論は「普天間基地は米国内へ無条件撤去すべし」なんだけど、自説にもっと根拠が欲しく、あの基地の必要or不必要について米国側の専門家の意見を知りたいと思っていた。氏が語った内容を以下にまとめる。目からウロコ!

(1)在日米軍はすでに嘉手納、岩国など広大な基地を多く持ち、世界最大の米海軍基地(横須賀)もあり、これで十分。米国には普天間飛行場は必要なく無条件で閉鎖すべきだ。また、米国は世界800カ所に軍事基地を持つがこんなに必要ない。パワーバランスを維持するためなら、せいぜい35〜40の基地で事足りる。

(2)海兵隊ヘリ部隊の訓練は広大な敷地(普天間の約3倍)をもつ嘉手納基地でもできるし、米国内の施設で行うことも可能。地元住民の強い反対を押し切ってまで代替施設を作る必要はない。このような傲慢さが世界で嫌われる原因になっていることを米国は認識すべき。

(3)日本では中国や北朝鮮の脅威が高まっているが、日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国に最高度の悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。中国の脅威などは存在しない。それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル(100兆円※米国の国家予算は3兆ドル)以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダ(宣伝行為)である。過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。北朝鮮も攻撃が「自殺行為」になるとわかっていると思うので、懸念の必要はない。

(4)米軍再編計画では普天間の辺野古移設と海兵隊のグアム移転がセットになっているが、米国政府はグアム住民の生活や環境などへの影響を十分に調査せず、海兵隊の移転計画を発表した。そのため、グアムの住民はいま暴動を起こしかねないぐらい怒っている。グアムには8千人の海兵隊とその家族を受け入れる能力はなく、最初から実行可能な計画ではなかった。※“抑止力”の重要性を主張する一方で海兵隊の半分以上(1万3千のうち8千人)を移転させるのも矛盾。

(5)普天間基地が存在している最大の理由は、普天間の海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争い(海兵隊と空軍の予算の取り合い)。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすため。

(6)日本政府はどんどん主張して、米国政府をもっと困らせるべき。これまで日本は米国に対して何も言わず従順すぎた。日本政府は米国の軍需産業のためではなく、沖縄の住民を守るために主張すべき。歴史的に沖縄住民は本土の人々からずっと差別され、今も続いている。それは、米軍基地の負担を沖縄に押しつけて済まそうとする日本の政府や国民の態度と無関係ではないのではないか。同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。

(7)そもそもこの問題は1995年の米兵少女暴行事件(小学生女児が米兵3人から性的暴行)の後、日本の橋本首相(当時)がクリントン大統領(当時)に「普天間基地をなんとかしてほしい」ということで始まった。この時、橋本首相は普天間飛行場の移設ではなく、無条件の基地閉鎖を求めるべきだった。沖縄では少女暴行事件後も米兵による犯罪が繰り返されているが、米国はこの問題に本気で取り組もうとしていない。日本の政府や国民はなぜそれを容認し、米国側に寛大な態度を取り続けているのか理解できない。米軍基地は世界中に存在するが、こういう状況を容認しているのは日本だけであろう。もし他国で、たとえばフランスなどで米国が同じことをしたら、暴動が起こるだろう。民主党政権下で、米国に対して強く言えるようになることを期待する。(元記事リンク

---なんという心強い提言!このチャルマーズ・ジョンソン氏は、東西冷戦の終結と共に世界が軍縮に向かうと思いきや、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争と戦争が続くことから、100兆円産業になってしまった米国の軍事産業が、利益をキープするために戦争を必要とし続けると警鐘を鳴らしている。こんな人もちゃんと米国にはいる。日本のマスコミは防衛利権の中心にいる米軍制服組の発言ばかり伝えず、沖縄県民の気持ちに立った米国人の意見もちゃんと伝えて欲しい。マジで。

【追記〜治安問題】
僕はチャルマーズ・ジョンソン氏が指摘した「同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか理解できない」という言葉を太字で紹介した。この、沖縄県民が米軍から受けている“ひどい扱い”が何を差すのかを考えた時、本土の人間は“戦闘機の騒音”“墜落の危険”を想像する人が多いと思う。沖縄出身の僕の友人いわく「本土に来て分かったのは、沖縄で報道されている米兵の犯罪がほとんどニュースで流れないこと」。つまり、米兵が引き起こす様々なトラブルもまた、深刻な問題になっているんだ。2005年のデータでは、1年間に起きた米兵絡みの事件・事故の件数が、北海道3件、東北178件、北関東144件、南関東334件、近畿0件、中国・四国50件、九州34件なのに対し、沖縄はたった一県だけで1012件というケタ違いの数にのぼっている。1012件というと、1日に約3件の事件が起きているということだ。しかもこれは防衛省が把握した事件のみの数字であり、地位協定に阻まれた泣き寝入りは含まれていない。もちろん、真面目に頑張っている米兵もたくさんいる。だけど、徳之島の人々があれほど猛烈に基地の受け入れを拒否するのは、こうしたことも大きな理由になっている。
戦後の沖縄は、本土に復帰するまで27年間も米国に支配されていた。その間の米兵の犯罪は女性に対する凶悪犯罪だけでも膨大な数になり、リンク先には1945年から1995年までの主な事件が掲載されている。前述した地域別の犯罪件数の比較は保坂展人氏のブログで知ったんだけど、同ブログには2004年から09年までの最近5年間の主な事件がまとめられていた。日本を守るはずの米軍が日本人を傷つけてどうするんだ。
こういうデータを全部知ったうえで、本土の人間はこれから先も沖縄に基地を押付けるのか、そしてそんなことが人として許されるのか考えなくては。




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